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七個めっ♪ バイトっ!始めました!

いつも通り遅れました…すみません。

「貴方は私の運命の人…結婚して」(?)


 どうしてこんなプロポーズをされているのか?俺はこうなった経緯…などない気もするが、一応遡ってみる。






 両手に花を携えて登校した日の昼休み、いつも通りの声が掛かった。


「平真!学食行こうぜ!!」(明)

「ああ、行こうぜ!信も来るだろ?」

「それは行くけど…平真は行く必要ないんじゃない?」(信)

「は?それはどういう意味だ?」

「平真!お昼一緒に食べよう♪」(れ)

「もちろん、3人で一緒にね♪お弁当は作って来たから・・・ここだと注目されそうだし、屋上へ行こうよ♪」(み)

「うん、そうしようそうしよう♪明美はどうする?一緒に来る?」(れ)

「れもんの邪魔なんてしないわよ?こちらはあぶれた者同士、石榴(ざくろ)さんと二人でゆっくり食べることにするから気にしないで」(川)

「あ・・・ごめんね、ざくろ?平真の事ばかり考えちゃってて…」(み)

「気にしないで良いですよ?昔から、みかんが平真至上主義なのは知っていますからね。折角のお誘いですし、明美さんとご一緒することに致します」(ざ)

「うん、ありがとう。いつも私ばかり振り回してごめんね?明美もありがとう、気を使って貰っちゃって」(み)

「良いのよ?男が出来て捨てられてしまった者同士、仲良くするからね♪」(川)

「ふふっ♪それでは、そうしましょうか?」(ざ)


 俺を置き去りにして話が纏まっていく…い、一応社交辞令でも良いので明にも触れてやってください…。そんな風に心の中で明に対して涙を流していると…


「じゃあ、俺も女が出来て捨てられてしまったのでご一緒してもい」(明)

「「ごめんなさい」」(ざ&川)

「即答ですか!?せめて最後まで言わせてくれても良かったんじゃないでしょうか!?」(明)

「明…察してあげなよ?二人は、君との押し問答の時間が勿体ないと思ったんだよ」(信)

「お前こそ親友の傷ついた心を察して貰えませんかね!?くそぅ…表に出ろ、しんきろう!決着を付けてやる!」(明)

「てめぇ、コロがされたいようだな?良いだろう、身の程をわきまえさせてやろう!」(信)

「ならば付いて来い!学食で…早食い対決だ!」(明)

「何で挑まれようと僕が勝つ…負けた後は分かっているな?」(信)

「お前こそ、負けた後の罰ゲームに怯えるがいい!女の子の情報を集めるために、常に早食いを意識している俺に勝てると思うなよ!!」(明)

「今まで負け続けている明に言われてもな…」(信)

「今日こそ勝つんだよ!いくぞ!」(明)

「いいだろう!・・・と言うわけで、こちらは心配しないで屋上に行ってきなよ?頑張ってね、平真」(信)


 二人は勢いのままに学食に向かって行った。・・・信ってマジで友達思いだよな…イケメンなのに…


「えっと…あの二人は大丈夫なの?」(れ)

「ああ、あの二人はああやって友情を深めているんだ…」

「そうなんだよ?れもん。あの二人はとっても仲良しなんだよ?平真が後から加わった親友トリオなんだもんね?」(み)

「うむ。時々ついていけなくなるけどな…二人とも良い奴なんだぞ?」

「確かに、3人一緒で何かしてる事が多かった気がするわね」(れ)

「そうなんだよね、たまに私が入って邪魔しちゃっていたけど」(み)

「少なくとも、明は邪魔だなんて思ったことはないと思うぞ?」

「ああ、彼はそんな感じだよね…」(れ)

「あはは…そこが明君の良い所なんじゃない?」(み)

「長所とも短所ともとれるな…一種の才能と言ってもいいかもしれん」


 女の子のためならどこまでも頑張れる奴だからな?噛み合えば凄い奴になるんだろうけど…さて?


「余りゆっくりしていると、ご飯を食べる時間がなくなってしまいますよ?そろそろ屋上に移動なさった方が良いのではないですか?」(ざ)

「あ…そうだね、行こうか♪」(み)

「うん、それじゃあ行ってくるね」(れ)

「おわっ!二人とも、引っ張らないでも行くから!」

「「ごゆっくり~♪」」(ざ&川)


 そんなわけで、屋上に来たわけですが…それほど長くないベンチに俺を挟んで右にれもん、左にみかん…しかも近いわけですよ。これはまさか…


「これが平真の分のお弁当ね!それじゃあ、早速・・・はい、あーん♪」(み)


 やっぱり来たか…これはあれか?左右順番で来るのか?来てしまうのか!?やばいな、俺の幸せメーターが振り切っとるぞ!?これを断る理由があるだろうか?恥ずかしい?嫉妬される?そんなのは関係ない!俺は、そこに山があれば登る事が出来る男だ!!


「あーん♪」

「美味しい?」(み)

「ああ、相変わらずみかんが作る料理は俺のツボを心得ているから美味いな!」

「当たり前じゃない?私は、平真のお嫁さんになるための努力だけは自慢出来るほど真剣に頑張って来たんだからね?」(み)

「そ、そうか…ありがとうな…」

「ううん…私がしたくて勝手にやっただけだから気にしないで!」(み)

「みかん・・・」

「ちょっと?二人で何を見つめ合っているのよ!」(れ)

「あ…ごめんね、れもん。ちょっと真剣な顔をしている平真に見惚れちゃって…」(み)

「いやいや、俺なんて見惚れるほどの顔じゃないだろ?」

「そんなことないよ!少なくとも私には…」(み)

「みかん…」

「・・・やっぱり、幼馴染は手強いよね…分かってはいたんだけど…」(れ)

「あぅ…度々ごめんね…つ、次はれもんがやっていいよ!」(み)


 おおっ!ついに、交互のあーん♪体験が!?


