第998話白と青のグラデーション63
「ちっ!?」
「あれー?ラグア?逃げるの?連れないねー?」
俺はミグに対して一旦距離をとる…
たしかに俺はミグを殺したはずだ。
けどなんのカラクリかは知らないが、権能で黄泉の神を潰したにも関わらずミグに耐えられた。
「だったらあたしから行こうか?」
調子にのったミグから物理攻撃や概念攻撃が飛んでくるが、この程度では俺達クラスの戦いでは何の意味もない。
権能を使う必要すらない。
ミグの攻撃を片手間に処理しながら俺は考える…
とりあえず状況を整理しよう。
俺が勝負に出た影響でミグは自身の権能の弱体化に薄々気づいている…
いや、こと戦闘に関しては変な直感が働く上に思い込みでが激しいアイツのことだ。
たぶんアイツの中ではもうこれは確信に変わっていることだろう。
じゃなければこの状況でこんな意味のない攻撃をしてくるはずがない。
「神帝の絶対領域っ!!」
「権能っ!!消極的だね?そんなんじゃ自分から権能を使いたくないって言ってるようなもんだよ?」
神帝の絶対領域の効果範囲内に逃げるだけの身体能力は今のミグにはない。
ミグは神帝の絶対領域の発動の瞬間、権能を使用することで神格エネルギーを俺と対等まで引き上げることにより、効果範囲外に逃げる…
できるだけ温存はするが、出すべきところには出す…
今のミグにできる最善の手だ。
「ちっ!?」
俺は舌打ちをする。
クソっ…
落ち着け…
今の俺は勝利を確信状況で予想外の出来事で思考が短絡的になっている。
こんなバカの帝国の皇女みたいなヤツと知恵比べをする程に…
こんな時リーゼや姉ちゃんがいてくれたらとっくにアイツのバカな考えなんか看破して的確なアドバイスをくれるだろうが、今はどっちもいない。
なら…
「もう一回見せてみろよ?何度も同じことができるのか?それとも一度きりなのか?神帝憑依っ!!」
再び俺は神帝憑依を発動させる。
「権能っ!!」
俺と咄嗟に権能を発動したミグが互いに激突する…
とんでもない衝撃で宇宙にヒビが入る…
先程から宇宙がとんでもない勢いで壊れているが、リーゼ達も派手にやっているのだろう。
まあそれは今はいい。
〜
ふう。
ようやく思考がまともになってきた。
一回きり?
いや、さすがにそこまでは断言できないがそう何度も使える力ではないのだろう。
俺の攻撃を防いだカラクリは権能と同等か、権能以上のリスクがあるのは確定だ。
俺はリーゼや姉ちゃんとはほど頭がよくないから、まともな情報もなしに的確な推察などできやしない。
だったらバカな俺でもわかるまでヒントを集めればいい。
ミグが消極的な攻めしかしてこないのは、まだ俺が圧倒的に有利な状況の何よりの証明だ。
アイツの性格なら多少なりとも勝機があるなら仕掛けるのを我慢できるヤツじゃない。
まだまだ俺のターンは終わらない。
俺は思ったのだった。




