after19中継演説後…2
〜場所は変わって〜
先程のリーゼの中継演説…
それを狂気に満ちた眼差しで見守っていた者がいた。
「ああ…リーゼお姉様…相変わらず尊い…このミリーはリーゼお姉様の慈悲…そして器に感動致しました…そして神に…全宇宙の絶対神である父上に感謝を…私に再び挽回の機会を与えてくださったことにっ!!」
玉座…一応は玉座ではあるが、つい数日前まで座っていたものと比べればだいぶ質が落ちるものに座りながらミリーは言った。
元神星帝…ミリー・オルガット・シアル
ラグアに準星帝に降格を言い渡された彼女は、イグロシアルの名を剥奪され、末端の宇宙…
誕生してからまだ比較的時間の経っていない…それこそ、知的生命体のまだ乏しい、発展途上とも言える宇宙に追いやられていた。
「みリーさまにけんジョーしニきた」
「なんだそれは?貴様はその豚の餌を食料だと言いたいのか?」
応対に出ているのは、自分の護衛であり、側近…
もっとも信頼しているゴッズクローンの配下だ。
青い髪に女性にしては、かなりの長身…
セリーとライナーの遺伝子をかけ合わせて作られた彼女は神星帝時代から…全宇宙統一後に生まれた存在で当時は2番手だったが、自分の補佐をしてくれていた片腕である。
名前はセリーナだ。
セリーナはミリーがイグロシアルを追放される際、唯一連れていくことを許された側近である。
ちなみにミリーの側近の一番手…星帝時代から使えていたリムリット神衛団のセグリットはミリーの失脚と同時にさっさと切り捨ててイグロシアルへと戻った。
セリーナは人族かどうかも怪しい猿顔の類人猿のような族長とそんなやりとりをしている。
見ているだけで腹が立ってくる…
ミリーは立ち上がる…
そのミリーの行動にセリーナは慌てた様子で私に駆け寄る…
「ミリー様っ!?お止めくださいっ!!これでもコイツはこの宇宙ではまだまともな者の一人ですっ!!謁見のたびに殺してしまっては、まともに会話が成り立つ者がいなくなってしまいますっ!!」
「セリーナっ!!離せっ!!私を誰だと思っているっ!!偉大なる永天、ラグア・エルライド・イグロシアル様の367番目の子…ミリーだっ!!それを…それを…何故、私がこんなゴミと言うのも憚られるような猿共の相手をしなければならないのだっ!!」
「心中お察ししますが、堪えてください。ここに来てからもう3人殺しています。たしかにこれはゴミです。ですが、ゴミの中ではマシなゴミなんです。どうかわかってください。…おいっ!!貴様っ!!さっさとその豚の餌を持って退がれっ!!ミリー様にそのような汚物を見せるなっ!!」
喉元過ぎれば熱さを忘れる…
一応は元神星帝であるミリーの実力はオリジンゴッドにまで至っているが、それでもゴッズクローンであるセリーナに力では敵わない…
「そうです!!神級スキルで新たな知的生命体を生み出しましょう。少しはマシになるはずです!!」
そこまで言ってようやくミリーは落ち着きを取り戻す。
セリーナはミリーをそっと離す…
「…必要ないわ。こんな宇宙はすぐにおさらばだ。そんなものは後任の私の甥や姪にでも任せておけばいい。神星帝争奪戦…まさしく私の挽回の為にあるようなものだ。セリーナ、今から私は準備に入る。必要なものを集めてこい」
「はっ」
ミリーのその命令にセリーナは神星帝時代と変わらない態度で恭しく跪くのだった。




