after57神星帝争奪戦39
「ラウラ?別に俺相手にはそんな気遣いはいらないぞ?」
部屋に入ってきたラウラに対し、ライナーは開口一番にそんなことを言った。
「父さん、これはどっちかと言うと気遣いじゃなくて、マナーかな?ノックもしないで他所の部屋に入っていいわけないでしょ?」
「ん?昔はセリーやフィリアやフィリムは俺の部屋に勝手に入ってきたって言うか、アイツらは直接転移してきたぞ?」
ライナーと彼女達がまだ対等だった四天王時代…
さすがに頭一つライナーが出世した現在ではそんなことはないが、その頃の彼女達はノックすらせずにライナーの部屋には直接転移していた。
ただ、過去に一度ライナーがそれをやったらブチギレられた。
単なる理不尽である。
「はあ…。父さんは優しすぎるんだよ………まあ、だからこそのその人望なんだろうけどさ」
ライナーにあってラウラにはないもの…
それは損得感情を抜きにした、慈愛の精神である。
ラグアへの忠誠心が厚く、戦闘に対する才能に溢れるライナーだが、戦い自体は…そもそも他者と争うこと自体が好きではない。
それは、ラウラのような仮初ではなく、本心からのものだ。
まあ、もっとも今のイグロシアル上層部はライナーのようなタイプの方が珍しいのも事実だが…
「まあ、考えてみるとアイツらおかしいよな?……って…もう時効か」
「かもね」
ライナーのその言葉にラウラは軽く相槌を打つ。
「でだ。今日はわざわざ呼んで悪かったな?最近どうだ?お前は俺と違って頭のキレるヤツだ。そのせいか、あんまり父親らしいことをしてやった覚えがないんだよな。なあ?せっかくの祭りだし、これから飯でもどうだ?お前の一回戦突破祝いってことでよ?」
ライナーのその言葉にラウラはフッと笑う。
「たしかに二回戦は絶望的だから行くなら今しかないね。いいよ。行こうか。父さんとデートなんていつ以来だろ?」
「…せっかく言葉にしなかったのに、これだから…まあいいや。とりあえず着替え…」
ここでライナーの言葉が止まる。
ラウラの服装に気づいたのだ。
「そういうと思ったからちゃんと可愛い服装できたよ?ちゃんとエスコートしてよね?父さん?」
「…可愛くないヤツだな…」
自分の言動を完全に先読みされ、そう憎まれ口を叩くライナーだったが、目は完全に自分の娘をみるそれになっていた。
性格は似ても似つかない2人だったが、ライナーとラウラの2人にはしっかりとした親子としての絆がそこにはあった。




