閑話とある神様のお話3
最高神は目の前にいる、若い神イシュトスの言葉を待つ。
イシュトスは上級神だ。
生まれたのはアルムスができるより遥か前だが、最高神やエリローズといったオリジンゴットからしてみれば、若い神に分類されるだろう。
そのイシュトスは現在自分の側近の1人だ。
この部屋に自由に出入りできるのは自分の側近だけである。
イシュトスは言う。
「最高神様、私に策があります。どうかお任せいただけないでしょうか?」
正直、打つ手なしといった状況だ。
イシュトスに策があると言うなら願ってもない話だ。
イシュトスの提案が無ければ自分が直接動くしかなかった。
エリローズと自分の神格エネルギーは現段階では自分の方が上だが、彼女に2代目ラグアと言う存在がいる以上、100%勝てる保証はない。
確実に勝つ為には配下の神を生贄にして神格エネルギーを完全に回復させる必要ある。
それには時間がいる。
ちなみに余談だが、イシュトスは相手によって一人称を使いわける。
自分より目上の神には私、同格、格下もしくは敵対者には我、と言う風に。
最高神は威厳に満ちた声で言う。
「いいだろう。此度はお前に任せよう。頼んだぞ?」
「はっ、必ずや期待に応えてみせます。」
イシュトスはそう言って玉座の間を出ていった。
イシュトスには期待している風に言ったが、実際イシュトスの策にはあまり期待していない。
だが、せめて自分が完全回復するまでの時間稼ぎになればいい。
そう思っての事だった。
「セルエムっ」
「はっ」
セルエムは自分の側近の1人で上級神だ。
「今から儂はエリローズを倒す為に神格エネルギーを回復させる。その為の生贄に中級神クラスを100人程用意しろ。」
「はっ」
セルエムは一瞬のためらいもなく、そう返事をした。
セルエムは汚れ仕事に慣れている。
宇宙を管理する上で綺麗事ばかりではやっていけない時がある。
そういった場合活躍するのがセルエムだ。
短期間で神格エネルギーを回復するためには大量の犠牲がいる。
その犠牲を自分の配下の中から選ばなければならない。
正直、そんなことはやりたくはないが、自分が負ければ全て終わりだ。
手段は選んでいられない。
中級神クラスの生贄の選別。
そして神格エネルギーの吸収。
更に安定させるまでの期間。
全部合わせて1年といったところか。
イシュトスにはそれまでの時間稼ぎをしてもらえばいい。
まあ、なんとかなるだろう。
いや、なんとかなってもらわなくては困る。
最高神は祈る様にそう考えるのだった。




