第997話白と青のグラデーション62
崩壊寸前の宇宙にリーゼはゴッドバーストを放つ…
それだけでリーゼの周りは完全に崩壊する代わりに、リーゼの神格エネルギーは回復する。
もはや黄泉の神を止める必要はないから当然だ。
「なんとか勝ったけど体調は最悪だね…まあ一応なんとか戦えるから前よりマシだけど、完全思考はもう無理か…」
リーゼは呟いた。
何故リーゼ生きていたのか…
その秘密はリーゼの神級スキル、思現の神によるものである。
リーゼはこの戦いの前に自分の本体とは別にスペアを用意していた。
かつてラグアがイグロシアルで使っていたようなそれこそ分体から育てたものをだ。
問題はそれをどこに保管するかだ。
最終決戦から関係のないところに置いておくことはできるが、それだと途中で死んだ時に黄泉の神が発動せずにアゼルメーテにバレてしまう。
森羅万象の中でもそれは同様だ。
でも思現の神なら…
そう神級スキル、思現の神はリーゼの想像と現実を入れ替える能力だ。
つまりは別の空間に隔離する森羅万象などとは違い、分体から強化したリーゼは名目上は存在しないことになる。
もちろんデメリットもある。
全力思考を使うまでのリーゼは片時も生命線であるその存在から思考を完全に離すことができずに、時間を気にしている余裕がないところまで追い詰められていた。
逆に完全思考を使ったあとも、全力でキメにいっているにも関わらず、強化分体から意識を切ると致命的なため、相当無理をしている。
ほんの僅かな時間の酷使でここまでのダメージを受けるほどに…
だが、そこまでして…いや、そこまでしなければアゼルメーテは倒せなかっただろう。
アゼルメーテの最後のあの行動はリーゼの読みさえも上回ったが、最後にはリーゼの用意周到さが勝ちに繋がった。
「うっ…もっかいって思ったけどさすがに無理だよね…」
再び分体を作り出して、自分の神格エネルギーを与えた上で思現の神に戻そうとしたリーゼは頭痛に咄嗟に頭を抑える…
思現の神はもはや使いものにならない。
だが…
「まあ…無理してダメなことばかりでもなかったか…神玉の力…確認はあとでいいや…今は…」
リーゼはそこで一度言葉を切り目を閉じる…
「やっぱり…少し休ませて…パパの助けにいけないのは申し訳ないけど今のリーゼじゃ役に立てない…ならルービスメゾル戦前に少しでも体調を戻すことにするよ…」
崩壊寸前の宇宙空間でリーゼはそう言うと静かに眠るのだった。




