第1004話神帝達の宴2
「くっ…」
同時奇襲が失敗に終わり、俺は即座に千手観音モードの触手の嵐を浴びせるが、チェルシーは先程と同様に消え失せることで躱す…
とりあえずチェルシーのアレをどうにかしないと権能以外じゃ倒せないか。
「ちっ…仕留め損なったか。リーゼ、悪いな。油断した」
「謝るより褒めてほしいかな?あ、ゴミ2匹を始末したあとでね?」
リーゼの前半の口調は見た目相応に愛らしいものだが、後半はむしろ理不尽なイナゴに相応しいものだった。
俺はそれを聞いて口角を吊り上げる。
「ああ、なら後ろのゴミは任せたぞ?俺は目の前のゴミを殺る」
「りょーかい。アゼルメーテにけっこう苦戦しちゃって万全とは言いがたいから、いつもほどちゃんとサポートはできないけど、できる限りのことはするよ」
アゼルメーテを相手にけっこう苦戦で済ますか…
本当に俺の娘かと疑いたくなるぐらいの化け物だよな。
オルメテウスにアゼルメーテ…ラピロアを除く古参アラウザルゴッドの二大巨頭を苦戦したとはいえ沈めたのは、紛れもないリーゼだ。
そんなリーゼにとって後ろのゴミを相手しながら、俺のサポートに回るのなど朝飯前だろう。
仮に俺とリーゼが敵同士で同条件だったら、たぶん…いや、確実に手も足も出ずに俺は負ける。
もはやこれは決定事項だ。
俺は構える…
権能を使うのは最後の手段だ。
ルービスメゾルにはラピロアがあたっているのだろうが、あちらの決着は目に見えて…いや、共鳴から伝わってくるリーゼの考えと俺の考えは同じだ。
俺たちの結論はヤツらの決着はつかない。
ラピロアは強い…
名実ともに全宇宙最強なのは決して伊達ではない。
じゃなければ、基本的にナメプしているアイツはとっくに死んでいるはずだ。
全力を出せばルービスメゾル相手でもラピロアが勝つはずだ。
けど、ラピロアは事故以外の方法でルービスメゾルにトドメは刺さないはずだ。
そんなことをすれば、ルービスメゾルの権能でラピロアの権能がさらに強化されてしまい、あとに控えている俺との戦いに差し支える。
ここからはリーゼの考えだが、ラピロアの動きはおそらく自分の権能をできるだけ使いつつ、ルービスメゾルを弱らせるといった方法になるとのことだ。
その方法なら、ルービスメゾルのトドメを俺に残した上で自分の権能を多少なりとも弱体化できる。
まあ、ルービスメゾルも何か考えがあって単身でラピロアに挑んでいるのだろうが、ラピロアは多少の小細工でどうにかなるような甘い存在ではない。
俺も白い滅亡なんて異名で呼ばれたこともあったが、アレに比べれば可愛いものだ。
具現化した滅亡そのもの…
それこそがラピロアなのだから…
俺は思ったのだった。




