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ヒロイン話 みかん二個めっ♪

 今、私の目の前にはざくろがいる。正直に言うと逃げ出したい。ざくろも罪悪感を感じているようだけど、私の方が質が悪い…いや、私に比べればざくろは罪悪感を感じる必要すらない。


 何故なら、私はざくろの気持ちに気が付いていたから。だから、ざくろが感じている罪悪感など本来は必要ないものだ。もし、平真の告白の日の誘導みたいな話についての罪悪感だとしても、私が気が付いて返事の手紙を書いている時点でそれもないに等しい。


 つまり、私が一方的に彼女に対して罪を犯していると言う事。そして、ざくろは私のこの罪に気が付いていないと思う。だって、彼女は真面目な子だから自分の罪悪感に苛まされ続けていて私の事をよく見れない事が多かっただろうから…


 それでも、平真を想い続けていると言う事は、相当な覚悟と気持ちを持っているって事なんだろうと思う。だから…誤魔化し何て出来ない。彼女の全ての話を聞いた上で、私が自分の全てを話そうと思う。そうすれば、少なくとも彼女の罪悪感は消える…私のは、ずっと背負わないといけない事だから…仕方ないよね。


「時間もそんなにないことですし…私から話しても良いでしょうか?」(ざ)

「うん…話終わったら私の話も聞いてね?」

「もちろん分かっております。・・・まず最初に言っておきたいのは、私が小学生の頃からずっと平真君をお慕い申し上げていた事です。きっかけは、彼が私を肯定してくれた…勇者の話をしていた時の事です。彼にとっては、ただ普通の事を話していたのでしょう。もしかすると、自覚もなかったのかもしれません…。それでも、私は彼に肯定されて…あまつさえ、私を誘うようなことを言ってくれたのが嬉しかった」(ざ)


 真っ直ぐ私を見てそういったざくろ。…すごいな、こんなに真っ直ぐ見て私は彼女に罪を告白出来るかな?・・・無理だろうな…でも、全部伝えるのだけはやらないと…


「でも…いいえ、違いますね。だからこそ、私はずっとみかんに嫉妬していました。抑えるのがやっとの黒い感情を内に持っていたのです。何故、彼の隣に私は要られないのだろう?何故、私は彼に気持ちを言う事さえ出来ないのだろう?と。・・・これはただただ私に勇気がないだけだと後からは分かったのですが…それでも、嫉妬の気持ちはずっとあったのだと思います」(ざ)


 私は黙って聞き続けることにした。相槌位はうってもいいと思うけど、今口を開くと余計な事を言ってしまう気がするから…


「そして、あの日…平真君がみかんに告白…いえ、プロポーズした日に相談を持ち掛けられて私は…彼とみかんが付き合うのを阻止しようと…本当は直ぐにでも誤解を解いた方が良いと分かっていたにも関わらずに…わざとそのまま時間を置いた方が良いと助言しました」(ざ)


 やっぱり、そう言う事だよね…。だからこそ、彼女がどれだけ苦しんだか分かる。ううん、分かるわけがないよね…どれだけ苦しかったかなんて本人にしか分かるはずない…。すぐにでも私の方が悪いと言いたいけど…まだ話が終わっていないから…


「・・・謝っても許されることじゃないと思います。自分の気持ちを優先して親友の恋の邪魔をしようなどと言う飛んでもない行為なのですから…。でも、本当に私の最悪な所は…罪悪感を抱くきっかけになったのがみかんではなく、平真君だったという救いようもない酷い理由だからです…」(ざ)


 私は思わず聞き返しそうになってしまった。平真が理由?どういうことなんだろう?


「悪意のある助言の後…私は、色々な理由で逃げ…自分は悪くないと思い込もうとしていました。でも…見てしまったんです。私が、みかんに誤解を解くように言わなかったせいで…平真君が自分を卑下するような事を言っているのを…いつも自信たっぷりで突っ走っていた彼が、自信なそうな…良くも悪くも普通の人のようになっているのを・・・」(ざ)


 私は衝撃を受けた。そして悟った、私は自分で思っている以上に自分勝手な事をしていたと言う事実を…。私は平真が変わった事を、大人しくなったから他の女が近付く理由が減ったと自分都合の認識しかしていなかった。


 でも、実際は?平真はどんな気持ちだった?私からの手紙を読んでいない平真は、私から拒絶されたと思っていた。それは分かっていたのに、もう済んだことにしようとしていた。もう一度話さないとダメ…でも、今はざくろの話を聞いて…


