after34神星帝争奪戦16
その頃…
「はあ…あのバカ…大人しく観光もできないんだね…」
パチンッ…
将棋を指しながらリーゼはそんなことを言った。
「おい…あんた?子供にしちゃ強いが、将棋にはマナーってもんがあってな?真剣勝負中の私語は遠慮していただきたい…」
対戦相手の男は、リーゼにそんなことを言うが、対するリーゼは何を言っているのかがわからないというふうに首を傾げる…
「真剣勝負?そんなのは今から18手前に終わったじゃん?あんたの王様はここからどんなに最善手を打ち続けても、あと37手で詰みだよ?ほい。これであと36手…」
リーゼは言いながら駒を動かす。
思えば18手前からリーゼは王手をかけ続けている。
「そんなわけあるか…」
「まあ、まだ人間にはちょっと厳しいか…」
〜
しばらくして…
「バカな…私は数々のタイトルを持つプロ棋士だぞっ!?それがこんな子供に…」
「さすがにわかった?どう見てもあと9手で終わりでしょ?まあ、50年やそこそこしか生きてないにしちゃ頑張った方だと思うよ?」
リーゼの言葉に棋士の男はリーゼを凝視する…
子供に見えたが長命種族か、もしくは不老持ちか…
「…私の負けだ…参りました…」
男は素直に負けを認める…
「うん。対局ありがとう」
リーゼもそうあいさつをすると席を離れる…
そして…
〜将棋大会、決勝〜
相手の男とリーゼは一歩も譲らない攻防を繰り広げている…
ちなみに相手の男は全宇宙最強と名高いプロ棋士である…
周りで見守る者達は、そのあまりにハイレベルな攻防に言葉も出ずに見入っている…
もっともリーゼとその男のやりとりを、本当に理解できるものなどほとんどいないが…
だが、内心では関心しているのは、リーゼも同じだ。
一応、押してはいるけど、詰みきれないな。
完全思考も、未来予知も、読心も使っていないとはいえ、純粋な頭脳戦でリーゼとここまで張り合えるヤツがいるなんて…
リーゼは思った。
ちなみに、感情を読む能力に関しては読もうとしなくても、わかってしまうので止めようがなかった。
ここでリーゼがこうすればどうする?こう動く以外の選択肢をとったらあと69手で詰みだよ…って…これもわかるんだ。
こんなことが既に三度である。
これは……こんな暇潰しで、宝石を見つけたかも知れない…
「…お前すごいね。ねえ?どうかな?部下にならない?」
対戦相手の男に、興味を持ったリーゼはそう言ったのだった。




