第106話来訪者3
ここはエルライド城、第2応接室。
エミリーはそこで勇者一行を待っていた。
エミリーが勇者の応対にこの部屋を選んだのは彼女の立場故のことである。
普段、最高幹部達が応対に使う第1応接室など使おうものなら何を言われるかわからない。
それより更に上、ラグア様が応対に使う謁見の間など使った日には確実に殺される。
この第2応接室は彼女が使える中では最高位の部屋だった。
コンコン
「勇者様ご一行をお連れしました」
エミリーは入室を許可する。
勇者は黒髪の青年だった。
だが、その瞳に映るのは明らかな憎悪。
それが何に対してなのかはわからないが…。
そして驚くべきはその威圧感。
まるで最高幹部に接しているかの様な気分になる。
勇者と言うだけあり、王級に至っているのだろうか。
王級とはこの世界でもほんの一握りの本物の天才しかたどり着けない境地。
辿りついたものの大半は勇者や魔王。
この世界の頂点の一角に数えられる存在。
最高幹部達、無論自らの直属の上司であるライナー様もその境地に辿りついているが、自分には一生かかっても辿りつける自信がない。
エミリーが戦闘用として、使えるスキルは通常スキルと固有スキルがせいぜい。
おそらく自分ではせいぜい勇者の仲間といい勝負だろう。
だが、立場上ここで気圧される訳にはいかない。
エミリーはそう思い口を開く。
「勇者様方、よくぞいらっしゃいました。ワタシはエミリーと申します」
勇者は答える。
「俺はシュドレ・イロードと言います。リンガイア王国では勇者と呼ばれてました。この度、魔王ラグア様の配下に加えていただきたく参りました。」
シュドレは言いながら考える。
ラグアの配下だからと言って少し感情を表に出しすぎただろうか。
気づかれなければいいが…。
こんな事ではいけない。
とりあえずラグアの配下の1人に接触するまでは成功した。
問題はこのエミリーとか言う女がどのくらいの立場なのかだ。
確かに強い。
強いが、実力はせいぜい俺の仲間のシャリーやバルダと互角。
それでもこの世界のかなりの強者の1人だが、コイツがラグアの片腕かと言われると首を傾げざるおえない。
だが、こうして応対に出ている以上ただの下っ端と言う訳でもないだろう。
自分をこの部屋まで連れてきた男は明らかにこの女に気を使っていた。
エミリーが言う。
「ご挨拶もすみましたし、本題に入らせて頂きますね。なぜ勇者であるあなたが魔王ラグア様の配下に?」
この問いに対する答えははじめから考えてある。
シュドレは答える。
「勇者も魔王も関係ありませんよ。俺は自分が認めた者の下にしかつきたくありません。だからこそラグア様の絶大なるお力こそ、俺の生涯の目標になると思ったんです。そして俺はラグア様こそが、この世界の頂点立つお方だと思っています。だから俺はそんなラグア様についていきたいんです。」
言いながらシュドレは思う。
どこの戦闘狂だ。
だが、ラグアを褒めるならここしかない。
クーデターと武力制圧で国を実質支配している魔王など、力以外褒めるところがない。
シュドレはエミリーの次の返答を待つのだった。




