ヒロイン話 れもん一個めっ♪
予定より遅くなり過ぎました、すみません。
内容も最初の構想と全く別物に…何でいつもこうなるのだろうか?(汗
今回は、丸々れもん視点となります。
「平真くーん!!」
平真が明美の回し蹴りを受けて倒れ込んだ。もう!平真は病人なのに!私は、何か言ってきた朋美を振り払ってベッドに何とか平真を寝かせた。
「れもん?」(川)
「もう!何で平真を蹴ったりしたの!?彼は病人なんだよ!?」
「・・・平真って呼び捨てにするなんて、随分仲良くなったのね?」(川)
「あ・・・ち、違うよ!これは…」
「・・・今日は私練習休むから!一緒に私の家に来て!」(川)
「ちょっと待って!?平真をこのままにするなんて…」
「大丈夫よ?ここは保健室だもの…保健の先生もすぐに戻って来るわよ!」(川)
「ちょっと待って!せめて書置きをさせて!」
そう言って、私はいつも持ち歩いているメモ用紙に「ごめんなさい」と一言を書いて置いた。あ、でもこれだと色々な意味に取られるかな?
「もういいでしょ?行くわよ!!」(川)
「ちょっと!?もう!分かったからそんなに引っ張らないで!!」
こうなった状態の朋美には何を言っても無駄な事を経験から知っている私は、大人しく引かれるままに彼女の家について行った。
「・・・それで?彼と…海藤平真と何があったの?」(川)
明美の家に着き、彼女の部屋で飲み物を貰って一息ついたと思ったら…開口一番にそんな言葉が出て来た。
「べ、別に何もないってば!」
「そんな嘘が私に通用すると本気で思っているの?」(川)
「そ、それは…」
さすがに、幼稚園からずっと一緒に居る幼馴染で、親友の明美にこんな嘘が通じるとは思ってはいないけど…
「さすがに、こんな話をしても信じてもらえるか分からないし…私自身、こんな話されたとしたら信じられないかもしれないと思っているくらいだし…」
「何年の付き合いだと思っているの?そんな言い訳は良いから話しなさい!」(川)
「でも…その…恥ずかしくて…」
「くぅ…そ、そんな可愛らしい仕草をしたからって見逃したりしないからねっ!?」(川)
可愛い仕草?手を合わせて体を揺らしていただけなのに?
「可愛い仕草って?」
「・・・天然だから余計にたちが悪いのよ…。とにかく!話しなさい?さもないと…」(川)
「さもないとどうするの?」
「平真君に直接聞くしかないわね?もちろん、無理やりにでも!!」(川)
「待って!そんなこと絶対にしないで!?もし、そんなことして平真に嫌われたら…私、生きていけないよぉ…」
「ちょっと!?何で泣いているの!?ちょっとした冗談じゃないの…」(川)
「だって…私ダメなんだよぉ…平真の事になると全然感情が制御できなくて…どうしたらしいの?こんなんじゃ、平真に嫌われちゃうよぉ…」
「あー、もう!れもんがどれだけ平真君の事を好きだかは分かったから!・・・だから、余計に話して欲しいの。そうしないと、れもんに協力も出来ないでしょう?」(川)
「え?協力してくれるの?」
「もう!泣き止むなんて現金なんだから…」(川)
「えへへ♪ごめんね?明美♪」
「…仕方ないなぁ、れもんは。どんな内容でも最後まで聞くから、ちゃっちゃと話しちゃいなさい」(川)
「うん!あのね…私、平真に恋…しちゃったみたい」
「うん、それはさっきの態度で分かったから経緯を話してくれないかしら?」(川)
「ぶぅー…私の重大発表を軽く聞き流した…」
「だから、一々そんな可愛らしい仕草しなくていいから!」(川)
「・・・時々、明美の言ってることが分からないよ…」
「そこがれもんのいいところではあるけど…とりあえず、話を進めましょうか?」(川)
「うん・・・えっとね…」
それから、私は平真との間に起こった全ての事を細かく全て話した。
興味本位で給水塔に上ってしまって、手を滑らせて落下してしまった事から、平真と二人で保健室で話したことまで全てを・・・
「・・・どう?私のこの想いって…やっぱり、ただのぼせ上ってるだけなのかな…?」
