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二十二個めっ♪ アルバイトって大変ですな…

 午後はバイト先の喫茶店で馬車馬のように働いていた。土日はそこそこ忙しいと聞いていたが…それにしても客が多い気がした。その理由は、一段落して軽い休憩を取って良いと言われた時に知ることが出来た。


「どうやら、近くのゲームセンターでイベントを何かやっているらしく、こちらもそのおこぼれで忙しくなっているようなんだ」(神)

「なるほど、そう言う事ですか」

「ふむ?どうしたんだ?そんな丁寧な言葉使いを…もしかして、給料の前借をしたいのかな?」(神)

「あんたが変な事ばかり言うからこんな口調になってるだけだからな!?俺は、基本的に年上には敬語を使う良識くらいは持っておるわ!!」

「とても信じられない」(神)

「とても心外なんですが!?」

「まあまあ、平真さん。折角の休憩時間なんですから、ゆっくりしましょうよ♪」(い)

「それはそうなんだが…いちごさんや?何故、君は俺の膝の上に座っているのかね?」

「私は、今日のアルバイト中のお目付け役に任命されたのです。ですから、ここにいるのは自然の流れです」(い)

「そうだったとしても…何故、俺の膝の上にってことを問いたいんだが?」

「昨日、りんごちゃんがとても羨ましかったからですよ。りんごちゃんは良くて、私はダメとか可笑しいですよね?もしそうなら、私は然るべきところに訴えます!!」(い)

「然るべきところってどこにだよ…」

「平真さんのお母様のところです」(い)

「お願いですからやめて下さい!!」


 考えるまでもなく、弄り倒された挙句に理不尽な要求を飲まされるのが目に浮かぶわ…


「それでは、休憩が終わるまで私はここにいて良いと言う事ですね♪」(い)

「仕方ない…と言いたいところだが…。何でさっきからすりすりと俺の胸に頬をこすり付けているんだか聞いていいかね?」

「私の感触と匂いを平真さんに沁み込ませるためです」(い)

「沁み込みませんよ!?君は猫なのか!?」

「あ…そう言うプレイをご所望ですか?」(い)

「いちいちそっちに持っていくの止めましょうね!?」

「これでも我慢してるんですよ?本当は、平真さんの方に振り返って抱き着きたいのですからね?」(い)

「しかしだな?俺が慣れてしまったら意味なくはないか?」

「意味はありますよ?私がくっついているのが自然と取られるようになったら、そばにずっと居られるって事じゃないですか♪」(い)

「・・・本当に、いちごは俺の事が好きなんだな…」

「自惚れですか?まあ、本当に自分でも抑えることが出来ないくらいに好きですけど…それがどうかしましたか?」(い)

「スラっというな…。何というかな…一目惚れって言ったらこれも自惚れって言われそうだが、そうなんだろ?それで、そこまで尽くそうと出来るものなのかとな…」

「好きになった理由や経緯なんておまけ以下なんですよ?結局大事なのは、自分の素直な気持ちを相手に伝えられるかどうかだと思います。好きって感情だけで、私は平真さんに色々してあげたいと思っちゃうんですよ♪例え、迷惑かもしれないと思っても…」(い)

「いちご…って、おわっ!?何でこっち向いてくっつこうとしているんだ!?我慢してたんだろうが!?」

「平真さんが悪いですよ?我慢していたのに…火をつけるようなことを言うから…」(い)

「待て待て!変な事は言ってないだろ!?」

「・・・安心してください。私からしようなんてしません。あくまで私は平真さんの全てを受け入れるだけですから…」(い)

「そう言いつつ思いっきり俺に抱き着いてるんだが…」

「これくらいは子供のよくあるスキンシップですよね?」(い)

「ここで子供を使って来るのか…」

「でも…聞こえませんか?子供のスキンシップなら…こんなに心臓の鼓動が激しくなったりしませんよね?」(い)

「・・・確かに聞こえるが…いや、そうじゃなくてだな!?」

「平真さんの鼓動も聞こえます…少し早いからドキドキしてくれているんですね?」(い)

「そりゃ、女の子に…しかも、俺の事を好きだって言ってくれている娘に抱き着かれていれば…緊張もするだろうよ…」

「平真さんはやはり、私の運命の人です。何をしても何だかんだで受け入れてくれる…だから…」(い)

「え?ここでっすか!?」

「据え膳は食べて下さいね?」(い)

「ま、マジか…いや…しかし…!?」


 目の間でキス待ちされちゃってますよ、俺!?お、落ち着け…相手は小学生…って、この言い訳はダメなんだったっけ?で、では…まだ恋愛もしてないので却下!!しかし、いちごは可愛いよな…よく見れば、やはり秋華さんに似ている…将来あんな素敵な美人さんに・・・って、吸い込まれそうになってんじゃねぇよ、俺!!


