第967話白と青のグラデーション32
時は少し遡る。
アラウザルゴッドと化したミュラ達は慎重に敵陣に近づいていた。
〜
その頃…
「まだよ。十分に引きつけるのよ…絶望的な奇襲で一気に崩すと同時に完膚なきまでに心をへし折る…」
「ふふふっ、さすがは私の妹ですね?ラグア様同様なかなかいい性格をしてますね?これではどちらが邪神だかわからないぐらいに…」
リオーナの傍に待機するエリローズが茶化し出すが、リオーナは無視する。
そして…
パチンッ…
リオーナは指を鳴らす…
それは合図だ。
その合図に従って召喚されるのはこの瞬間のためだけに用意された圧倒的な戦力達…
「全員、主力を補助しつつ進軍。あたし達も出るわよっ!!新時代を切り開くのよっ!!」
「はっ、ラグア様の覇道の最後の障害…このエリスが全て塵と変えてまいります」
「妹に無視されるとはお姉ちゃん泣いちゃいますよ?戦いが終わったらちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さいね?」
「………一回だけよ?行きなさい」
リオーナのその命令に瞳を狂気に染めたエリスと、異様なほどに士気のあがったエリローズが神速を遥かに超える速度で飛び出す…
それはさながら二筋の閃光…
そう表現するのも生易しい常軌を逸した動きだった。
〜
一方その様子を見ていたミュラ達はというと…
「ぐっ…これでも…これでもまだ、妾達はリーゼを甘く見ていたというのか…」
大量の伏兵を加えて進軍を再開する化け物達…
作戦は完璧だった。
だが、結果はこの様…
あまりにあまりな状況である。
こんなはずではなかった。
ミュラは現実を受け止められないでいた。
「うわ…ないわー…こりゃ死んだね」
「クソッ…お前らあとは任せたぞ?一瞬ぐらいなら稼いで…」
もはや諦めているシーラと捨身の玉砕に出ようとするジオ…
だがそんな中、たった一人だけ冷静なものがいた。
「ミュラ、指揮権をもらうぞ?全員散開っ!!」
ロロのその言葉で現実を受け止められなかったミュラやもはや諦めていたシーラや、玉砕特攻を決行しようとしていたジオには一瞬の間があったが、言われた通りに散開する。
ミュラ達とロロの実力差は今はそこまでないが、それでもロロはミュラ達にとっては兄貴分である。
現実逃避しているメンバーを回復させ、動かせるだけのカリスマ性は健在だった。
そしてロロがそんな命令を出した理由…
それは…
「くかかかっ!!そのまま群れてりゃオレの概念融合で一網打尽だったのによお?まあいいや。せいぜいない頭を使ってオレ達を楽しませろや?本気で暴れ回る機会なんかこの先には、そうそうありはしねえだろうからな?」
神帝ラピロアの腹心にして現状、全宇宙で3番目に古いアラウザルゴッド…
両面のエルミナは好戦的な笑みを浮かべながらそう言ったのだった。