「・・・みかんは自分で作ったお弁当なんだよね?」(れ)

「うん!さっきも言ったけど、平真のためだけに覚えたから…味付けは好みが分かれるかもしれないけどね」(み)

「・・・やっぱり、私も自分で作ったお弁当を食べさせてあげたいから…今日はやめておくね」(れ)

「え?気にしないでも良いと思うけど…」(み)

「みかんは平真のためにずっと頑張って来た…だから、そのお弁当があるわけじゃない?だから、私も頑張ってお弁当を作れるようなってから食べさせてあげたいなって・・・」(れ)

「れもん・・・分かった!れもんがそこまで言うなら、私もれもんがお弁当を作れるようになるまではあーん♪はやめておくね!」(み)

「え?それはみかんが今まで頑張って来たから出来るんだし、私を待たなくても…」(れ)

「私がそうしたいと思ったからそうするの!だって…れもんの気持ちも分かるんだもん。ライバルでも応援したくなっちゃうじゃない?」(み)

「みかん…うん、ありがとう♪それじゃあ…厚かましいのを承知でお願いしたいんだけど…」(れ)

「うん、任せて!平真好みの料理ならたくさん教えてあげられるよ!」(み)

「え?ええと…確かに言おうと思ってはいたんだけど…いいの?」(れ)

「もちろん♪ただ、私の教えは厳しいよ?覚悟してね!」(み)

「はい、先生!頑張ります♪」(れ)


 ええ話しやなぁ…ただ、俺を挟まずにやって頂けると助かります。後、俺の両側からあーん♪はお流れですね…そうですか…


「平真はとても残念そうね?・・・みかんだけでもしてあげた方がいいんじゃない?」(れ)

「うーん・・・平真、どうしてもして欲しい?」(み)


 して欲しいです!と、言えるわけないでしょう?さっきの会話を聞いた後で言うとかただの最低野郎じゃないですか!?


「いや、自分で食べるから平気だぞ?ただ…二人で納得できるようになったら、両側から是非お願いします!!」


 どうだ!これが俺の生き様だぜ!!


「平真のこういう堂々としたところ…私は好きなんだよね♪」(み)

「長所か短所か迷う所ではあるけど…わ、私も嫌いじゃないからね」(れ)

「ふふっ♪平真に食べさせてあげると幸せそうな顔をしてくれるの!とっても可愛いんだよ♪」(み)

「・・・今日から早速教えてもらってもいいかな?」(れ)

「もちろん♪完璧に何て出来るのはまだまだ先だし、多少失敗しても良いから明日から持ってこようね?」(み)

「えっ、明日から!?さすがにまだ早いんじゃ…そりゃ、お母さんからも習ってはいるから食べられないほどのものにはならないとは思うけど…」(れ)

「それなら大丈夫だよ!私だって昔は下手だったんだから…。・・・そんな酷い料理でも、平真は文句言わずに食べてくれるの!私が平真の誇りたいところの一つがそこなんだ!『女の子の料理は全部笑顔で食べきる!それが俺の紳士道だ!』とか言って…とても嬉しかったなぁ♪」(み)

「・・・平真、私が失敗しても全部食べてくれる?」(れ)

「当たり前だろ?女の子の料理に文句など言わん!女の子が心を込めて作ってくれた…それだけで、俺にはそれ以上ない調味料になるんだからな!!」

「「平真…」」(れ&み)


 ふふっ…今のは決まっただろ?


「「そこまであーん♪を両側からしてもらいたいの?」」(れ&み)

「してもらいたいです!!」


 しまった!?つい、本音が漏れた!?


「本当に…平真は正直だから困る。そこがいいんだけどね♪」(み)

「まあね、変に考えを巡らせて良い所だけ見せようとするよりずっといいよね」(れ)


 この二人天使だわ…俺、これからは自重しようと思います。・・・出来ますかね?


「はい、平真の分はこれね?食べさせるのは…明日からね?」(み)

「おう!期待してるぜ!!」

「うう…私にプレッシャーが…」(れ)

「大丈夫だよ!今日、学校終わったら私の家に集合ね!お母さんからも習っているなら、明日には作れるようにしてあげる!難しいのにチャレンジしなければどうってことないから安心して♪」(み)

「みかん…うん!明美以外の友達の家に行くの初めてかも?ちょっと緊張する…」(れ)

「え?れもんなら人気ありそうだし…お誘い多そうだけど?」(み)

「みんなそう言うけど…私、明美以外友達らしい友達いないんだよね・・・」(れ)

「・・・今は私たちがいるじゃない♪」(み)

「・・・うん、そうだね。ありがとう♪」(れ)

「えへへ~♪じゃあ、私の家でみっちり教えてあげるね!頑張ろう!!」(み)

「おー!!」(れ)


 だから、俺を挟んでやらないでくださいって…お陰でお弁当がはかどるはかどる…


「わっ!?平真のお弁当もうない!?・・・そんなにお腹が空いていたの?」(み)

「・・・私のはお母さんが作ったやつだけど…分けようか?」(れ)

「だ、大丈夫だから!ごちそうさま!みかん、とても美味しかったぜ♪」

「お粗末様です♪平真の幸せな顔見そびれちゃったけど、今の笑顔で帳消しだね♪」(み)