 大体、店長だっているんだから!って・・・


「何してるんですか?店長?」

「私はいないぞ?平真君。気にせずに唇を奪って情事に励んでくれたまえ!!」(神)

「励めるか!?」

「店長もああ言ってくれてますし…狸の置物だと思って気にしないで…どうぞ?」(い)

「目を瞑って両手を広げてどうぞと言われてもね?この状況で出来るわけないでしょうが!?あの店長のへたくそな隠れ方が逆に気になるわ!!」

「私は狸の置物だ!店長などではないぞ!」(神)

「狸の置物は喋らんわ!?無理やりにもほどがあるだろう!?」

「残念ですが、ここまでのようですね。でも、平真さんが葛藤したのは分かってます。これからもガンガン攻めますからね?早く押し倒してくださいね♪」(い)

「君を押し倒したら犯罪だからね?」

「二人の幸せな未来のためなら些末な事です」(い)

「法律ですよ!?」

「愛の前では全ては無力なんです!」(い)

「何を言っても勝てる気がしないとか…」

「納得したところで押し倒してくださいね?」(い)

「納得してませんよ!?話を戻さないでくれませんかねぇ!?」

「平真さんって強情ですよね」(い)

「いちごに言われてもな…」

「私だって恥ずかしいんですよ?でも、負けて後悔するくらいから出来ることは全てしたいだけです。在り来たりな言葉だけど、実践するのはとても勇気が要る行為なんですよ?」(い)

「そうなんだろうけど…。いちご、俺としてはやはりゆっくりとだな…」

「残念だが、そろそろ休憩時間は終わりだ。・・・丸郷君を抑えるのも限界のようだからな…」(神)

「意外と丸郷さんって店長の手綱を握ってたりしそうだな…」

「色々やらかした時のフォローをしてもらっているからな…。いざと言う時は見捨てられないくらいは友好を保たないといけないんだ…」(神)

「まだ色々やらかすつもりなのか?あんたは…」

「ふふっ、楽しみに待っていてくれたまえ!」(神)

「絶対にやめてください!?」

「じゃあ、残りの時間も頑張ってくれたまえ」(神)

「ほんと…こんなのが最初に理知的な美人に見えた自分の見る目のなさよ…」

「やはり、私を本命に据えてみるか?」(神)

「ご遠慮させていただきます!じゃあ、戻りますんで!」

「頑張って下さいね♪」(い)

「おう!もうひと頑張りいくぜ!!」


 その後、また一心不乱に給仕に徹した俺は結構疲れていたのだが、自分の家までいちごにくっつかれたまま帰ることになった。今日の報告係とやらは、彼女らしい。休日まで報告する意味があるのか?と思ったけど…何か思惑があるようなので深くはつっこまなかった。


 しかし、いちごの密着度は可笑しいと思う。ここまで密着されると、仲の良い兄弟で通るかも怪しい状態だ。たまに、こちらを振り返る人が出るくらい目立っている。


「いちごさんや…普通に手を繋ぐだけと言うのはどうだろうか?」

「それが嫌と言うわけではないんですよ?手を繋ぐだけならきっと、じわっと身体の芯から幸せが滲み出てくるような感覚を味わう事は出来ると思うんです。でも…それをするなら平真さんが私を選んでくれた後で良いかなと思うんですが…どうでしょうか?」(い)

「今、恋愛と言うものの理解に努めようとしているところなので…今しばらく時間を頂きたい」

「そうですよね。なので、平真さんが誰かを選ぶまでは…私は私が納得するだけの努力をしないといけないんですよ?なんだかんだで、密着して互いの体温を感じる事って言うのは良いアピールになると思うですよ♪平真さんも、私の体温を感じませんか?」(い)

