after71神星帝争奪戦53
間違いない…
オリジンゴッドとしてはそれなりの部類に入る自分ですら、目視できないレベル…
そして、セリーナが微かに見えたという白い影…
フィアナとかいう、もう1人のプロトクローン統括が持っているのと同じ、父上の特別仕様の分体だ。
だが、ここまで考えて、ミリーは一つの疑問に気がつく。
特別仕様の分体はセシルを襲った混成軍団を一掃した直後に、地雷クローンの概念爆発が発動する前に、セシルを上空に転移させた。
普通に考えればありえない速度だが、偉大なる父上の分体なら、当然………いや、むしろ遅すぎる…
本来の父上の分体なら、セリーナに一瞬とはいえ、白い影を目撃されることなどありえないのだ。
つまり何が言いたいか…
おそらくはあの分体は旧型…
それでもかなりの脅威だが、あの分体には父上の本来の分体ほどの力はないのだ。
ミリーはそう結論づけた。
「くくくっ、…セシル?それは当てつけのつもりか?貴様は私以上に父上からの信頼を得ているとそう言いたいのか?」
「いえ、そんなつもりはございません。ラグア様のご息女であらせられるミリー様と、私ごときの信頼など比べものになどなるはずがございません。ただ、矮小な私のため、ラグア様が私にお与えくださったお力と…そうお考えください」
おのれ…ぬけぬけと…
ラグア様…
偉大なる父上のことをそう簡潔に名前で呼べる者は限られている…
優越感のつもりか?
人形ごときが…
ミリーは内心では、はらわたが煮えくり返っていたが、なんとか自制する。
『ミリー様、このままでは負けはしませんが、勝つことは難しいかと?アレを使いましょう。アレ使えば確実に…』
『バカか?シュドレとやる前にアレを見せれば対策されてしまうだろうか?』
『申し訳ございません。ならば、私が出ま…』
『それもいい!!私がやる!!父上の信頼で優越感に浸っているあの腐れ人形に、母上より与えられし私の力をみせつけてやる!!かつて母上は私に仰った…「ミリー。お前は空回りすることも多いけど、頑張っているのは認めるわ。これは素敵な生誕祭のお礼よ?」と…
これは私の1000万歳の生誕祭に母上がお力と共に私に与えてくださった言葉だ!!私は母上の私に対する愛に報いなくてはならない!!』
言葉は一言一句間違ってないが、都合のいい部分だけを受け入れて、教訓の部分は完全に何処かに置いてきてしまうのは、ミリーらしい解釈だと言える…
だが、永天皇后、ルル・オルガット・イグロシアルからもらった力が半端な力であるはずがない。
その力だけは紛れもない本物だった…
「概念…天氷…。さあ、寒中水泳といこうか?」
ミリーがそう言った瞬間、試合場は一瞬にして液体に包まれるのだった。