「お、おう…。そ、それより二人とも早く食った方がいいんじゃないか?」

「そうだね、いただきます」(み)

「うん…いただきます」(れ)


 お弁当を黙々と食べる二人をそばに感じながら、俺は空を見上げる。今日も太陽は俺の輝かしい…要らないか?まああれだ、俺はこの幸せの時間を大事にしようと思う。


 そんな、幸せでゆったりとした時間は過ぎて行き放課後となった。すると、明が早速話し掛けて来た。


「分かっている、お前は遠い所に行ってしまったんだな…。一緒に帰ろうなんて言わないから安心しろ」(明)

「そう思っているならわざわざ声を掛けなくてもいいんじゃないかな?」(信)

「お、俺の勝手だろ!べ、別に平真と一緒に帰れなくても寂しく何て思ってないんだからなっ!!」(明)

「「ツンデレかっ!?」」(平&信)


 見事に、俺と信の息ぴったりのツッコミが入った。


「ごめんなさい、平明信君。ちょっといいかしら?」(川)

「「「三位一体で捕らえるのはやめてもらえますか!?」」」(平明信)

「ごめんなさい?」(川)

「全然心がこもってねぇ…」(明)

「ああ、全くこれっぽちも悪いと思ってないな」

「二人とも、もっと寛大な心を持つべきだよ」(信)

「「イケメンは顔を変えてからおととい来やがってください」」(平&明)

「ちょっと、平明信君。その寸劇やめてもらっていいかしら?」

「「「寸劇じゃないから!?」」」(平明信)

「とにかく、貴方たちがそれを止めてくれないから、れもんたちが話し掛け辛そうにしてるんだけど?」(川)

「あ、すまん…もしかして、一緒に帰ろうというお誘いか?」

「はいはーい!それなら名案があります!俺たちも含めて7人で仲良く帰ればよいと思います!」(明)

「明…君はもうちょっと自重した方がいいと思うよ…」(信)

「その事なんだけど、私たち買い物してからみかんの家に行くから…平真はお友達と帰ってね?と言おうと思ったの」(れ)

「そうなんだ!これから、れもんの料理特訓しないといけないからね♪平真、悪いけど平明信で帰ってね?」(み)

「「「その名を定着させないでいただきたい!!」」」(平明信)


 いや、マジで定着しそうで怖いからやめて欲しいですわ…


「それじゃあ、明美ちゃんと石榴ちゃん、一緒に帰らない?」(明)

「私、空手部があるから」(川)

「私も、弓道部があるもので…折角お誘いいただいたのにすみません」(ざ)

「ふっ…分かっていたさ…こういう展開になるのくらい…」(明)

「それじゃあ、傷心の明太君のためにパーッとゲーセンにでも繰り出しますか!!」

「そうだね、そうしようか?」(信)

「お前ら…俺たちの友情は永遠だぜ!!」(明)


 暑苦しいから首に手を回して抱き着くのやめてもらえませんかね?


 その後、それぞれ別れの挨拶をして俺たちはその足で学校に近いゲームセンターに向かった。


「あーあ、俺に春はいつ来るんだろう?明日か?明後日か?どう思う?」(明)

「思うに、明はちょっとがっつき過ぎなんじゃないかな?せめて、平真みたいに一見はそこまで興味ないよ?的な装いをすれば、少しは違うかもしれないよ?」(信)

「マジか?イケメンが言うなら間違いないかもしれないな!?」(明)

「いや…イケメンなら何をしても許されるから…参考にはならんぞ?」

「そうだった!顔が全てなのか!チキショー!!」(明)


 そんなアホな会話をしつつ、ゲームセンターに近付いてきたころ唐突に信が疑問を投げかけて来た。


「そういえば、平真。君はお金に余裕があるのかな?二人の女性を天秤に掛けて選ぼうと言うのに、まさかデートもせずに選べるとは思っていないよね?二人とのデート資金はあるのかい?」(信)

「え?」


 俺は思わず立ち止まってかばんを落としてしまった。・・・確かに、デートをしないで選ぶのは難しいかもしれない。しかし、俺にそんな甲斐性あるわけないじゃないですか!?


「どうしたらいいのでしょう?そんなお金なんてないんですが…」

「そう言う事だと思ったよ。・・・実はさ、この近くの喫茶店でアルバイトを募集しているんだよ。ほら、前に言ったことあるでしょ?平真と明で氷の早食い対決してお店の人に睨まれた喫茶店」(信)

「睨まれた店で働けと!?」

「あはは、大丈夫だよ?なんせ、緊急募集みたいだからさ。ちょっと話を聞いてみたんだけど、客の嫌がらせで女性のアルバイトが一斉にやめてしまったらしくてね…今度は、男性も入れようとおもっているみたいなんだ」(信)

「なるほど、ゲーセンにはガラの悪いアホもいるからな…」

「そう言う事だよ。だから、どうかな?面接だけでも受けてみたら?」(信)

「しかし、履歴書も持ってないし…」

「そこは大丈夫みたいだよ?ちょっと話したら店長と仲良くなってね…俺の友達なら3人纏めて採用してくれるってさ」(信)

「イケメン仲間だと思われてそうで怖いんだが…あと、その店長確実に女性だろ!?」

「俺はやるとは言ってないのに…数に入ってるんだが?」(明)

「まあまあ、二人とも?とりあえず、行くだけ行ってみようよ♪」(信)

「「このイケメン、無駄にアクティブだよな!?」」(平&明)


