after69神星帝争奪戦51
試合がはじまる…
ミリーとセシルは互いに相手の出方を伺うが、それはほんの一瞬のことだった。
まず最初に動き出したのはミリーだ。
ミリーは試合場の床を爪先でコツンと叩く。
その瞬間、大量のプロトクローンが召喚される。
「さあ、はじめるぞ?簡単に死んでくれるなよ?」
ミリーの指示の下、全てのプロトクローンがセシルに殺到する…
ミリーの行動は別にセシルのことをナメているわけではない。
むしろ警戒しているからこその、この一手だ。
最初のプロトクローンの1体にして、イグロシアル本国の特別幹部である、セシル…
偉大なる父上に仕えた年月は自分をも超える、全宇宙統一前からの特別幹部だ。
全宇宙統一前の特別幹部に対する父上の信頼は、全宇宙統一後の特別幹部とは、比較にすらならない。
つまり何が言いたいか…
セシルにはどんな隠し球があるかわからない。
それは場合によっては、オリジンゴッドであるミリーを害する程の代物の可能性も十分にある。
ならば…
こちらの手札はなるべく見せないまま、相手の手札を出させる。
セシルの隠し球に対し、手札を多く残したまま、後出しできる状態なら戦闘を有利に進められる…
いくらやられてもなんの問題もないプロトクローンによる物量攻撃…
それがミリーの導き出した最適解だった。
対するセシルは、ミリーのその行動に対してため息をつく。
セシルのそのため息も、決してミリーが自分をなめているという思いで、プロトクローンの物量攻撃に踏み切ったとわけではないことはわかっている。
むしろミリーのこの判断に対しては、最適解だということも重々承知である。
そう。
ため息の理由はそこではないのだ。
何故?
何故この判断ができる頭を持っているのに、コイツは神星帝を降ろされる?
いや、とっくに答えは出ている。
コイツは…ミリー・オルガット・シアルは、凡庸なのだ。
バカではないが、リーゼ様のような飛び抜けた頭脳もない。
虚勢と権力を振りかざしても、ラグア様のようなカリスマ性は見る影もない。
コイツの兄…ルーグ様のように力で、一部の古参たちにすら認められるような特筆した能力もない。
そう考えると、コイツはある意味可哀想な存在なのである。
セシルは思った。
だが、そんなセシルの考えは読心により、ミリーには筒抜けである。
「…いい度胸だ…少し早く生まれただけの人形ごときが、私を侮辱するか…死ね」
静かに…だが、先程のジェシカなどとは比べ物にならないぐらいに、ミリーは逆上していた。
セシルとプロトクローンの集団が激突する…




