第985話白と青のグラデーション50
切り飛ばされた左腕を庇いながらミーラルは咄嗟に身を退く…
油断してなかったかと聞かれれば、はっきり言って油断していた。
だが、敵は全てこちらの味方が抑えた上で死にかけのゴミを始末するだけの仕事だと思っていたのだから、ミーラルのこの状況も仕方のないことかも知れないが…
そしていつの間にかミーラルは5体の存在に囲まれていた。
5人ではない。
5体である。
この人形ですらない異形の存在達をあらわすならこの表現が正しい。
そして、その存在とは直接会ったことはないが、音に聞くその姿はあまりにも有名だ。
「コレートルっ!?なっ!?なんでっ!?お前はラグア様に殺されたはずじゃっ!?」
油断したまま一撃をもらってしまったミーラルだったが、それをやってのけた相手を見てさらに驚愕することとなる…
アラウザルゴッド、悪食のコレートル…
かつてラグアが倒した60兆年以上生きている目玉の化け物である。
「…はじめて見るな…若いイナゴよ…儂はコレートル…最高神の間では悪食のコレートルなどと呼ばれている」
宇宙空間の異形の球体の単眼がパチリと開き、コレートルは言った。
「やってくれたんね…時代遅れの醜い化け物が…お前風に名乗るなら、わっちはミーラル…アラウザルゴッド、黒蛇のミーラルって名乗っておくんよ」
失った神格エネルギーまでは戻らないが、とりあえず左腕を再生させながらミーラルは言った。
ミーラルは周囲に注意を割く…
あれがコレートルなら、ぐるりと囲んでいるひとまわり小さい化け物達はコレートルの子…
つまりはフォースアイだろう。
まさかこんな連中が出張ってくるのは完全に予想外だった。
何故…
「…不思議か?儂が生きていることが?簡単な話だ。敵の敵は味方だそうだ。ミグとかいった新鋭のアラウザルゴッドが言うにはな?」
読心というわけではないが、ミーラルの疑問を感じ取ったのだろう。
コレートルは言った。
そう。
コレートルはアゼルメーテの記憶を媒体に、ミグの黄泉の神により、復活を遂げていたのだ。
隠し玉と言える戦力を準備していたのは、何もリーゼ達だけではなかった。
ミグ達もまた、最終決戦に備えてコレートル達を味方に引き入れていたのだ。
「上等なんよ。老害が化けて出たところで何もできないことを教えてやるんよっ!!地獄に送り返してやるわっ!!」
計画が狂った怒りか…
左腕を切り飛ばされた怒りか…
あるいはその両方か…
額に青筋を立てながらミーラルは捲し立てたのだった。