 そんなこんなで喫茶店の前に着きました。


「まあ…付き合ってもいいけど…俺は適当にやって抜けるぞ?女の子が待ってるからバイトなんてしている時間は…」(明)

「でも、彼女が出来た時にデートするお金がないんじゃ困ることにならないかな?やっぱり、デート代は俺が全部受け持つぜ!くらいの甲斐性を見せられる男の方がモテると思うよ?」(信)

「確かに、その通りだな!仕方ない、親友のためだ!俺も一肌脱ごうじゃないか♪」(明)

「・・・ほんと、単純だよな、明は…」

「はっはっは♪明るい未来が待ってるぜ!二人とも!行くぞ!!」(明)


 そんな陽気な感じで明は喫茶店に入って行った。そして、隣を見れば信が笑顔で俺を見ている。分かってるよ・・・


「はあ、行くだけ行こうか?イケメン以外お断りだったらさくっと帰れるしな…」

「大丈夫だって!ほら、行こうよ♪」(信)

「あーれー」


 やる気ない擬音共に、俺も信に引っ張られるようにして喫茶店へと入った。


「いらっしゃいませ♪」(店)

「あ、その二人もバイトの面接だから挨拶要りませんよ?」(明)

「あ、わかりました。では、みなさんついて来て下さい。奥で店長がお待ちになっておりますので」(店)

「話の展開早すぎないか?」

「あ、僕が今日行くと先に電話しておいたから」(信)

「「マジか?」」(平&明)

「マジだよ?さあ、行こうよ♪」(信)


 そして、案内されるままに奥へと案内された。そして、座った向かい側に美人の女性が座っていた。店長かな?3人同時で面接ですか?


「・・・信君のお友達にしては普通だな?」(店長)

「「第一声がそれって酷くない!?」」(平&明)

「二人とも僕の大事な親友ですよ」(信)

「信…」

「お前…」(明)

「そうだったのか、すまない。・・・それで、どっちが攻めなんだ?」(店長)

「「いい加減にしろよ?この女!!」」(平&明)

「実は、こう見えて僕が攻めです」(信)

「なるほど、そうなのか♪」(店長)

「おい、やめろ!それだけは乗っちゃいけねえところだろ!?」

「そうだぞ!お前が言うとシャレになってねぇんだよ!このイケメンがっ!!」(明)

「ふふっ、君たちは面白いから合格だ♪」(店長)

「「何の面接だったんだよ!?」」(平&明)

「喫茶店のアルバイトの面接だが?」(店長)

「いや、そうなんだけど…」(明)

「普通に返されても困ると言うか…」

「それじゃあ、早速今日から働いてもらうおうか?」(店長)

「まてまて、いくらなんでもそれは早すぎだろ?制服だってまだもらってないしな…」(明)

「それに、まずはやることを教えてもらわないと何も出来ないぞ!?」

「そこはフィーリングでなんとか」(店長)

「「なるかっ!?」」(平&明)

「この二人はお笑いコンビを目指しているのか?」(店長)

「ええ、きっと将来有名になりますよ」(信)

「「なってたまるかっ!!」」(平&明)


 などと色々騒ぐだけ騒いだ後、そのまま制服に着替えさせられた。自己紹介の後軽い説明を受け、マニュアルを受け取っていざホールへって、可笑しくないか?


「え?マジで今日からやらせる気ですか?」

「いや…俺でもびっくりだわ、この展開は!」(明)

「二人とも、ウエイター姿が似合ってるよ」(信)

「「お前に言われると嫌味にしか聞こえない」」(平&明)

「ふふ、何かあったらフォローするから…頑張るだぞ♪後はこの娘に聞いてくれ。それじゃあお願いしたよ、丸郷(まるさと)君」(店長)

「わかりました、店長。後は任せて下さい」(丸)

「見切ったわ、俺。あの店長はいい加減で、大概の事は丸郷さんに丸投げしてやがるな?」(明)

「やめろよ、本人の前で…事実だったとしても気分が良い物じゃないだろ?」

「ああ、大丈夫ですよ。もう、慣れましたから…」(丸)

「「遠い目をしてらっしゃる!?」」(平&明)

「それはともかく、3人とも改めてよろしくお願いしますね」(丸)

「「「よろしくお願いします」」」(平明信)

「とはいっても、お客さんが今はいないんですよね…」(丸)

「いつもこれくらいなんですか?」

「平日ですからね。でも、学校が長期休みの時期はゲームセンターから結構流れてくるから忙しくなるんですよ?」(丸)

「と言う事は、土日がメインと言う事か…そういや、休みとか時給とか何も聞いてねぇし…」

「あははは…あの店長ですからね。・・・私からも、すぐに決める様に言っておきますから…」(丸)

「苦労してそうですね…」(明)

「語りつくせない程度にはね…」(丸)


 哀愁が漂ってらっしゃる!?一体どんな苦労を背負わされたんだ?と、そんなことを思っていると誰かが丁度来店したようだ。


「平真君、出番ですよ!いってらっしゃい♪」(丸)

「は、はい!行ってきます!」


 ってあれ?こういう場合はお手本で丸郷さんがやるんじゃないの?・・・あの店長に鍛えられてるだけあって段々常識から遠のいて来ていらっしゃるのか?それとも…


「いやー俺じゃなくて良かったわ。いきなりやらせられるとは…俺でも緊張しそうだわ」(明)

「それじゃあ、次は明太君お願いしますね?」(丸)

「マジっすか!?」(明)

「頑張ってね?明」(信)

「他人事だと思って…」(明)

「その次は信樹郎君にお願いしますね?」(丸)

「それはもちろんやりますけど…」(信)

「ストップだ信!・・・丸郷さん、こいつの事は信でお願いします。マジでお願いします!」(明)

「よ、よく分からないけど了解しました。そ、それじゃあ平真君の接客の様子を見て参考にしましょうね?」(丸)

「「はい」」(明&信)


 などと言う会話がなされているとは知らずに、俺は入って来たお客さん…小学生くらいの女の子の相手をすることになっていたのだった。


「いらっしゃいませ♪一名様で宜しいでしょうか?」

「・・・見付けた、運命の人…」(?)