「そうね…そう言う部分もあるのかもしれない。だけど、それを含めてれもんでしょう?何処までも純粋で…でも、その奥にはそれ以上の真っ直ぐな情熱も持っていて…ねえ、覚えている?幼稚園の時の事を」(川)
「幼稚園の時の事?」
「そう、れもんの大好きな俳優が覚せい剤を使用したとかで逮捕された時、れもんったら犯人は別にいるって騒いで、挙句の果てに警察に電話しようとしたりして…」(川)
「そ、その時はまだ子供だったの!大好きな俳優さんがそんなことするなんて信じられなかったの、当時の私には…」
「覚せい剤の意味も知らなかったものね?ただ、大好きな俳優を助けたい一心で警察に電話を…」(川)
「ち、小さい頃の話なんて関係ないでしょ!?明美は何が言いたいの?」
「私はただ、当時と同じ情熱を今のれもんも持ってるだろうなってこと」(川)
「・・・今の私は、そこまで純粋な気持ちなんて持ってないよ…」
「・・・それなら安心ね?」(川)
「え?安心って…?」
「実は、私が平真と付き合っているのよ。お願いしてずっと隠して貰っていたの」(川)
「え?嘘よ!?そんな様子全然なかったもん!!」
「だから、上手くやってたのよ?部活の時間に抜け出したりして大変だったんだから」(川)
「そ、そんなの嘘だよ!だって、平真そんなこと一言も…」
「だから、隠して貰っているのよ?彼、本当に隠したいことはうまく隠せる演技派なの」(川)
「で、でも…」
「・・・その証拠に、彼はれもんの誘いに乗らなかったんでしょう?」(川)
「っ!?そ、それはみかんさんがいるからで…」
「本当にそう思っているの?付き合っていないんでしょう?」(川)
「そうだけど・・・本当に…平真と…?」
「付き合っているわ。いくられもんでも、彼は譲れない。だから…諦めてくれない?」(川)
「それ…は…」
明美と平真が付き合っている?だから諦めなくちゃいけない?そんなこと急に言われたって…それに、彼がみかんさんと付き合っていたとしても諦められないと思うほど私のこの気持ちは強い。
でも、明美は私の幼馴染で…ずっと一緒にいた仲で…その、明美の彼氏を奪う?そんなこと出来ない!出来ないはずなのに…私のこの想いが諦めさせてくれない…これは思ってはいけないことなのに…諦めなくちゃいけないのに…でも…せめて…
「せめて平真に…彼に告白するチャンスをもう一度だけ下さい…お願い…お願いします」
私は泣いちゃダメだと思ったのに、泣きながら言ってしまった。こんなずるい涙なんて流したくないのに、止めどなく溢れてくる…
「・・・それがどれだけ酷いことを言っているか分かっているの?下手したら親友も失うかもしれないんだよ?それでも引かないのね?」(川)
「ごめんなさい…それでも…チャンスが欲しいです…」
「そう、そこまで彼の事を想っているのね…」(川)
「・・・はい」
「そう、それじゃあ仕方ないわね。れもんの恋…私も応援してあげるわ!!」(川)
「え!?応援?平真と付き合っているのに…?」
「ごめんね、れもん。平真君と付き合ってると言うのは嘘よ。れもんの想いが本物かどうか試したくてね…だって、数時間でそこまで人を好きになるなんて…私の中では考えられなかったんだもの…」(川)
「平真と付き合ってるのは…嘘…だったの…?」
「うん。ごめんね、れもん。怒っても仕方ないと…わっっと?れもん?」(川)
「良かった…良かったよぉ…明美と平真が付き合ってなくて…良かったぁ…」
「そっか…本当にごめんね…れもんがこんなに想ってるんだもん…辛い思いさせちゃったね…」(川)
「・・・私こそ、ごめんなさい。明美と平真が付き合ってると分かっていても…告白したいなんて裏切るようなことを言って…」
「確かに、少し悲しかったけど…私が先に騙すようなことをしたし、れもんには怒ってないよ?だから、謝るのは終わりね?」(川)
「うん…ありがとう」
昔から、明美に抱き着くと安心する…。ずっとこのままでいたいような…でも、今は…平真に抱き着いた方が…落ち着けるのかな?やってみたいけど…考えただけで…恥ずかしい!!
