after39神星帝争奪戦21
〜神星帝争奪戦、特設解説室〜
その日、全宇宙を代表する歌姫…ジェシカ・ドーラスはついさっき配られた一枚の紙をとる手を震わせていた…
「すいません、ジェシカ様。大変なのは、わかっているのですが、どうかよろしくお願いします」
「…いや、これ辞退できない?こんな恐れ多いものを読みたくないんだけど?」
本戦5分前に第一試合の対戦カードと、それぞれの紹介文の書いた紙を渡したマネージャーの男にジェシカはそう返した。
ジェシカ・ドーラスは恵まれていた。
天性の美貌と歌手として神がかっているとまで言われる程の才能…
今や全宇宙で5本の指に入る著名人だ。
愛称でファン達の間では、ジェシカちゃんで通っているが、星王カティア・ドーラス・イグロシアルのかなり遠い子孫で、イグロシアル上層部にもファンがいる自分は、偉大なる大お母様…(カティア)よりイグロシアル本国準幹部の階級と固有スキル、不老を与えられている。
本来ならジェシカ様と呼ばれる存在だ。
事実、マネージャーは自分をジェシカ様と呼ぶ。
実力も実績も血筋も完璧…
ジェシカはこの神星帝争奪戦が終わったらイグロシアル本国幹部就任の話まで決まっていた。
なのに…なのに…
「この仕打ちはあんまりでしょっ!?一体誰が考えたの?この紹介文を?準神話級の方にこんな棘のある紹介を読めって言い出したのは誰っ!?」
ジェシカは叫んだ。
ジェシカはまだ第一回戦の対戦カードしか、知らされていない。
だが、それだけでもこんな紹介を読んでいいかと言われれば、読めるわけないと答えるしかない相手なのだ。
「…おそらくは本国の上層部…少なくともその対戦表に書かれているお方たちにそう言っても問題ないほどのお方かと…」
つまりは星王クラス以上…大お母様と同格かそれ以上ってことか。
ジェシカは半泣きになりながらも、覚悟を決める。
偉大なる方々から不興を買うかもしれない…
でも読まないで辞退なんかしたら今まで築き上げてきた栄光が全部パーだ。
もう自分には読む以外に選択肢は残されていないのだ。
そんなことを考えている間にもう時間だ。
涙声を全宇宙に晒すわけにはいかないので、ジェシカは気持ちを切り替える。
「全宇宙からお集まりの皆様。神星帝争奪戦もいよいよ大詰め…これより、本戦を開始します。実況及び対戦カード紹介は私、ジェシカ・ドーラスが務めさせていただきますっ!!」
「「ジェシカちゃーん!!」」
観客席から声援が飛ぶ。
そうだ自分は全宇宙を代表するスターなのだ。
もっと自信を持て!!
ジェシカは対戦表を読み上げる…