「は?ええと…お席の方に案内してもよろしいでしょうか?」

「・・・はい」(?)


 何か、変な事を呟いていたような気がするが…聞こえなかった振りして席へと案内した。


「メニューはこちらになります、ご注文が決まりましたら…」

「ご注文は貴方。貴方をテイクアウトしたい」(?)

「は?」


 さっきから何なんだこの子?・・・ははーん、さては背伸びをしたいお年頃ってやつか?なるほどなるほど、それなら仕方ないな。ここは大人の余裕を見せてやるか♪


「俺は高いぜ、お嬢ちゃん?君に払えるとは思えないな?」


 どうだ?この正気とは思えないセリフは!びっくりだろ?俺がもっとびっくりだわ…こんなセリフすらすら言うとは…さすが公認バカだな…


「分かった。それじゃあ、私の残りの人生で支払う」(?)

「・・・おおう、それは想定外だぜ、お嬢ちゃん…」


 え?この子なんなの?へ、ヘルプ!丸郷さん!!

そう思って、丸郷さんを見ると…視線を思いっきりそらされた!?フォローは!?フォローするって約束は何処にいったんですか!?


「じゃあ、契約成立と言う事で…」(?)

「成立してないから!?」

「え?ダメ?」(?)

「あのね?君。人生はまだまだ長いんだよ?俺なんかより…」

「大丈夫、貴方のは照れ隠しだって分かっているから…二人っきりになった時にプロポーズしてくれるってことでいい?」(?)

「初対面の人にプロポーズなんてしませんよ!?そ、それよりもここは喫茶店で俺は店員、君はお客さん!なので、ご注文をしていただきたいのですが!?」

「貴方のスマイルが欲しい」(?)

「にこっ♪って、そんなのないわ!?」

「そう言いつつもやってくれる貴方が愛おしい」(?)

「いやー、照れるなぁ♪って、照れてる場合かっ!?ご注文をお願いします!マジで!!」

「仕方ない、アイスティーをお願い」(?)

「承りました!では、ご注文を繰り返させて頂きます。アイスティーが1つ、以上でよろしいでしょうか?」

「貴方が抜けているわ」(?)

「俺は商品じゃねえから!?」

「分かってる。貴方を一生愛しぬくから安心して?」(?)

「そう言う問題でもないから!!ご注文の品をお持ちするまで少々お待ちください!!」


 そう言って、俺はダッシュで丸郷さんの元へ向かう!


「平真君!ご注文はっ!」(丸)

「アイスティー一丁!」

「了解!承りっ♪」(丸)

「「いっえーい♪」」(平&丸)


 俺たちはそう言ってハイタッチをする。・・・何、このノリ?ここまでやっておいてなんだけど…意味分からないぞ?


「って、そうじゃなくて!」

「え?アイスティーじゃないの?」(丸)

「それはあってるんだけど!そうじゃなくて!!」

「うんうん、分かってるから…落ち着こう?」(丸)

「・・・と言うか、何か丸郷さんキャラ変わってないか?」

「店長のお陰で鍛えられて…何かあるとテンションが急上昇しちゃうんだよ♪」(丸)

「おおう…コメントし辛いな…。ともかく、何で助けてくれなかったんですか!?俺、視線で訴えましたよね!?」

「大丈夫、あれくらい店長が起こすトラブルに比べれば…」(丸)

「・・・よく、この店潰れませんね?と言うか、今までいた人が辞めた理由ってお客云々じゃなくて、店長のせいなんじゃ?」

「・・・ありえるから止めて下さい…」(丸)

「・・・すんません。それより、アイスティー…誰が持っていくんですか?」


 3人そろって一斉に俺を指さした。わーい!満場一致だね♪うれしくないわ!!


「いや、俺が行ったらまた捕まって店に迷惑かけるし…」

「面白そうだから平真君はずっとあの子の所に居て良いぞ?」(店長)

「あんた、いつの間に来た?」

「ふっふっふ、面白そうなネタの所に私ありだ!さあ、平真君!このアイスティーをお客さんの所に運ぶんだ!店長命令だぞ♪」(店長)


 確かに、店長さんは美人だ。美人なんだが…今のだぞ♪には正直イラっとした。だが断る!と言えない日本人な俺は、しぶしぶ女の子の所に戻った。


「お待たせしました、こちらがご注文のアイスティーとなります」

「・・・」(?)

「あの、お客様?手を離して頂けると…」


 アイスティーを置いた時、手を引く前にしっかりと手を取られてしまった。


「私たちが離れ離れになる運命だとしても…私はそれに抗ってみせる」(?)

「いえ、そんな難しい話では…とりあえず、まだアルバイト中ですので手を離していただけると…」

「あっちの女の人が…平真はずっとここに居て良いと言っていた」(?)

「聞こえてたんかい!?しかも、名前までばれとる!?しかし、俺がこんなところでサボるわけには…ん?」


 見れば、いつの間にかそこそこのお客さんが来ていて、明たちを含めてみんなちゃんと働いていた。でも、人手は足りてますって程度だ。俺がここを離れる理由としては弱い…


「新人なので覚えることが多いんです!なので、失礼します!ごゆっくりどうぞ!!」

「・・・そんな理由で離すと思った?」(?)