「私はその時、初めて彼を傷つける要因を作ってしまったのだと悟りました。そして、我が身を振り返り悟りました。私は、みかんからもたくさんの気持ちを貰っていたはずなのに、それすらも忘れるほど彼に恋い焦がれてしまっていました。そして、彼から一度は戒められたと言うのにまた同じように彼の恋心を言い訳に、全てを自分の都合の良い様に解釈しようとしていました…」(ざ)


 返す言葉もない。そっくりそのまま私の事を言われている気がした。私も、平真のためにと自分を納得させて全ての悪意を肯定していたのだから・・・


「これは言い訳になってしまいますが、それからは私はこの胸の痛みを自分の罪のあかしとして受け入れていました。ただ…このままいつかは終わる恋だと思っていました…なのに、また同じような過ちを犯しました」(ざ)


 もう終わりだと思っていたけど…何かあるの?


「みかんにライバル…れもんたちが現れた事で、私はその中に加わって彼にアピールしたいと思ってしまっていたのです…」(ざ)


 …そう言う事なんだね。でも、それはしょうがないんじゃないかな…私からすれば、今までずっと耐えて来たざくろはただただ凄い精神力の持ち主だとしか思えない。私なら…とても耐えられないと思う…


「最初は自分自身、そんな浅ましい考えを持っている何て思っておりませんでした。みかんとれもんが平真君にくっついているのを見て…嫉妬で醜く歪むような心持ちにならなかったことに安堵しているくらいでした。でも…いちごに、りんごにとどんどん増えて…そして、あの喫茶店でのまたとないアピールチャンスに…私は・・・自分でも知らない間に溜まっていた彼への想いの一部を吐露してしまったのです…」(ざ)


 やっぱり…ざくろは体調が悪くなって帰ったんじゃなかったんだ。店長さんには違和感を見つけられなかったけど、平真の様子がおかしかったからね…


「店長さん…神楽さんは、この状況を作った自分にも責任の一端はあると言って私が先に帰った理由を用意してくれたみたいですけど、家に帰ってからゆっくりと考えても…正直に話す以外に方法はないと思ったのです」(ざ)


「今まで黙っていて…二人の仲を邪魔すようなことをして…申し訳ありませんでした」(ざ)


 そう言って頭を下げて来た。


「許してくれ何て言える立場では…みかん?」(ざ)


 私は彼女の言葉を遮るように抱き着いた。もう…無理だった…限界だった…


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」

「み、みかん!?何故泣いて…何故謝っているのですか?謝るのは私…」(ざ)

「ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんなさい・・・」

「と、とにかく落ち着いて下さい!ほら、とにかく一度落ち着いて…ほら…ね?大丈夫ですから…」(ざ)


 そう言って抱きしめてくれる、ざくろ。今の私は優しくされると余計辛いはずなのに…それでも落ち着いてしまうのは、やはりまだざくろの親友でいたいと思っているからなんだと思う。どこかで彼女なら許してくれるんじゃないかと思ってしまっている…。逃げては何変わらない。平真もざくろも言っていた…だから…


「ごめん、ざくろ。落ち着いたから離してもらってもいいかな?」

「はい…本当に大丈夫ですか?」(ざ)

「うん…大丈夫じゃないけど、話さないといけないから…聞いてください」

「・・・分かりました。そんな顔されたんじゃ聞くしかないです」(ざ)

「ありがとう…」


 私は、落ち着くために深呼吸をした。それでも、ぐちゃぐちゃになった思考は平常通りとは言えないと思う。自分の身体を支えるのだけで精一杯の状況と言っていい。それでも…


「私は…ざくろの平真への恋心に気が付いていたの…」

「そう…なんですね」(ざ)

「…気が付いていたの?」

「それなら楽だったですけどね…少し違和感を感じたとしても、それをついて考えを回す余裕がなかったんです。自分自身の罪悪感と、平真君への想いを抑えるのに手一杯だったもので…」(ざ)

「そうだよね、ごめんなさい…」

「・・・謝るとしても全部話してからにしてください。今、謝られても戸惑いの方が強くて判断も出来ないですから…」(ざ)

「…うん。私が、ざくろの気持ちにはっきりと気が付いたのは…小学校の卒業式の日、平真に声を掛けられた後に見せた表情…恋する乙女の顔と言うのかな?それを見た時だった」

「あの時は…それなりに彼とは疎遠になりかけていたから…声を掛けてもらえるとは思っておらずに、不意を突かれてしまってそのような表情をしてしまったのだと思います…」(ざ)

