第956話白と青のグラデーション21
「ちっ!?」
俺はミグの権能の概念が発動したのを確認すると、短く舌打ちをした。
クソが…
ミグのヤツ…
自分の神格エネルギーを上げるのをやめて俺の神格エネルギーを削る方に切り替えやがった。
そして、俺から削った神格エネルギーはミグの神格エネルギーに追加されている。
まあ、俺の神帝の絶対領域の強化版ってとこか。
さて、どう動くべきだ?
俺の頭は高速で次の手を思考する…
この状況…もはや俺は権能の概念は切るしかないが、大事なのはタイミングだ。
ミグの神格エネルギーが対処できる範囲…
尚且つ、俺の権能の概念が確実に打ち勝つ瞬間…
俺はわざと神格エネルギーを全力解放する。
核玉の数値で100万もあった俺の神格エネルギーはみるみるうちに目減りする…
それにはさすがのミグも怪訝な表情になる。
まあ、そりゃそうだ。
ミグにしてみれば神格エネルギーをわざわざプレゼントしているのと同義である。
さすがに何か裏があると警戒したミグの権能…
神格エネルギーの吸収速度が緩やかになる。
俺は表情には出さずに内心でほくそ笑む。
むしろありがたい。
タイミングをはかって権能を切ろうとしている俺からしてみれば、ゆっくりの方がむしろ合わせやすい。
ミグのこの選択は裏目であり、完全に悪手と言える。
75万…70万…
俺の神格エネルギーが減っていく。
35万…40万…
それに比例してミグの神格エネルギーは増大する。
俺の神格エネルギーは65万…60万…とさらに吸収される。
45万…50万…合わせてミグの神格エネルギーがあがるが、ミグは一瞬たりとも俺から視線を逸らさない。
あからさまに怪しい行動…
警戒するのは当然だ。
そしてついにその時はきた。
俺とミグ…互いの神格エネルギーが55万になる。
今だ!!
俺は勝利を確信する。
「くくくっ、ちっとはまともになったと思ったが、相変わらずのバカだな?権能っ!!」
俺はここで温存していた権能をついに解放する。
ガラスの割れるような…だがそんなものではないほどの轟音は、神界どころかこの宇宙中に響き渡る…
その音の正体はミグの権能が俺の権能に打ち負けて破壊される音だ。
音ってたしか本来けっこう遅いんじゃねーのか?
いや、そもそも権能の破壊音なんか聴いたのははじめてだから…いや、どうでもいいか。
そう。
今の俺はこんなどうでもいいことを考える程の余裕がある。
直接ぶつけてみてわかったが、俺の権能とミグの権能にはそれなりの差がある。
つまり今後、よほどのイレギュラーな事態に陥るか、致命的なミスを犯さない限り俺が負けることはない。
さて、次の動きは…
怖いものがなくなった俺はついに千手観音モードを展開するのだった。




