第1002話白と青のグラデーション67
「ぐっ…ミグてめえ…」
お互いの権能がぶつかり合うと俺は唸り声を上げる…
ふざけた抵抗…
というか俺を推し潰そうとするミグの権能を弾き返しながらだからかと一瞬思ったが、ミグも同じ状況のはずだ。
ミグの方に視線を向けるとミグの表情も決して余裕という訳ではない。
「ラグアぁぁぁっ!!」
瞳を狂気に染めたミグは権能の力を俺を潰す方に集中させる。
同時にミグの身体が崩壊をはじめるが、俺の身体も少しずつ崩壊をはじめる…
「ぐっ…上等じゃねーかっ!!」
俺もミグを押し潰さんと攻撃に回している権能に力を込める…
俺とミグの権能の鍔迫り合いは続く…
そして…
〜
「はあっ…はあっ…」
荒い息は俺のものだところミグの権能に押し潰されてもう両腕がない状態だ。
「………どうやらここまでみたいだね…地獄帝だったあたしの一部を全部犠牲にしてもまだ足りなかったみたい………ラグア、あたしの負けだよ」
元々ヘルスライムであるミグ・ピピーは、六匹の凶悪なスライムの集合体だ。
六匹の中にも序列はあり、普段ミグ・ピピーとしての人格を形成しているのは、"無限"と呼ばれるスライムだ。
そんな中ミグは、最終決戦時には別のスライムの魂を全面に出し、あたかも無限であるかの様に振る舞わせて無限の言葉を代弁させていた。
権能の概念は魂に刻まれる…
だが、ミグの魂は6つある。
そう。
それがミグが復活していたカラクリであり、最後の本体である無限を司るミグの権能をここまで温存できたカラクリである。
もっともそれでも僅かにラグアに及ばなかったが…
「…たしか昔そんなこと言ってたな?」
ミグの状態は俺より酷い…もはや頭と首の一部が残っているだけだ。
「…負けちゃった…ごめんね?ミュラっち…みんな…あたしのスキルにあるような地獄ってのが本当にあるのかどうかはわからないけど、あたしもみんなのところに行くよ…」
権能の侵食は進み、ついにミグの口元も崩壊する…
話せなくなったミグは神通に切り替える。
『ラグア?聞こえる?お前はあたしが出会った中で最低で最悪であたしがこの世で一番許せないタイプの外道だったよ。だから…』
ミグはそこで一度言葉を切る。
『あたしに勝っといて負けんじゃねえぞっ!!地獄になんかきやがったら今度こそぶっ殺してやるよっ!!』
ミグはその言葉を最後に、俺の返答を聞く間もなく完全に消滅するのだった。