「そんな感じだったと思う。驚きの後に、少しだけ見せて表情だったから…でも、前からもしかしたらと思う事はあったの。でも、そうじゃないと自分自身に言い聞かせていたの…」

「ごめんなさい、もしすぐに私が打ち明けていたら…」(ざ)

「いいよ…そんなことを言っても始まらないから…私の話を聞いて欲しい」

「はい…」(ざ)


 私はもう一度深呼吸をする。今ざくろから逆に謝罪されると私が動けなくなってしまうから…


「もう分かったと思うけど、私はざくろの気持ちに気が付いていて…それなのに、平真からプロポーズされたことを相談したの…。本当に最低な行為だったと私も思ってる」

「そんなこと…」(ざ)

「お願い、私を甘やかすようなことは言わないで聞いて欲しいの」

「わ、分かりました…全て聞いてからにしますね…」(ざ)

「ごめんね…ざくろ」


 ざくろの気持ちはすごく嬉しい、でも今回はそれにすがったら動けなくなる…最低なままになる…それだけは…


「私はざくろに相談した時、ざくろの気持ちを知った上でそれを話した。でも、心のどこかで後押ししてくれるんじゃないかと身勝手に思ってしまっていたの…」

「みかん…」(ざ)

「でも、しばらく待った方が良いと言うアドバイスを得て、私はそれの意図も分かってしまった。だから…平真に、手紙で返事をしたの」

「返事をしたのですか!?それにしては…」(ざ)

「その…平真に出した手紙は…自分でも言うのも何だけど…かなり可笑しな内容だったと思う。それに、平真が黒が好きだからと言う理由で、封筒を黒にしたのもまずかったみたい…。平真は…危険な手紙と勘違いして読む前に燃やしてしまったみたいなの…」

「そ、そんなことが…」(ざ)

「そんなことを知らない私は、平真は暫く隠して付き合う事にしたいんだと勝手に解釈してしまって…それで、時々ざくろに…わざと平真との仲を見せつけるような態度を・・・」


 ざくろを見ると下に顔を伏せている。もしかすると、当時の事を思い出したのかもしれない。知らないでするのと、知っていてするのではそこに込められた悪意の有無で大きく意味がことなるのだから・・・


「そして、少しは話したから知っていると思うけど…れもんのお陰で私は…そうだね、正気に戻れたと言っても良い。平真を言い訳に全てを身勝手に行っていた狂った女が…真っ直ぐな恋心をまざまざと見せつけられて…好きな人に諭されて…やっと正気に戻れたの…」

「みかん…」(ざ)

「ごめんなさい…謝っても許されない事をしました。でも、謝る事しか出来ないです。ごめんなさい、貴方が傷ついているのを知っていたはずなのに、平真を使ってさらに深く傷つけるようなことをしてしまいました」


  私は思いつくだけ彼女に謝り続けた。そして…


「もし…おこがましいお願いだけど…少しでも許してくれる可能性があるのなら、何でもするのでもう一度友達から…ざ、ざくろ?」


 それまで、ずっと私を目を逸らさずに見つめていたざくろが、級に抱き着いてきた…どうして?


「親友なのに友達からやり直せるわけないでしょ?全く…私と同じでバカなんだから…」(ざ)

「え?そ、そんな簡単に許されることじゃ…」

「そうだったとしても、この世の終わりのような…。そんな、お願いだから助けて下さいって表情で私にすがって来る親友を突き放せるほど私は人間やめてないつもりだよ?」(ざ)

「う…私そんな顔してたんだ…」

「うん、スマホに残しておけば良かったかな?」(ざ)

「や、やめて!絶対に黒歴史になるよ~」

「全く…ほら、まずはそこに座って?私は泣かないように頑張っていたのに、みかんたら泣いてしまうんだもの…誤魔化さないと午後からも授業があるんだよ?」(ざ)

「あ…お、お願いします…」

「うん、目が腫れるほどじゃなくて良かった。これなら少しで済むね」(ざ)


 そう言ってテキパキと私に軽いメークを施すざくろ。・・・あれ?


「あの…」

「動かないでくれる?」(ざ)

「は、はい」

「・・・うん、こんなものでしょ?どう?」(ざ)


 そう言ってコンパクトの鏡を見せてくるざくろ。うん…分からないかな?


