第90話海底都市
私達は深海までやってきた。
海底に巨大な城と街がある。
その周りを透明なドームが街全体を覆うようにかこっている。
セルナースは言う。
「深海なのにここだけ空気がありますね。おそらく何かの魔法でしょうね。」
ドームの周辺は不思議な空間だった。
確かに呼吸はできる。
ただ水の抵抗はある。
例えるなら呼吸のできる水中。
そんな空間だった。
私達はドームの入り口に差し掛かった。
門番が言う。
「魔王ラグア殿の配下の方々とお見受けします。中へどうぞ。ゴルド様がお待ちです。」
正確にはラグア様の配下は私だけで、セルナースとカティア様は配下ではないが、大した問題ではない。
それよりもこれは予想外の反応だ。
私達をすんなり通すとは、これはゴルドの対応しだいではラグア様にお伺いをたてる事になりそうだ。
私はそう思いながら街の門を抜ける。
セルナースとカティア様も後に続く。
街に入るとそこは幻想的な世界だった。
街の中をゆうゆうと泳ぐ人魚やマーマン達、魚人型の魔物達の姿もちらほら見える。
私達は真っ直ぐ城に向かう。
「謁見の間でゴルド様がお待ちです。こちらへどうぞ。」
少し階級の高そうな人魚に案内されて謁見の間に入る。
謁見の間はきらびやかな空間だった。
クリスタルをモチーフとした統一された装飾、ところどころから差し込む光は謁見の間全体をマリンブルーに染め上げる。
そう言えば深海なのに光が差しているのも、魔法の力だろうか?
エリスはそんな事を考えながら目的の人物を見つける。
玉座に座るその人物は水色の髪をした青年だった。
顔立ちは整っていると言ってもいいだろう。
見た目の年は自分と同じくらいだが、彼が魔王という時点で見た目など関係ない。
そもそも私自身、見た目は20歳のままだが、実年齢は40歳近い。
王級にまで至る存在は固有スキル、不老の力でその時から年は取らなくなる。
つまり見た目と年齢は王級クラス以上には全く関係ない。
事実、エルライド王国でも、順当に年をとっているのはアリエルとカティア様ぐらいのものだ。
他のメンバーは10年以上見た目に変化はない。
アリエルは実年齢は私より少し下のはずだが、今では見た目は完全に逆転している。
話が逸れた。
目の前の人物、ゴルド・シーマは見た目こそ青年だがその身に感じる力は強大だ。
セルナースの援護なしで私だけで戦えば、勝てるかどうか正直五分五分だ。
そのぐらいの力を感じる。
ゴルド・シーマがこちらを向く。
「迎え撃たなかったのは正解だな。配下クラスでこれかよ。1人は完全に化け物じゃねーか。それに同格クラスが1人に、あとは………普通のエルフ?まあいい。俺がゴルド・シーマ。一応現13魔王議長代理をやっている。魔王ラグア殿の配下達よ。歓迎するぞ。」
魔王ゴルド・シーマは静かにそう言った。