「・・・このれもんの温もりを失くことになるかもしれないなんて…海藤平真…やはり許せない…」(川)
「ん?明美?何か言った?」
「うん!それなら、平真君攻略会議をしないといけないねってね?」(川)
「平真攻略会議?・・・そ、そんな大げさな事…」
「あのね?れもん。平真君のそばには強力なライバル…みかんさんがいるんでしょ?このままゆっくりとか考えているの?そんな気持ちじゃ、平真君取られちゃうよ?」(川)
「そ…そんなのやだよぉ…どうすればいいの…」
「はいはい、泣かないの。そのために話し合おうって言ってるのよ?分かった?」(川)
「うん、分かった!でも…具体的にどうすればいいのか全然分からないよ…」
「私に任せなさい!そうね…彼…平真君は、私の見たところヘタレみたいだから自分から女の子にアプローチするタイプじゃなさそうね」(川)
「ち、違うよ!平真は…とても優しい人だから、相手の気持ちを第一に考えて自分から女の子にちょっかいなんて出さないだけだよ!!」
「・・・恋は盲目と言うか、物は言いようと言うか…。それはともかく、彼は自分から動かないんだから…れもんからガンガン攻めるしかないわ」(川)
「ガンガン攻めると言われても…どうすればいいのか分からないよ…」
「簡単じゃない?一日中彼にくっついていればいいのよ」(川)
「くっつくって…腕を組んだりとか…?」
「そうよ?そうやってずっとれもんみたいな美少女に一日中くっつかれでもしたら、どんな朴念仁だろうとヘタレだろうとイチコロよ!」(川)
「イチコロ…は、恥ずかしいけど…頑張ってみるね!それと、平真は朴念仁でもヘタレでもないよ?」
「・・・意外ね?てっきり恥ずかしがってやりたくないと言うと思っていたのに…」(川)
「確かに恥ずかしいけど…やれることをやらないで後悔したくないもん!」
だって、ライバルにあんな綺麗なみかんさんがいるんだもん…これくらいやらないと勝てないよね?
「そう…れもんにそこまで思われている何て平真君が羨ましくなるわね・・・コロしてしまいたいくらいに」(川)
「え?最後になんて言ったの?明美ってたまに聞き取り辛い小声で話すよね?」
「何でもないわ。それより、詳しい作戦を考えないとね?」(川)
「そ、そうだね。・・・一日中、平真とくっついて…えへへ♪」
「れもん?顔がにやけてるわよ?」(川)
「!?ち、違うよ!ちょっと・・・夜ご飯の事を考えていただけ!!」
「・・・れもんは嘘が下手すぎね」(川)
「うう…咄嗟に嘘が思いつかないんだもん…」
「そのままのれもんでいて欲しい」(川)
「え?どういう意味?」
「深い意味はないわ。それよりも、さっきみたいににやけていたら平真君にも引かれるかもしれないわよ?」(川)
「う…だ、大丈夫だよ!これから頑張ってシミュレーションしておくから!」
「くっつくだけなのに、シミュレーションが必要なのね…」(川)
「だって…そばにいられるだけで幸せな気分になっちゃうと思うから…」
「はぁ…ごちそうさま!それじゃあ、明日は無理せずに一日くっつく作戦で行きましょう。・・・それ以上やると、れもんが暴走しそうだものね?」(川)
「ぼ、暴走なんてしないよ!?・・・にやけちゃうかもしれないと言う所は、否定できないけど…」
「れもんの場合は、無理に抑え込まなくていいかも?れもんの自然に出る笑顔ってとっても可愛らしいのだもの」(川)
「か、可愛らしい?・・・明美が言うならそうなのかな?うん、ちょっと自信出た!ありがとう♪」
「・・・今のは写真に収めておくべき笑顔だったのに…何で私はスマホを構えていなかったの!?」(川)
「え?スマホ??」
「・・・何でもないわ。それより、明日の朝の事だけど…」(川)
「うんうん、どこで待つのがいいのかな?」
その後、夜ご飯の時間まで明美と色々話してしまった。私は、食べていきなさいと言ってくる川倉母娘のお誘いを断って家に帰宅した。・・・友達の所で食べると言っておかなかったから仕方ないよね?
