after63神星帝争奪戦45
シュドレは超高速で動き回るゲノーの動きを完全に捕捉していた。
シュドレ…いや、そもそも古くから神として君臨する…
神級以上の存在には死角などはほとんどない。
全宇宙統一前の戦いで、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた彼らは、戦闘には必ずと言っていいほど、神の千里眼を併用する。
これにより、全方位360°は当たり前。
また、戦闘に余裕がある…
この場合はシュドレはそれにあたるが、神の千里眼の複数展開する余裕がある為、試合場内に死角など、一切ありはしなかった。
〜
しばらくゲノーの動きを見て、仕掛けてくる様子がないのを確認すると、ついにシュドレは動き出す。
「!?っ」
それに対し過剰な反応を見せたのはゲノーだ。
実力がかけ離れているからこそ、当たり前と言えば当たり前の反応なのだが、それは格上相手に自分で自分の選択肢を狭めているようなものだ。
「…まともな戦闘経験がないから仕方ないか。まあ、俺も昔はそうだった」
言いながらシュドレはゲノーが逃げる方向を完全に予測して先回りする…
シュドレはゲノーの退くであろう方向にスッと剣を合わせる。
振るうのでななく合わせた…
つまりはただそこに剣を置いただけだ。
それだけで超高速で動き回るゲノーは停止が間に合わずに真っ二つになる…
車は急に止まれない…
小学生のころにそんな標語があったな。
たしか…
今では遠い昔のように感じる…
実際、ラグアと同様の年月を生き続けているシュドレにとって、それは遠い過去のことなのだが、シュドレはそんなどうでもいいことを考える。
「…ぐっ…さすがは……偉大な……るお…祖父様…と……同じ時代を……生きたお方…だ……遠く及び……ませ…ん…」
神格エネルギーを散らしながら消滅していくゲノーを視界の片隅に入れながら、シュドレは剣を収める。
俺は変わった。
転生してから…
よく言えば順応したとも言えるのかも知れないが、転生して最初の頃は、殺生に対し罪悪感ばかりだった。
それが今ではどうだ?
自分に近しい存在の死以外には、なんの感慨もわかないし、そもそも近しい存在は、ラグアが作り出した屍の上の理想郷において、永遠の生命を約束されている。
それに、アイツらには死者を蘇らせる神を冒涜するような力…
いや、アイツらも神なら、今では俺自身ですら、神の…それも全宇宙で最強クラスの神の1人だ。
それに父さんや母さんを蘇らせたのは、その神を冒涜するような力だ。
その恩恵を受けている時点で俺にそれをとやかく言う資格はない。
カティアも変わった。
昔の少し弱気な性格はなりを潜め、今ではかなり面の皮が厚くなり、好き放題やっている。
まあ、昔と変わらず、アイツはなんだかんだで優しいがな?
変わってしまった俺たち…
最後の同期の転生者である、レオンのことはあまり知らないが、少なからず日本で生きてたころとは、変化があるだろう。
そう。
変わらないのはアイツだけだ。
ラグア・エルライド・イグロシアル…
自分が変わるどころか、全宇宙を自分色に染め上げたイカれたキチガイ…
昔と違ってアイツのことは憎んではいないし、むしろ感謝すべきところの方が多い。
だが、そもそも生理的に俺はアイツが嫌いだ。
ゲノーの最後の言葉から、シュドレの脳裏に浮かんだラグアをシュドレはそう結論付けて、シュドレは壇上を降りるのだった。
すいません、仕事出張により、次の更新は2月7日になります。
申し訳ございませんが、ご了承ください。




