after35神星帝争奪戦17
「何?どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。ウチにこない?悪いようにはしないよ?」
お互いに鋭い一手を交わしながら男とリーゼは会話を続ける。
「一つ聞いてもいいか?全宇宙に今まで俺と張り合える者など、存在しなかった。お前は何者だ?はじめて俺が負けるかも知れんと思った相手がさすがにただの子供というわけはあるまい」
パチンッ…
男は言いながらリーゼに王手をかけた。
それを瞬く間に演算しながらリーゼは口を開く。
「うーん…ここで名乗るのはちょっとね…。向こうで自分から正体をバラした、バカ丸出しの仲間といっしょになっちゃうのはさすがに嫌かな?まあ、もう子供って歳でもないけどさ、てかその王手じゃ詰みきれないよ?」
パチンッ…
リーゼは最善手を割り出しながら答えた。
「むっ…」
一進一退の攻防…
まるで、勝負はつかない…
ここでリーゼは一瞬男と目があったのを感じた。
ちょっとヒントだけはあげるか。
まあ、コイツの頭ならさすがにこれだけでわかるでしょ。
リーゼはほんの一瞬だけ瞳の擬態を解く…
「!?っ」
ほんの一瞬だけとはいえ、赤と青のオッドアイの瞳を見た男は息を呑む…
「まさか…」
「それ以上は口にしないほうがいいよ。一応誰にもバレないタイミングでやったけど、お前が口にしたらさすがにバレちゃうからね?話し方も変えないでね?今の立場は全宇宙チャンピオンの最強騎士と正体不明の子供なんだからね?」
「わわかりまし……わかった…」
まさか永星帝と将棋を指しているとは夢にも思わなかったのだろう。
男は一瞬取り乱しそうになるが、深く息を吸い込んで平常心を保つ。
男からはさらに鋭い一手が放たれる。
本当に拾い物だね…
この状況に萎縮することなく、ここまで…
なら、こちらも敬意を示さないとね…
リーゼは口元に笑みを作る。
ここに来て、ついにリーゼは未来予知を解放する…
このままでも負けはしないが、このままでは埒があかないのもまた一つの事実だ。
権能を使わずに使えば、体に負担がかかる完全思考はさすがにこんな余興では切りたくはないが、これでもダメならさすがに切ることも視野にいれよう…
それだけこの男は自分の部下に欲しい…
リーゼはそんなことを思いながら未来予知でよりいっそう鋭くなった一手を放つ。




