閑話とある神様のお話2
エリローズを自分の支配下に置いてからは長い間、彼女は大きな動きは見せなかった。
それこそ数兆年単位の長い長い間だ。
自分は完全に彼女を支配下に置けたと思った。
そうこうしているうちに新たな世界の創造神を選出しなければいけなくなった。
自分は迷ったが7人の創造神のうちの1人にエリローズを選んだ。
今から数十億年前の話だ。
その頃はまだ、神が生物に干渉する事を許容していた。
その方が世界の発展が早いからである。
新しい世界の名前はアルムスと名付けた。
エリローズ以外の6人の神は自分が生み出した、若い神で中級神クラスだったが彼女は嫌な顔1つしなかった。
その事もあり、何より前回の圧倒的な完勝で当時の自分は完全に油断しきっていた。
その油断の代償はひどいものだった。
エリローズはアルムスの邪神となってから、当時アルムスで最強だった、ラグアと言う魔王と接触し、上位魔神にまで押し上げた。
自分が気づいた時には創造神は既にエリローズを含めて4人になっていた。
自分は慌ててエリローズを殺す為にアルムスに向かった。
ここまでやられて何もしないのは、最高神の威信に関わる。
エリローズとラグア、2人の元に単身で乗り込んだ時になっても当時の自分は負けるなど微塵も思っていなかった。
結果はひどいものだった。
はじめての敗北。
しかも惨敗だ。
あの時、勝利を確信して油断しきった彼女とラグアの仲間割れが始まらなければ、現在自分は存在していないし、この宇宙も存在しないだろう。
エリローズとラグアの戦いはかなり拮抗していた。
当然だろう。
彼女自身が自分を倒す為に育て上げた存在だ。
いくら彼女でも敵に回せば簡単に倒せるはずがない。
瀕死の自分を除いた、宇宙最強の神同士の戦いはそれはそれは激しかった。
戦いはしばらく続いたが最後に立っていたのはエリローズだった。
だが彼女も無事ではなかった。
神格エネルギーを大きく減らし、中級神クラスにまで弱体化していた。
だが、瀕死の自分には弱体化した彼女を殺す事すらできなかった。
そこで仕方なく、最高神の権能を使い制約をかけた。
本来ならその制約も彼女に限定的にかけるつもりだった。
だが、自分自身の消耗は酷すぎた。
そんな事をすれば神格エネルギーを使い果たした自分は消えてしまう。
自分が消えるのは構わない。
オリジンゴットは概念の塊。
生物と違い、生への執着は薄い。
だが、自分には見える。
自分が消えたあとに、この宇宙を消す神格エネルギーの回復しきったエリローズの姿が。
未来予知は概念持ちの神の固有スキルの一つだが、そんな事は今はいい。
つまり、自分がいなくなったら誰も彼女を止められるものはいないのだ。
まだ消える訳にはいかない。
彼は最後の力を振り絞り、全ての神に生物との干渉を禁ずる制約をかけた。
神格エネルギーはなんとか残った。
その時の自分にはこれしか方法はなかった。
現在〜〜〜
制約が破られた。
彼は即座に全ての制約を解除した。
本来、封じる相手のいない制約などもはや意味を持たない。
ならば制約に使っていた神格エネルギーを自分に戻した方が遥かにマシだ。
正直、現在動かせる手駒はいない。
自分の配下は全て自分が生み出した比較的若い神だ。
ほとんどが中級神クラスである。
中には上級神クラスもいるが、そんなものを彼女に差し向けたところで勝てるわけがない。
やはり、自分が出るしかないか。
そう考えていた時だ。
「最高神様、失礼します。お困りでしたら私にお任せ下さい。」
玉座の間に入ってきたのは、イシュトスと言う若い神だった。
最高神は彼の次の言葉を待った。
すいません。
しばらく閑話が続きます。
ご了承下さい。