「勢いで行けるかな?と…ハハハ…」

「そう…運命で結ばれた二人でも、言葉にするのは確かに大切…」(?)

「何言っているか全然分からないが、俺とは別次元にいることは確かだな」


 彼女は目を瞑り、しばし逡巡した後、何かを決意したような目で俺を見た。そして…


「貴方は私の運命の人…結婚して」(?)


 と言う経緯なわけだが…なるほど、全然わからん!確かに、俺は運命とか使命とかそう言う言葉は大好物だ。かつて、みかんに告白したこともあるが、それはあくまで長く俺のお世話をしてくれた経緯があってのことだ。出会ってすぐに、運命の相手と称してプロポーズなんて奇天烈な事はさすがに俺でも出来ない。


 これが俺と彼女の運命力の差だとでも言うのか…!?・・・あほな事を考えるのはやめよう…


「なるほど、君はあれだな?恋に恋するお年頃ってやつだな?ちょっとしたことで運命と結びつけちゃうような?わかってるわかってる、俺もかつてそんな時期があったさ…。まあ、ちょっと方向が違うけどな。だから、とりあえずお友達になって様子をみようじゃないか?」


 こういう理想を相手に見出してしまうお年頃の子は、すぐに現実との差で失望に変わるはずだ。・・・俺がダメなわけじゃないぞ?誰が相手でもそうなるって話だからな?


「そうやって私を都合の良いキープちゃんにすると…なるほど、さすが大人…」(?)

「どこでそんな言葉を覚えたのかな!?俺はそんなつもりはないからな!?」

「分かってる…本当は貴方の照れ隠しだってことくらい。本当は…私に自分の欲望をすぐにでもぶつけたい…つまり、私の唇を奪ってその後わ」(?)

「はい!ストップ!ストップです!!君、危険な事を言おうとしただろ!?この子のご両親いらっしゃいませんか!?娘さんが危険な事を口走ろうとしましたよ!?緊急家族会議を開いてください!今すぐに!!」

「ほうひたほ?いひはひふひはんへふはひはひひへ?」(?)

「うおっと!?喋るなよ?今、お前のご両親がきっと迎えに来てくれる…」

「・・・へろ」(?)

「おわっ!?びっくりした!?女の子が男の手を舐めちゃダメだろ!?」


 マジでびっくりした!?手を舐められるなんて初体験だぜ!?あ、猫からはされた事あったわ…


「落ち着いて、あなた」(?)

「いつの間に夫になった!?落ち着くのはお前だろ!?」

「?さっき…私の両親に挨拶をしたいと…」(?)

「言ってませんよ!?君が余りにも奇行に走ろうとするからご両親に迎えに来てもらいたかっただけだから!!」

「平真は照れ屋だね…。分かった…そう言う事なら、夜にでもうちの両親に挨拶しに来て…」

「行かないですよ!?マジで話聞いてください!?とりあえず、冷たいうちにアイスティーをどうぞ召し上がれ!!」


 そう言って差し出したアイスティーを仕方なさそうに受け取って飲みだす女の子。・・・そう言えば俺、この子の名前すら知らないじゃん!?・・・聞いても良いけど、余計こじれる気がして怖いんだが…


 とりあえず、他の連中が何してるかチラ見してみると…それぞれさっと目を逸らされたけど、全員こっちに注目してやがった…客も含めて!!にゃろう…特別手当を要求するぞ!!


「飲み終わった…。じゃあ…私の家に行こう…もちろん、平真も一緒に…」(?)

「当たり前の様に俺を誘うの止めてくれませんか!?しかも、夜にならないとご両親帰って来ないんだろ?それまで一人で待つのか?」

「?何言ってるの?平真も一緒にいるの…話の流れから当然」(?)

「いやいや、君こそ何を言ってるの!?送り届けたとして、俺は直ぐに戻るに決まっているだろ!?」

「ダメ…平真は夜まで一緒…」(?)

「何でそうなる!?大体、何をして夜まで待つんだ?・・・おままごとか?」

「・・・リアルおままごと…つまり、夫婦の営み…」(?)

「・・・お嬢ちゃんや、意味も分からないのにそんなことを言ってるとひどい目にあうぞ?」

「?意味なら分かってる…。夫婦の営み…つまり、せいk」(?)

「はい!ストップでーす!それ以上は言っちゃいけません!!ご両親!マジでどんな教育しているんですか!?マジですぐに出てきてください!お説教してやるぞ!!」

「・・・へろ」(?)

「おわー!?また舐めやがった!?ダメだってさっき言っただろ!?」

「平真の味…覚えた」(?)

「その台詞も禁止です!色々まずい解釈されそうだから!!」

「まずい解釈…?」(?)


 おお、良かった…。さすがにこれはわからないか…


「・・・なるほど、理解」(?)

「え?わかっちゃったの?君が言うと分かった振りに思えないから怖いんだけど…」

「平真の味を覚えた…つまり、平真とせい」(?)

「おわー!?何を言おうとしちゃってるんですか!?やめて下さいマジで!!マジで両親呼べー!!!」

「・・・へろ」(?)

「おわー!?やられると思ったけど何度やられても慣れないぜ!ちきしょー!!」

「平真の味…癖になりそう」

「何となくわかったぞ!今のは分かってて言っただろ?分かってて言ったよな!?」

「・・・どうしたの?お兄ちゃんが何を言ってるのか分からないよ…」(?)