帰宅してまずは、いつも通りリビングのお母さんに声を掛ける。
「ただいま、お母さん」
「おかえり、れもん。遅かったわね?」(れもんママ)
「ごめんなさい、ちょっと明美の家に行っていたの」
「これ以上遅くなるようなら電話頂戴ね?」(れもんママ)
「はい!今度から気を付けます」
「れもんは素直で良い子よね♪夜ご飯出来ているわよ」(れもんママ)
「はーい。着替えてくるね!」
「慌てて階段で転ばないようにね?」(れもんママ)
「わ、分かってるよ!大体、最近躓いてもいないじゃない!」
「はいはい、そうだったわね」(れもんママ)
「もう!子ども扱いやめてよね!」
「ふふっ…ごめんなさいね。大人のれもんさんはこれくらいで怒ったりしないわよね?」(れもんママ)
「っ…もう!着替えくる!」
「ゆっくりね」(れもんママ)
私は廊下に出てドアを普通に閉めた。大人の私は物にあたったりしないのだ♪
何となく上機嫌になった私は、そのまま洗面所に行って手を洗いながら自分の顔を確認する。
「うん、何度か泣いちゃったけど…目も腫れていないし、化粧もしていないから崩れることもないし…大丈夫だね♪」
まあ、これから何があるわけでもないけど、お父さんと鉢合わせした時、目が腫れていたりしたら大事になる可能性もあるからね。・・・お父さんは過保護すぎるのが玉に瑕なんだよね…
その後、うがいも済ませた私は、二階の自分の部屋へ向かった。
ドアを開け、部屋に入ったらいつもならすぐに着替えるのだけど…今日はベッドにダイブをした。
「・・・今までの人生で一番濃密な時間を過ごした気がする」
平真と…キスして、平真を好きになって…平真に告白して…平真にむ、胸を…ううっ…平真の事ばかり考えちゃうよ!?
私は枕に顔を付けてバタバタ足を動かした。まさか、自分でこんなことをする時が来るとは思ってもみなかった。
「・・・思い返すと、私…大胆な事をしすぎじゃない?」
枕を抱えながら思い返していると恥ずかしくなって来た…。ちょっとやり過ぎだった気がする…大胆な娘で済めばいいけど、よく言うはしたない娘だと思われていたら…
「どうしよう!?」
で、でも明美も何も言ってなかったし大丈夫…あ、胸を触らせたことまでは話していなかった…だ、大丈夫だよね?
過ぎたことは考えていても始まらない…明日の事を考えよう!・・・まずは着替えてご飯を食べないと…
私は、忘れかけていた夜ご飯の事を思い出して、急いで着替えた。そして、慌てながらも転ばないように気を付けつつ階段を下りて、リビングのドアを開けた。
「ごめんなさい、お母さん!ちょっと考え事して遅くなっちゃった!・・・あれ?お兄ちゃん来てたの?」
「おお、我が天使れもん!どうしても、れもんの顔が見たくなってしまって帰って来たんだよ!」(れもん兄)
「ええ!?大丈夫なの?警察学校って厳しいんでしょ?」
「大丈夫だ!お兄ちゃんは優秀だからな!それに、走って帰れば問題ないさ!」(れもん兄)
「走って帰るって…睡眠時間大丈夫なの?」
「れもんの顔を見る方が睡眠より大事なんだ!今の俺なら、拳銃を持った凶悪犯にだって勝てるくらいだぞ!!」(れもん兄)
「…お兄ちゃん、無理はしちゃだめだからね?」
「れもんに心配してもらえた!?これで、10年は戦えるな!!」(れもん兄)
「お兄ちゃんは一々大げさなんだよ…」
「れもんは知らないだけだ、兄にとって一番活力となるのは妹からの声援だと言う事を!!」(れもん兄)
「やっぱり大げさなだけだと思う…」
「やはり、この溢れんばかりの妹愛を伝えるすべはないのか…」(れもん兄)
がっかりしているところ悪いけど、やっぱり分からない…。絶対に大げさなだけでしょ?
