after8永天神話4
「ミグ、怖がってるじゃん?あんまりいじめないの。ごめんね?」
リーゼは言いながら女性の頭を優しく撫でる。
後にこの女性が頭部からとんでもない異臭を放つまで、頑なに頭を洗うことを拒否し続けたのはまた別の話だ。
「普通に聞いただけだもん」
「あんたは立場ってものを自覚した方がいいよ?リーゼ達が普通の人に話しかけてる時点でそれはもう威圧なんだよ?」
ミグはリーゼのその言葉が正しいことはわかったが、怒られたことが気に入らないのだろう。
ぷっくりと頬を膨らませる。
「あたしは別に星王なんて辞めたっていいもんっ!!」
「もう今更手遅れだよ?星王をやめたところでミグが伝説の存在であることは変わらない…テオレームを見てみなよ?アイツは星王じゃないし、イグロシアルにおいてちゃんとした階級なんかない。エリローズとパパの直属の配下…。アイツにあるのはそれだけだよ。にも関わらず、イグロシアルでは星王に匹敵する権力を持っているし、アイツの言葉は特別幹部に満たない連中には、パパやエリローズの言葉と同義だよ。この意味がわかる?」
「わかんないよ」
ミグの鈍いその答えにリーゼはため息を吐く。
「はあ…わかりやすく言うと、まあリーゼ達はとっくに神級なんか超えてるから、一応神様なんだけど、ここで言う神様は別の意味だよ。そう。ミグがこれから見たがっている永天神話の体現者であるリーゼ達全員が…今や全宇宙の絶対神なんだよ?ここまで言えばさすがにわかるでしょ?」
「………」
ここまで言えばさすがのミグもわかったようだ。
全宇宙の絶対神の一角である自分は、尊敬、敬愛、崇拝の対象であると同時に畏怖の対象でもあるのだ。
ここでリーゼは会話を神通に切り替える。
ここから先は一般庶民に聞かれたらどうにかなる話ではないが、面倒な………確実に騒ぎになることは確実だ。
『まあ、ミグが本当に嫌なら唯一の方法は、特権階級だけを残して全宇宙を全部吹き飛ばしちゃえばいい。それでまた、一から全宇宙と新しい生命を構築する。
そうすれば残るのは、共に新時代を作った戦友とリーゼ達を知らない人しか残らない。それはミグは簡単にはできないかも知れないけど、リーゼの権能を使えば可能だよ。やる?まあ…パパにはブチギレられそうだけど………なんかリーゼも最近退屈なんだよねー』
そのリーゼの発言にミグは邪悪な笑みを…いや…それを通り越して突然笑い出した。
あまりに突然の事で群衆はビクリと体を震わせる…
殺気混じりのミグの笑い声が聞く者に恐怖を与えたのだ。
「キャハハハハハっ!!」
『さすがにその発想はなかったよ。なーんだ?平和な時代になってリーゼちゃんも落ち着いちゃったなんて思ってたけど、全然そんなことなかったんだね?まあ、さすがにそれをやったら下手すりゃ師匠に殺されそうだからやめとくよ。まあ、あたしの親友は牙が抜けたりなんかしていなかった。それだけわかっただけでもあたしは嬉しいよ』
こうして、誰も知らないところで全宇宙消滅の危機を話し合っていた二人が、友情を確かめたところで二人は目的地にたどり着くのだった。