「確かに感じてはいるんだが…目立ちすぎている気がしてな…」

「そんなことを言いつつ、無理に引きはがそうとしない平真さんが好きです♪」(い)

「いや…かっこいいことを言えれば良いんだが…ただ単に優柔不断なだけだと思うぞ…。いや、ただ単に助平なだけかもしれん…」

「自分で言っちゃんですね、それ?でも、そうだとしたら女性として意識されていると言う事になるので、これからも密着しますから堪能してくださいね?」(い)

「そ、そうくるのか…。小学生相手に何をしてるんだかな…」

「小学生は禁止ですよ?私は、平真さんに惚れたら一人の女として扱って欲しいです!訴えますよ?」(い)

「何処にか聞きませんが止めて下さい、マジで…。俺のいつか越えなければならない壁は、余りにも高すぎる気がするんだよな…」


「普通、そう言うのって父親の事じゃないんですか?」(い)

「いや…俺の親父は…ぶっちゃけ普通なんだよ。単身赴任で今は家にいないが、会えば分かると思うわ…。正直、あの母上に勝てる姿が想像出来ん。と言うより、俺と同じで弄り倒されて敗北してる姿も何度も見てるしな…」

「惚れた弱みって事じゃないんですか?」(い)

「それもあるんだろうけどな…まあ、普通が一番だよな、うん」

「私は、平真さんのためならお母様にだって反抗してみせます!どうですか?ここまで尽くすと宣言しているいちごちゃんを選んでしまうと言うのは?」(い)

「売り込みが激しすぎでしょうが…。まあ、いちごの場合は本当に母上に反抗しそうなんだけどな…。ただ、いちごと一緒になった場合は尻に敷かれるイメージしか湧かんのだよ…」

「円満になるなら、尻に敷かれるのも悪くないかもしれませんよ?」(い)

「・・・やはり、いちごが小学生って言うのは可笑しいと思うんだよなぁ…」

「押し倒して確かめてみますか?」(い)

「確かめられないだろ!?」

「分かるかもしれませんよ?ただ…流石に夜とは言え、こんな公道で初めてを迎えるのはちょっと抵抗はありますけど…」(い)

「そこは抵抗じゃなくて拒絶を示して頂きたい!?」

「私がどうするか興味があるなら試してみませんか?」(い)

「しませんよ!?いい加減にやめてくれ!これ以上危険な事を言われると、こちとらただでさえ通報されるかもしれないとびくびくしていると言うのに、さらに危険度が増すではありませんか!?」

「通報されたらこう言ってあげますよ?出歯亀はバレない様にやってくださいね?って♪」(い)

「警察の方を煽るのは絶対にやめてくださいね!?いちごにじゃなくて、俺にとばっちりが来るのが目に見えてるので!?」

「大丈夫ですよ?私が如何に平真さんを愛しているのか、切々と語って聞かせて差し上げますから♪」(い)

「うん、俺が色々な事をして洗脳したと疑われる未来が視えるな・・・」

「平行線ですね?平真さんはもっと自分に自信を持って欲しいものです」(い)

「いや、そもそも大人しく俺の家に向かうと言う事で納得してもらいたい…」

「仕方ありません。今日は、菫お母様にアピールするだけに留めておきましょう」(い)

「俺が弄られるのでそれもご遠慮いただきたいのだが…」

「早く私を選んでくださいね♪」(い)

「脅し!?脅しなんですか?それは!?」

「いいえ、愛です♪」(い)

「愛なんて詭弁だぁ!!」


 その後、家に着いた後に繰り広げられた母上VSいちごの戦いの余波で、俺が精神的なダメージを負ってグロッキーになったのは言うまでもない。ついでに、いちごを送った後にも遅いからと断ったにも関わらずに家に招き入れられ、そこでも断るのに多大な労力を使いました…


 このままいくと母上の見立て通りに、いつかいちごに屈することになるんじゃないかと思えて来たわ…

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


平真がお金を貯めるのはいつになるやら…進行が遅くてすみません(汗

冷房の浴び過ぎてぐったりしてますが更新頑張ります!


次話もよろしくお願いします。

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