「それで、学校はどうだれもん?変な男に絡まれたり、告白されたり、ストーカーされたりしていないか?」(れもん兄)
「…いつも言っているけど、私そんなにモテないし、目立ってないよ?告白だって一度もされたことないし…」
「だからそれは、明美ちゃんと俺が止めていたからであってな…やはり、一度くらいは告白させた方が自覚を?しかし、明美ちゃんは絶対にさせないだろうな…れもんがこんな純粋に育ったのはある意味あの娘がそばに居てくれたからだしな…」(れもん兄)
「何をぶつぶつ言っているの、お兄ちゃん?」
「何でもないぞ!とにかく、明美ちゃんがそういう害虫駆除を行っているかられもんが平穏に学生生活を満喫出来ているんだ。良くお礼をいっておくんだぞ?」(れもん兄)
「はいはい、そうだったね。明美にはちゃんと言っておくよ~」
「れもん、絶対に適当に流しているだろう?昔から全然信じてないもんな…。まあ、それだけ彼女が上手く排除しているってことなんだが…たまに、俺でも明美ちゃんは怖いと思う事があるぞ…」(れもん兄)
「朋美はとっても優しいじゃない?何で怖いなんて思うことあるの?・・・みんな、空手やってるくらいで怖がったりするんだから…明美が可哀そう」
「知らぬは亭主ばかりなりか…。まあ、れもんが純粋のままでいられるなら全て良しとしよう」(れもん兄)
相変わらず、お兄ちゃんは妹がモテると信じているらしい。まあ、私を心配してくれているのは分かるんだけど…何もかも大げさすぎるんだよね。
「その様子だと、とくに学校で問題はないって事だよな?いやぁ…何か虫の知らせと言うか…れもんに何かあったような気がしてな?どうやら取り越し苦労だったようだな?」(れもん兄)
「そ、そうだよ?学校で特に何もなかったよ…」
「む?れもん…今何か…」(れもん兄)
「ただいま!マイエンジェルれもん&マイハニー!!」(れもんパパ)
「おかえりなさい、お父さん」
「おかえりなさい、あなた」(れもんママ)
「おかえり、父さん」(れもん兄)
「なんだ、いたのか?一彦」(れもんパパ)
「同じ子だと言うのにこの扱いの差!さすがは我が父、見習わねばなるまい!!」(れもん兄)
「・・・見習う所じゃないと思うんだけど…」
「しかし、れもんは会うたびに可愛くなっていくな?これ以上可愛くなられると父さんの目が潰れてしまうかもしれん!と、言うわけでだ、慣れるためにスマホに収めておいて良いだろうか?」(れもん父)
「お父さん?私の写真は撮っても良いけど、朝の一枚だけって決めたよね?制限を付けないと、お父さんったら容量一杯になるまで撮り続けるんだもん…」
「子供の成長を記録として残したい…そう思うのは、親として当然の気持ちじゃないか?」(れもんパパ)
「父さん、俺なら好きなだけ撮って良いぜ?」(れもん兄)
「何でお前何か撮らないといけないんだ?」
「さっき言ったセリフを思い出せや、クソ親父」(れもん兄)
「親に向かってクソとはなんだ!そんなんだから、れもん以外の女性から相手にされないんだぞ?」(れもんパパ)
「れもん以外の女なんて、その辺りにある標札みたいなものなんだよ!わざと離れているだけだ!それより、俺には時間がないんだから、れもんとの会話は俺が優先されるべきだと思うのだが!」(れもん兄)
「勝手に帰って来ておいて、れもんを独占しようとは10年早いわ!!」(れもんパパ)
「このっ!?表へ出ろ!引導を渡してやる!」(れもん兄)
「良いだろう!親の偉大さを知るが良い!」(れもんパパ)
「はい、れもん。温め直したから食べなさい」(れもんママ)
「ありがとう、お母さん!いただきます♪」
「どうぞ、召し上がれ」(れもんママ)
「さっきから聞いていれば!れもんれもんと!少しは息子を気遣って、譲るくらいの愛情を見せたらどうなんだ!!」(れもん兄)
「ははっ!何を言うかと思えば…娘と息子では与える愛情が違うのだよ!娘には甘すぎるくらいの愛情を与え、息子には、世の中の厳しさを教えるとために哀情を与えるのだ!!」(れもんパパ)
「本当に、れもんへの愛情以外は見習う所のない親だな!」(れもん兄)
「なにおう!?」(れもんパパ)
「それで、学校で何かあったの?」(れもんママ)
「んむっ!?」
詰まらせかけた食事を飲み物で流し込んでから私は答えた。
「…何もないよ?」