「ぐふっ!?何と言う破壊力!?『お兄ちゃん』だと…落ち着け俺…さっきまでのこの子を思い出せ…これは罠だ…」

「平真・・・こういうプレイ…好き?」(?)

「プレイとか言わないでもらえますかね!?君は本当に何者なの!?小学生にしては色々知り過ぎてませんかね!?」

「・・・うちの両親は…とてもおおらかだから…?」(?)

「おおらかで済まされるレベルじゃねぇ!!マジで君のご両親とは話し合わないとダメそうだな!!」

「分かってる…娘を下さいって…言うんだよね…?」(?)

「違いますよ!?この流れでそっちに持っていける君は本当に凄いけどね!?」

「旦那様に褒められると…照れる」(?)

「褒めてないし、旦那様でもないからね!?」

「平真の照れ隠しは…声が大き過ぎ。周りから…凄く注目されてる…」(?)

「はっ!?」


 指摘されて見渡すと…やっぱり、従業員全員(客も含めてだが)目を逸らした。唯一、店長だけがこちらを見て笑っている!にゃろう…


「店長!笑ってないで何とかしてください!!」

「分かった、任せておくがいい!」(店長)

「おお…普通なら頼りがいあるとか思う場面かもしれんが、嫌な予感しかしねぇとかやばくないか…」

「平真君、君にその娘を家まで送り届ける使命を与える!」(店長)

「ですよね!?そんなことだと思いましたよ!!」

「もちろん、彼女のご両親が戻ってくるまで一緒にいるだぞ?ちゃんと時給は出すから安心して欲しい」(店長)

「安心出来ねぇよ!?絶対に面倒な事に巻き込まれる未来しか視えないわ!!」

「あなた…ついに結ばれる日が来たのね…」(?)

「結ばれる日が来たも何も今日出会ったばかりだからね!?しかも、俺が手を出すのが確定みたいな事言うのやめてもらえませんかね!?」

「いやぁ、良かった良かった♪旦那が照れてばかりでどうなる事かと思ったが…収まるところに収まったようだな?おめでとう!」(客1)

「うんうん、本当に良かった。年甲斐もなく、その娘の事を応援してしまったよ。結構式には呼んでくれよ?」(客2)

「何で全員祝福モードなんですかね、お客様方!?俺は一言も受け入れるなんて言ってませんよね!?」

「平真の照れ隠しは…バレバレ」(?)

「照れ隠しじゃないって言ってるよね!?」

「落ち着くんだ、平真君。とにかく、いちごを家まで送ってあげるんだぞ?」(店長)

「ちょっと待て…店長、あんた今この娘の名前を言わなかったか?」

「む・・・ついうっかり…てへっ♪失敗しちゃった♪」(店長)


 可愛らしくしているんだろうけど、余計にイラっとした!美人だろうと関係ねぇ!きっぱり言ってやる!!


「随分余裕があると思ってたら…あんた、この娘の事を知っていたんだな!どうなんだ!!」

「知ってるも何も、元同級生の娘さんですが何か問題が?」(店長)

「開き直ってらっしゃる!?俺の苦労はなんだったのかと言ってるんだよ!最初から店長が相手をしていれば、俺がこんなに苦労せずにすんだだろうがっ!?」

「・・・これには止むに止まれぬ事情があるんだ…」(店長)

「え?もしかして…この子の両親に何か問題が…?」

「・・・・・・実は」(店長)

「じ、実は?」

「その方が楽しそうだったから傍観することにした!ごめーんね♪」(店長)


 その可愛らしいポーズを取った店長を見た時、俺の中で何かが切れたような気がした。


「ふざけんな!!俺がどれだけ…あれ?」


 思い切り手を上に振り上げて叫んだら…何かクラッと…叫び続け過ぎたようだな…


 後ろに倒れそうだった俺を何か柔らかいものが支えてくれた。それは…


「ごめんなさい、平真君。店長を許してあげて下さい…。悪気は…あったんだろうけど、私が代わりに謝りますから…」(丸)


 そう言って胸と言う凶器を俺の背中にこれでもかと押し付ける丸郷さん。・・・みかんより大きいです!これは…少し違うだけでこうも違うのか!?ち、違うだろ!こんなことで俺が篭絡できるとでも…


「気にしてないよ?丸郷さん。それよりも、支えてくれてありがとう」

「良かったぁ…心の広い人ってとても素敵だと思います♪」(丸)

「いやぁ♪まあ、俺の心は海より広いっすからね!」


 もちろん、篭絡できるにきまってるじゃないですか!今までの苦労は、この瞬間のためにあったのだと思うね!


「平真…鼻の下が伸びてる…早速浮気…?」(い)

「なるほど、そうすればいいのか。丸郷さん、参考になったぞ!」(店長)

「二人とも違うでしょ!平真君は、とても心が広いだけだよね?」(丸)


 またも押し付けられる胸!ならば、俺の答えは一つ!


「当然じゃないっすか!」


 これが俺の生き様よ!笑いたければ笑うが良い!


「あの緩み切った顔…考えてる事がバレバレだろうに…」(店長)

「あの女…出来る!・・・平真を尻に敷く参考にしよう…」(い)


 何か二人が言っているが、今の俺の意識は一カ所に集中されているので聞こえない!