「ありがとう。これなら少なくとも目立たないと思う」

「良かった。全く、みかんはどこか後先考えないところあるよね?そ言うところ、平真にそっくりだよね」(ざ)

「あの…」

「何?どうしたの?」(ざ)

「その…許してくれたと思って良いのかな?」

「許すも何も…そんなことを言ったら、私がしたこともみかんが知っていたとしても許されることじゃないでしょ?ここは…お互いに話したって事で納めるのが一番だと思う…それとも、みかんは私と親友に戻るのは嫌なの?」(ざ)

「そんなことない!私…もう許してもらえないとばかり…」

「ストップ!また泣いたらくずれちゃうでしょ!?」(ざ)

「あ…うう、放課後にすればよかった…」

「はあ…本当に抜けてるんだから」(ざ)


 抜けていると指摘されたショックよりも、さっきから気になる事が…


「その…もう一ついい?」

「今度は何?」(ざ)

「その…ざくろの喋り方が…」

「・・・ああ、何かもうみかん相手に丁寧な言葉を使うのがバカらしくなっちゃった」(ざ)

「ええっ!?ば、バカらしくなっちゃったの?」

「うん。これだけ腹の内を出し合った親友同士なのよ?あんな着飾った言葉で話すのは違うと思ったら…もう、使うのバカらしいなって」(ざ)

「うう…やっぱり怒ってる?」

「みかんだけを怒ってないからその顔はもうやめなさい!」(ざ)

「はんへふへふほ?へほうはふふへふはははへへ…」

「やめて欲しかったらもう泣かない事!分かった?分かったら頷きなさい」(ざ)


 私がコクコクと頷くと、ざくろはやっと私の頬から手を離してくれた。


「うう、ほっぺがはれちゃうところだよ…」

「大げさなんだから、いい?もしまた同じような事をしたらまた摘まむからね?」(ざ)

「もうしません…」


 そう言って頬に手をやってちょっと下がる私。


「私が怒っているのは、私たちが自分の事だけしか互いに考えてなかった事に対して。だって、そのせいで何年も無駄にしてしまった気分なんだもの…勿体ないと思わない?」(ざ)

「それはそうだけど…何か、ざくろが別人みたい…」

「今までは、平真の事もあったりして飾ってる部分が多かったからね…前の方が良い?」(ざ)

「ううん!今の方が親しみやすいと思うよ!何か、頼りがいがある!あ、前も頼りがいがあったんだよ!」

「ありがとう、分かってるから言わなくていいよ」(ざ)

「うう…ずるいなぁ。そうやってほほ笑むととても綺麗な美人さん何だもん…平真を取り合うライバルになると思うと…とても複雑だよ…」

「そんな弱気な事を言ってると持って行っちゃうわよ?いいの?」(ざ)

「ダメ!平真だけは絶対にダメ!簡単には渡さないんだから!!」

「良かった。そう言ってくれなかったら、こっちが遠慮しちゃうところだよ」(ざ)

「ざくろ…あの、それでなんだけど…今までの話…平真と菫さんの前でしたいんだけど…いいかな?」

「菫さんって?」(ざ)

「あ、平真のお母さんの名前だよ。昨日、私とれもんとりんごといちごの4人で菫さんに…なんだったかな?あれは…誓いを立てたのかな?思い返すとよく分からないんだけど…女子会?親睦会?」

「居なかった私に聞かれてもね…」(ざ)

「とにかくね、菫さんにざくろを連れて来いって言われたの!・・・平真がだけど」

「なるほど…大体読めたわ。それなら、学校が終わったら3人で平真の家に向かうって事でいいのかな?」(ざ)

「うん…。あの…改めてよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね。・・・なんだか、今のだと逆になったみたいだと思わない?」(ざ)

「確かに…そうだったかも?」


 そう言って、顔を見合わせた後笑った。ざくろとこうして笑い合うのはすごく久しぶりな気がする…


「さて、それじゃあさっさと食べ」(ざ)


 そこまで言った時、予鈴が鳴った。覚悟していたけど、お昼ご飯抜きかぁ…


「仕方ないね、お昼の時間を選んだ誰かさんのせいかもしれないけど?」(ざ)

「ごめんなさい…」

「冗談だって♪それじゃあ…参りましょうか」(ざ)


 いつもの態度の表情に戻ったざくろ。切り替えがうまいなぁ…


 こうして、私たちの長年のわだかまりはなくなった…のかな?それは分からないけど、とりあえずは…ざくろが、これからもそばにいてくれるのがとても嬉しい。そして、とても心強いと思ったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

悩みましたが、結局みかんサイドでお送りしました…いかがでしたでしょうか?

またぎりぎりの完成となり、余裕なしです(汗


次話もよろしくお願いします。

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