「お母さんを騙せるとは思わない事ね?・・・もしかして、やっと好きな人でも出来たの?」(れもんママ)
「なななっ、何で!?」
「だって、れもんたらさっきからたまに頬が緩んでいるわよ?」(れもんママ)
「えっ!?」
私は思わず頬を触った。もちろん、それで確認何て出来ないわけだけど…
「相変わらず、れもんは嘘も隠し事も下手なのね」(れもんママ)
「・・・」
私は思わず、お父さんたちの方を見た。・・・どうやら、二人の言い争いはヒートアップしているようでこちらの話は耳に入っていないようだった。私は思わず、ほっと息をはいた。
「そうね、あの二人には知られないようにしないとね?それで、どんな男の子なの?」(れもんママ)
「どんなって言われても…今日好きになったばかりだから、まだ詳しく話せるほど知っているわけじゃないし…」
「そうなの?好きになったばかりってことは…その男の子は実は女を泣かせる悪い男かもしれないわよ?」(れもんママ)
「平真はそんな人じゃないよ!?」
「そう、平真君って言うのね?」(れもんママ)
「あ・・・」
つい名前を言ってしまった。私は再びバカな言い合いをしている二人を見やったけど、こちらには全然気を回してないみたいだった。
「大丈夫よ、あの二人はもうしばらくあの会話を続けると思うから」(れもんママ)
「あれって会話なの?」
「きっとね?二人とも、ああやって親子の絆を深めているのよ。放っておきましょう」(れもんママ)
「・・・私には分からない世界みたい」
「それでいいのよ。男の世界ってやつだから、多分だけどね?」(れもんママ)
「それなら知らなくていいかな?」
私の話が頻繁に出てきているみたいだからちょっと気になるけど…下手に反応してしまうと、こちらの話を聞かれて藪蛇になってしまうだろうし…
「それで、どういう経緯で好きになったの?」(れもんママ)
「やっぱり、話さないとダメなんだ…」
「気になるじゃない?母親としては、娘がどんな経緯で初恋をしたのか…ね?」(れもんママ)
「そんな言い方されると…信じられない話かもしれないよ?」
「娘の初恋話を疑うわけないでしょう?」(れもんママ)
「…ちょっと長いかもしれないけど…」
結局、お母さんにも平真との間に何があったか全部話すことになった。お母さんは、私が話終わるまでずっと無言で聞いてくれた。
「と言うわけなんだけど…やっぱり、この気持ちは可笑しいのかな?」
「人を好きになる…その事については千差万別、正解などないし、それと同時に不正解もないわ。だから、れもんが今どんな気持ちなのかが大事だと思うわ。貴女は今、そこに至った経緯も含めて彼の事を好きになれてよかったと思っているのよね?」(れもんママ)
「うん・・・それだけは、間違いなく言えます。彼を好きになれて良かったって」
「それなら、可笑しい事なんて何もないわ。れもんがそう感じているのなら、それは素敵な恋なのよ…。幸いにも、さっきれもんから聞いた話だと平真君もちょっと押しが弱そうだけど…れもんといい加減な気持ちで付き合うような男の子じゃなさそうだし…うん、母親として応援しない理由はないわね」(れもんママ)
「本当!?応援してくれるの…?」
「当たり前でしょう?娘の初恋なんだから。このままガンガン行っちゃいなさい!その平真君はきっと、へ…相手を思いやれる優しい男の子みたいだから、れもんから攻めないと他の誰かにとられちゃうかもしれないわよ?」(れもんママ)
「そんなのダメ!・・・明美にも言われたけど、攻めた方が良いのかな?」
「そうね、聞いた感じだとそう思うわ。ただ、告白と同時に押し倒すのはやり過ぎな気がするけどね?」(れもんママ)
「そ、それは言わないで!?私もやり過ぎたと思っているんだから…思い出しただけでも、顔から火が出そうなくらい恥ずかしいもん…」
「その気持ちがあるなら大丈夫ね。ドンドン攻めちゃいなさい。私もそうやってお父さんと結ばれたんだから」(れもんママ)
「え?お母さんから攻めて結ばれたの?」
「そうよ?当時のあの人は…今じゃ信じられないかもしれないけど、結構モテていたのよ?当然、本気で狙っているライバルもいたわ。でも、どうしてもあの人と一緒になりたかったから…私は攻めることにしたの!・・・まあ、思った以上に成功してしまって拍子抜けしたけどね?」(れもんママ)
「・・・何か怖いから、どういう事をしたのか聞かないでおくね…」
