第942話白と青のグラデーション7
分体リーゼの戦略は一言で言うなら悪質だった。
ゴッズクローンを後方に待機させ、媒介クローンと地雷クローンに突貫させる。
そして陣形が乱れた隙にゴッズクローンの攻撃を挟み込む。
その一連の動作は洗練されたもので、召喚されたクローン達の一団の動きはまるで一つの生き物のように見えた。
「さすがはお姉様…本体に比べて遥かに劣化した分体でこの指揮能力とは…」
シャドウラルファは呟いた。
「ミュラ?どうする?このままじゃジリ貧だ。ミュンのはともかく、俺達のは使ってもいいか?」
そのロロの言葉にミュラは一瞬考える素振りを見せるがすぐに答えを出す。
「…ロロ様、仕方ありません。できればそれも本体との戦いにとっておきたかったのですが、そこまで欲張って分体リーゼを突破できないようでは元も子もありません。やりましょう」
ミグ陣営の指揮系統はミグ、アゼルメーテに次いでミュラという具合になっているが、ミュラをはじめとしたアルムス出身メンバーはロロに対する態度は昔のままだ。
それは他でもないミグ自身がそうしているせいも大きいが、何よりミュラ達はアルムス時代から兄貴分とも言えるロロを今でも慕っているからに他ならない。
「へえ?まだ何か…ってめんどくさいな…先に追加召喚しとこ…」
分体リーゼはミュラ達がこれから何をやるのか正確にわかったわけではないが、それが自分に通用するということはわかった。
さらなるゴッズクローン…地雷クローン…媒介クローンが召喚される。
とは言ってもこちらは分体リーゼの周りから動かない。
ラグア…正確にはラグアから指示を受けたリーゼは今回の最終決戦の為にありったけの戦力を用意している為、ストックの余裕はまだまだ腐るほどある。
だが、それでも一度に襲いかかれる量はたかが知れている。
分体リーゼはゴッズクローンを通して神通による指示を飛ばす。
さすがにこの指示は直接言葉に出すと士気を下げるからだ。
『第二陣、第一陣が壊滅した直後に間髪入れずに攻め込め。休ませる暇を与えちゃダメだよ?』
第一陣が壊滅するのはもはや分体リーゼの中で決定事項…
そして、もちろん第二陣にも全てを打ち明けたわけではない。
分体リーゼは密かに補助に入っているゴッズクローンに第三陣の召喚準備を整えさせる。
「いけっ!!お前ら!!お前ら誰の配下かな?他でもないパパの配下だ。パパの前では何をやっても無駄だってことを教えてあげなよ?」
言葉ではこう言ったが、分体リーゼの頭の中では既に第一陣と第二陣は様子見の為の捨て駒になっていた。




