第964話白と青のグラデーション29
パターンCはほぼない。
理由は、パターンBに比べて利点が薄すぎることだ。
仮にアンチステータスゾーンを破壊したところで、こちらがもう一度打てないという保証はない。
事実、核玉のレプリカはもう一つある。
逆にアゼルメーテの強化に使ったところで、アンチステータスゾーンで力を抑えられているから、あまり意味はない。
正確には全く意味がないことはなく、アンチステータスゾーンが解かれた瞬間にアゼルメーテが有利になるが、速攻性が皆無だ。
現状、この状況を打破しなければならないほど切羽詰まった状況でこの選択肢はほぼない。
そして、そんなことをするぐらいなら、パターンBのついでにそちらも済ませてしまった方がいいのは、大して頭がきれなくとも、普通の考えができるヤツならわかる。
ここまで言えばわかるだろう。
そう。
パターンBは権能の概念によるミグ陣営の大幅強化…
そして、おそらく…
ここでリオーナはついに口を開く。
「全員、作戦通りでっ!!敵は全員アラウザルゴッドになったと考えなさいっ!!」
リオーナのその指示で集まったラグア陣営の面々は動きを見せる。
リーゼとリオーナにより、予め決められていたその動きは恐ろしいほど早かった。
エリス、エリローズの両者はリオーナの元に…
正確にはアンチステータスゾーンで戦っているリーゼの真っ黒な空間を守るように陣取る。
そしてその他の面々はというと…
〜
「これがアラウザルゴッドか…うまく表現はできんが、力が漲ってくる…」
「ミュラ、ラグア側もなんか妙な動きをしてるがこのまま行っていいんだよな?」
権能の概念により大幅に増大した力を確認しているミュラに対し、同じく大幅に力が増したジオはそう問いかける。
「ジオ、気にすることはねーよ?負ける気がしねーしな?」
「…」
比較的楽観的なギゼルだが、ミストもそれに肯定するように形状を変化させる。
「さすがにもう一人で突っ込むつもりはないけど、この分ならラグア側の前線が崩壊するのは時間の問題…ウチらの勝ちは揺るがない」
シーラもまた自信たっぷりにそう言った。
そこにロロとシャドウラルファも合流する。
「ロロ様?ヤツは倒したのですか?」
「いや、逃げられた。正確にはミュンのアレが発動する直前にな…ライナーとか言ったか…状況はヤツが押していたはずだから最初は意味がわからなかったが、これなら納得できる」
ロロは言った。
だが、そんな状況下、難しい表情をしている者が二名…
ミュンとシャドウラルファである。
「みんな…私が言うのも変だけどあんまり油断しないで…おそらくリーゼはこの展開を読んでた。じゃなかったらあんなにスムーズに全員を同時に退かせるわけがない」
そう。
ミュラ達が味方同士でこんな話をしているのは、そもそも敵がいないからだ。
リムリットとシーラはミュンの権能の概念の発動の兆しをみると即座に撤退した。
現在はリオーナ、エリス、エリローズを除いて全員1箇所に固まっている。
「ええ、オリジナルのお姉様の狡猾さは侮ってはいけません。必ず何か仕掛けてきます」
ミュンとシャドウラルファのその言葉に完全に勝利ムードだったミグ陣営はもう一度気を引き締めるのだった。