「そう?参考になるかもしれないわよ?むしろ、聞いた話だと平真君なら一日で落とせそうな気がするわね!」(れもんママ)
「…自分自身の考え方で攻めないとダメだと思うの!」
「ふふっ♪何だかんだで成長しているみたいで嬉しいわ♪あ、これだけは言わせて?」(れもんママ)
「ん?なに?」
「学生なんだから、ひに…」(れもんママ)
「わー!わー!わー!!何を言おうとしてるの!お母さんてば!!」
「大事な事だと思うのだけど…それより、そんなに大声を出したらお父さんたちに聞かれちゃうわよ?」(れもんママ)
「あ・・・」
そう言われて、私はお父さんたちの方へ振り返った。
「そ、それでれもんは何て言ったんだ…?」(れもん兄)
「聞いて驚け?なんと…虫さんが可哀そうだから外に逃がしてあげて!と言ったのさ!」(れもんパパ)
「なんだって!?自分が驚いて涙目になっている虫に対して、そんな天使のような発言を…」(れもん兄)
「何を言っているんだ?れもんは天使だろうが!」(れもんパパ)
「そうだった!?余りの天使ぶりに天使であることを忘れてしまっていた!?」(れもん兄)
「はっはっは!よく意味が解らんが、れもんが天使だと言うのは伝わって来たぞ!」(れもんパパ)
「はっはっは!そうだろう!!他にもあるのか?れもんの天使エピソードは!?」(れもん兄)
「まだまだあるに決まっているだろう?れもんは天使なんだぞ?星の数ほどのエピソードがある!!」(れもんパパ)
「そんなに!?聞かせろ!いや、お聞かせて下さい、お父様!!」(れもん兄)
「そこまで言われては仕方あるまい。良いだろう、聞かせてやろう!」(れもんパパ)
「有難き幸せでございます!!」(れもん兄)
「あれはそう…れもんが2歳になったばかりの頃…」(れもんパパ)
「・・・いつの間にか仲良くなってるし…何で私の話をしているんだろう?」
「ふふっ、だから言ったでしょう?あの二人はとても仲良しだから心配いらないのよ?」(れもんママ)
「流石お母さん、何でもお見通しだね!私もそんな風になりたいな…」
「れもんは私の子ですもの、すぐになれるわよ」(れもんママ)
「そうかなぁ?」
「大体、何で私みたいになりたいの?」(れもんママ)
「それは、そうなれば平真ともっと…な、何でもない!!」
「あらあら、これはお父さんたちに知られたら大変な事になりそうね」(れもんママ)
「絶対に言っちゃだめだからね!」
「言わないわよ。でも、いつか言わなければいけないのは分かっているわよね?」(れもんママ)
「それは…分かってます」
「大丈夫よ?もし、れもんと平真君がちゃんと付き合う事になったらお母さんがあの二人を説き伏せてあげるからね!」(れもんママ)
「さすが、お母さん!頼りにしています♪」
「その代わりと言っては何だけど、今度平真君を東御家に連れてきてね?れもんがそこまで入れ込む平真君と一度話をしてみたいわ」(れもんママ)
「私も招待はしてみたいけど…来てくれるか分からないよ?」
「それなら、『うちの母が会いたがっていた』と言う理由で呼んでも良いわよ?」(れもんママ)
「それって、余計に緊張しちゃうんじゃないの?」
「どう取るかは平真君次第ね。とりあえず、来てくれたらうれしいと言うニュアンスで誘ってみて?」(れもんママ)
「うん、そうしてみるよ」
来てくれたら嬉しいけど、さすがに今日初めて喋ったみたいなクラスメイトの家にすぐに来てくれるとは思えないよね…
「ご馳走様でした!お母さん、今日も美味しかったよ♪」
「お粗末様でした。ふふっ、その言葉が何より料理のやり甲斐に繋がるのよね。まだ食べてない人たちがいるから、食器はここに置いたままでいいからね?」(れもんママ)
「はーい。お風呂は今日も私が最後でいいからね!一番長くなるし…ついでに、いつもみたいに軽く洗っておくから」
「いつも助かるわ、ありがとう」(れもんママ)
「気にしないで!私の方がずっとずっとお世話になっているんだからね!こちらこそ、いつもありがとうございます」
「本当にれもんが素直な良い子で助かってるわ♪」(れもんママ)
「もう…みんなして私の事をほめ過ぎだよ…。部屋に行ってるから、お風呂空いたら呼んでね?」
「分かったわ。平真君の事ちゃんと誘ってみるのよ?」(れもんママ)
「わ、わかってるって~」
そう言いながら、私は自分の部屋へ向かった。