「それでね?平真君にお願いがあるの…」(丸)


 そう言って、俺を正面に向き直させ…そして、手を掴んで両手で包んで自分の谷間に!?なん…だと…


「あの子を…いちごちゃんを家まで連れて行ってあげて?きっと、本当は寂しいだけだと思うの…彼女の両親が帰って来るまでそばに居てあげて欲しいの…」(丸)

「お任せ下さい!不肖、この海藤平真!そのお願い、見事完遂してみせましょう!!」

「本当!ありがとう、平真君♪」(丸)


 そう言って、胸を押し付ける様に抱き着いてくる丸郷さん。ここが天国だったんだな!!


「もう…浮気は男の甲斐性だけど…平真はデレデレしすぎ…」(い)


 そう不満を言ってきたいちごちゃんに手を引っ張られて素敵な感触が離れてしまった。ナンテコッタ…


「平真…早く私を家まで送って…」(い)

「ああ、分かった。丸郷さんのために送ろうではないか!」

「・・・えいっ」(い)

「おわっ!?何で首にぶら下がって来たんだ!?」

「家まで遠いから…お姫様抱っこで運んで…?」(い)

「いやいや。もしそうだったとしても、そこはおんぶだろうが!?」

「何を…言っているの…?妻を運ぶ時は…お姫様抱っこ一択だよ…?」(い)

「妻でもないし、そんなルールもないからな!?」

「平真君、折角だからお姫様抱っこで連れて行ってやってくれ。その方が面白そうだし…特別手当、時給の他に五千円だそうじゃないか!いちごをよろしく頼むよ」(店長)

「五千円か…家までこの状態で?」


 五千円は嬉しいが、いちごをこのお姫様抱っこの状態で運ぶとか…罰ゲームか!?


「平真君…私からもお願いします。いちごちゃんをその状態で送ってあげて?もしやってくれたら…私も特別手当をあげちゃうかも♪」(丸)


 そんな胸を強調されるポーズで特別手当なんて言われたら…


「海藤平真!任務を遂行しに行ってまいります!!」


 そう言って俺は全速力で喫茶店を飛び出した。あ、何処に家があるのかこの子に聞かないと…


「なるほど、平真君に言う事を聞いてもらうには胸を押し付けるのが効果的と言う事か…安上がりで良いな」(店長)

「ふふっ、店長もこれからそうやってあげて下さいね?」(丸)

「あれ?丸郷さんって店長に苦労させられる立場だったんじゃ?これじゃあ、協力してるようにしかみえないんだが…」(明)

「そこから解放される可能性が出たの!それなら、それを活かすために最大限の努力をしないとね♪」(丸)

「それって、平真をいけにえにするってことでは…」(明)

「彼は心がとっても広いみたいだから、進んで厄介事を請け負ってくれるみたいですよ♪」(丸)

「おおう…実は、丸郷さんはとっても黒い人だったのか?いや、店長がそれくらい酷い仕打ちを彼女にしたと言う事かもしれんが…」(明)

「ふふ…人には思い出したくない過去って一つや二つあるとは思いませんか?」(丸)

「正解だった!?平真…俺にはお前の代わりはつとまりそうにないぜ…すまない」(明)

「明、絶対に代わる気がないだけだよね?」(信)

「じゃあ、お前が代わってやるか?」(明)

「遠慮しておくよ」(信)

「だよなー?」(明)


 俺が去った後、そんな話があったとかなかったとか…


 その後、俺はいちごを何とか家まで送り届けた(周りからはひそひそ話されたり無駄に注目されたが)

そして、彼女の両親が帰って来るまで何とかやり過ごし…ぶっちゃけ、彼女はマジであれの知識以てやがった…俺がどれだけ神経使って回避したかわかりますか!?


 先に父親が帰って来たわけだが…その時、俺は半分襲われかけていたので死を覚悟した。(彼女も俺もちょっと色々と衣服が乱れていた。主に、いちごが原因だが)

しかし、予想に反していちごの父親は土下座して『娘を末永くよろしくお願いします!』と言ってきたのだ。おおらかだと聞いていたが…これは酷すぎるだろ!?


 その後、何とか結婚話を回避しつつ、母親が帰って来たのだが…彼女はとても綺麗な女性でした!結婚したら幸せ者め!と言われるの間違いなしだね!奥さんに見惚れた俺に、旦那さんが『娘は妻にそっくりなんだぞ?今ならお買い得だと思うが…どうだ?』とか言って来てマジで考えてしまったよ…

 

 ・・・話が逸れた。まあ、予想通り彼女もいちごの援護に回ったわけで…その後、3人の猛追を何とか交わして、連絡先交換と、許嫁と言う形で何とか逃げた。これでも頑張ったんだぞ!マジで結婚を確約されるところだったんだ…。


 結果、分かったことは、彼女の名前は千代浦(ちようら)いちご。小学2年生の満8歳。・・・俺の半分だったぜ…。驚いたことに、彼女がこんなことを言って連れ込んだのは俺が初めてだったらしい。・・・嘘ついてないよな?そして、彼女の母親は、秋華(しゅうか)さん。うちの母親と交換して欲しいほどの美人だ。ついでに、父親は影国(かげくに)さん。絶対にいじめにあったことあるだろ?


 まあ、俺からは何も聞いてないからな?勝手に話してきた…怖いぜ、本当に。でも、一番怖かったのは…俺が部屋に着いてから届いた〇インだよ…部屋に入った瞬間届いたメッセージ『不束者ですが、これからよろしくお願いします♪』俺が思わず部屋中をいちごが隠れてないか探したのは仕方ないよな?


 バイト初日からとてもつかれた…だけど、一つ言いたい。バイト、ほとんど関係なくないか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


次話は7/10日予定です。…寝落ちが多くて間に合わない上に、また長くなり過ぎて…ただの言い訳です、すみません…

次話もよろしくお願いします。



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