第945話白と青のグラデーション10
「ギャハハハハハっ!!いいねえ?この体気に入ったよ?」
本体では絶対にしないような品のかけらもない笑い方をしながら、分体リーゼの姿は変化する。
それは幼女の見た目…ここまではリーゼと変わらないが、赤と青のオッドアイの瞳の本体リーゼに対し、分体リーゼの意思は金と銀のオッドアイの瞳に変わる。
「ちっ…緊急時だったから、実験もしないで神格炉に突っ込んだおかげで若干精神がゴッズクローンに融合しちゃったよ。まあ、おかげで個としての自分を、確立できたいいんだけどさ?」
金と銀のオッドアイを爛々と光らせながら分体リーゼ…いや、分体リーゼだったものはそう呟いた。
それはそのまま続ける。
「そうだなー。もはやリーゼはリーゼとは言えない。だから自分で名前をつけることにするよ。…リゼル…リゼル・オルガット・イグロシアル。パパの末っ子を名乗らせてもらおうかな?」
言いながら分体リーゼ改め、リゼルは手近なゴッズクローンの胸に大穴をあける。
「「リーゼ様!?何をっ!?」」
その場にいたゴッズクローン達は揃って乱心した指揮官を止めようと声をあげるが、リゼルは聞く耳を持たない。
「うるさいよ。お前らが役立たずだからこうするしかなかったんでしょ?結局最後に信じられるのは自分だけなんだよっ!!」
リゼルは次々と自ら召喚したゴッズクローンの神格炉に穴をあけて、神格エネルギーを自らの神格炉に注ぎこむ。
〜
ミュラ達は媒介クローンと地雷クローンを危なげなく倒し続けながらリゼルの状況を視界の隅におく。
「ミュラの言う通りだ…本当にイカレタ外道だな。味方を味方とも思ってねえ…ミグの性格ならリーゼを嫌うのも当然だ。…いや、アイツはリゼルだったか?」
敵陣で行われている戦闘や仲間割れと言うより惨劇と言った方が正解な状況にジオは言った。
「ですが、あまりいい状況とも言えませんね…今のところはまだこちらが有利ですが、足止めの捨て駒の数が数です。お姉様…いえ、元お姉様に時間を稼がれれば稼がれる程、こちらとの差は縮まると考えた方がいいですね」
シャドウラルファは現在の状況を正確にそう分析すると言った。
こうしている間にもリゼルはこちらに対抗するために、味方の力を奪い続けている。
そんな状況の中…
「お前らは先にいけ。ここは俺が抑える」
静かに…だが強い意思を持って、その人物…
ロロ・ベアトリスクは言ったのだった。