部屋へ着くと同時に、またベッドへ身を投げ出して大きくため息をついた。
「こんな私に甘い家族を見たら平真はどう思うかな?変な家族だと思われるよね…で、でも、平真なら別に気にしないでくれるよね?って、これじゃあすでに平真を家に呼んだ後みたいじゃない!!」
がばっと起き上がりながら、今更の事を自分自身でつっこむ。我ながらテンションが下がらないで困ってしまう。普通でいようと思えば思うほど、彼の事が頭から離れなくなってしまっていく。恋は精神疾患だっていう人もいるみたいだけど、あながち間違っていないと思う。
明日はずっと平真にくっついて一日過ごす…。すでに、自分でもそう決めた事だと言うのに…考えれば考えるほど、恥ずかしいやら、嬉しいやら、自分でもよく分からない感情がぐるぐると私の中を巡り続けている。・・・多分だけど、これって幸せな事なんだろうな…
「こんなに私に思ってもらえるなんて、平真の幸せ者めっ♪な~んてね?本当は、こんな幸せになれる気持ちを知ることが出来た私の方が幸せ者だよね♪う~…平真に会いたいなぁ・・・」
そんな溢れる思いを言葉にしたり体現して恥ずかしがったりしているうちにかなり時間が経っていたらしく…
「れもん、お風呂空いたわよ~?」(れもんママ)
「は~い!すぐに行くよ!」
そんなお母さんの言葉と共に今日の平真大好き発表会?は終わりを告げたのだった。
「お風呂では一応念入りに身体を洗わないと…って、お母さんのせいで変に意識しちゃいそうじゃない!!」
結局、その後も眠りにつくまでずっと平真の事ばかり考えてしまっていた私でした。
れもんが去った後の東御親子の会話
「どうだ?れもんは小さい頃から天使過ぎて困ってしまうだろう?」(れもんパパ)
「どのエピソードも永久保存版だな…なぜ、映像特典がないんだ!?」(れもん兄)
「俺の記憶にはしっかり記憶されているが、今の技術では見せる術はないな」(れもんパパ)
「しまった!?そう言う技術者を目指せばよかったか!?れもんの平穏を守るために警官を目指したのは失敗だったかもしれないな…」(れもん兄)
「そんなことはないだろう?・・・父亡き後は、お前がれもんをしっかり守るんだぞ?」(れもんパパ)
「そんな呼吸をするが如く当たり前な事、言われるまでもない!」(れもん兄)
「そうだな、愚問だったな!」(れもんパパ)
「そんなことより、もう少しれもんの天使エピソードを…」(れもん兄)
「二人とも、話は一段落したでしょう?そろそろご飯を食べちゃってくれない?いつまでも片付かないじゃないの」(れもんママ)
「おっと、すっかり話し込んでしまったな。そろそろ母さんの美味しいご飯を一緒に食べようじゃないか?れもん。・・・おや?れもんは?」(れもんパパ)
「とっくの昔に自分の部屋に戻ったわよ?」(れもんママ)
「「なんだってー!?」」(れもんパパ&兄)
「ほら、それよりもご飯を早く食べちゃって欲しいのだけど?」(れもんママ)
「そうだな、母さんの愛情たっぷりのご飯をこれ以上放置するわけにはいかないな!いただきます!!」(れもんパパ)
「・・・その通りだね、いただきます!!」(れもん兄)
「ふふっ、二人とも残さず食べてね?」(れもんママ)
「「もちろんだよ、母さん!それにしても、今日も母さんの味噌汁は最高だな(ね)!!」」(れもんパパ&兄)
「本当に二人は似て来たわね」(れもんママ)
「む?一彦よ、父さんが大好きだからと言って、そこまで真似しなくても良いのだぞ?」(れもんパパ)
「真似しているわけじゃないけど、れもんを大好きと言う一点で血より深く繋がっているのだから似てしまっても仕方ないんじゃないか?」(れもん兄)
「なるほど、それもそうだな!」(れもんパパ)
「「わっはっはっは!」」(れもんパパ&兄)
「あらあら、本当に仲良しなんだから。でも、れもんにとっては前途多難になるかもしれないわね?」(れもんママ)
そんな感じで東御家の日々は、にぎやかに過ぎていくのであったとさ。
今後もヒロイン視点をやりたいと思っていますが、思った以上に作者には難しいようで…暫く控えないと本編?が進まなくなりそうです(汗
よろしければ、今後この話のこのヒロインの裏話が見たい!などあったら感想でくれたら喜んで書かせて頂きます。ただ、すぐに書けるかは分かりませんが…
次回は平真中心に戻ります。明日更新予定ですので、よろしくお願いします。