第81話エリローズの思惑
ロロは言う。
「エリローズ様…。やはり復活なされていたのですね。」
「ロロ、お久しぶりです。おかげさまで全盛期には程遠いですが、この通り元気ですよ。」
「エリローズ様、俺はあなたと敵対するつもりはありません。このまま逃がしていただけないでしょうか?」
「いやー、そう言われましてもね、私は個人的にはあなたの事は好きですがそれじゃラグア様が納得しませんし。ラグア様は私の弟の様な存在ですし、可愛い弟の意見は尊重してあげたいですし。」
俺は2人の会話に割り込む。
「おい、いつから俺がてめえの弟になった?つーかさっさとコイツを殺せ。ミグの方は俺がやる。」
エリローズは言う。
「ロロ、提案ですがあなただけを逃すならしてもいいですよ?」
「申し訳ございません。そういう訳には…」
「ですが少しおイタが過ぎましたね。このまま帰すわけにはいきません。そうですね、あなたの神格エネルギーの半分の譲渡で手を打ちましょうか。」
「………わかりました。」
エリローズとロロのやりとりを聞いて、ミグが割り込む。
「そんな事をしたらロロ様の力が…」
「ミグ、いい。わかりましたエリローズ様、それでお願いします。」
一度失ってしまった神格エネルギーを回復するのには、気の遠くなる様な時間がかかる。
だが、現在ロロの前にいるのは圧倒的な強者。
歯向かう事などできるはずがない。
神格エネルギーを半分まで奪われたらロロ自身、中級神クラスまで落ちてしまうだろう。
だが、ミグを救うためには仕方がない。
目の前の存在は自分よりも遥かに上位の化け物なのだから。
俺は言う。
「おい、俺が納得してねーぞ?ロロはともかくミグの野郎は一度殺されかけてんだ。ぶち殺さなきゃ気がすまない。」
エリローズがロロに神格エネルギーの譲渡を条件に見逃すと言い出したのは、その目的のためだった。
自分もラグアも今のままでは最高神を殺せるまでの力はない。
つまり神格エネルギーの譲渡が必要だったのだ。
テオレームなら喜んで渡しそうだが、それだけでは最高神を殺すには足りない。
だが、ラグアにその事を説明する訳にもいかない。
そんな事をすればラグアと敵対する可能性が出てくる。
それは今はできない。
それをするならせめて最高神を完全に殺しきってから。
二度と同じ失敗は繰り返さない。
エリローズは言う。
「ラグア様には私が言っておきましょう。それでは神格エネルギーの譲渡をお願いします。」
「てめえ、人の話聞きやがれ。俺はミグの野郎に…」
次の瞬間、俺とエリローズの体に力が流れてくるのがわかった。
「ラグア様、あんなガキ放っておきましょう。帝級スキルなど吸収したところで神格エネルギーを直接吸収するより、遥かに効率は悪いですよ。」
「ふざけんじゃねえ、俺がアイツを殺したいんだよ。」
その後も俺とエリローズの言い争いは続いた。
俺はこの時、完全にエリローズに対する怒りで他に注意がいっていなかった。
次にみた時には、ロロもミグも分体にすり替わっていたのだった。




