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RealSaga  作者: 日比乃枕
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第5話

 合格通知書をもらった俺達は結界を抜けるために歩いていた。


「そう言えば、アラン君は良く結界に気付きましたね。」

「あれはね、結界に入った瞬間に違和感があったからそれで周りを探っていて、そしたら魔力感知に引っかかるものがあってそれが結界だったんだ。」

「ちなみにですが、どれ位の範囲で魔力感知を使ったんですか?」

「ん?3kmくらいだけど」

「そ、そうですか……」


 リネットさんは驚いたと言うより何だか顔を引きつっている。

 一応、自分でも魔力感知を使った際はけっこう抑えて使ったんだけど。都市の中で使ったら頭の中に色々と要らない情報が入ってきて邪魔になるからね。


「それともう一つ。バスを止めた方法が気になっていました。後ろから見ていただけでは何をやっていたのか分からなかったので。」

「あ〜、その事ね……。できれば今回の試験の事は誰にも言わないで欲しいんだ。」

「どうしてですか?」

「今回の試験で教師達からの評価は高かった。でも、入学して早々にそういう奴がいるだけで生徒の間で噂が立ち色々と面倒事が起きるかもしれない。しかもこの試験は俺たちしか受けてないから尚更だね。トラブル事は嫌いなんだ。」


 この学園の生徒の実力が分からないうちに俺の力を考え無しに使うのはまずいだろう。しっかりと見極めないといけない。


「分かりました。それに私も言いふらすつもりはありませんのでしたので安心して下さい。」

「ありがとう。まず俺がバスを止めた方法を話す前に、リネットさんはバスが何を原動にして動いていたか分かる?」

「はい、クリスタルによってです。」

「そう、バスはクリスタルからの魔力供給によって動いていた。その魔力をバスに送っていたのは?」

「魔術回路です。魔術回路によってバスの動きがプログラムされています。どの魔道具もそうです。」

「うん。そうだね、バスも魔道具の1つだね。じゃあ今回バスが暴走した原因は何だったか。」


 リネットさんは腕を組んで考える。


「それは、魔術回路が壊れたからではないでしょうか?回路が壊れたことにより正しい信号が送られてなくその為暴走したと思います。」

「残念だけど正解はそうじゃないんだ。魔術回路が壊れただけならクリスタルの魔力供給は止まるはずなんだ安全装置の1つとしてね。それなのにクリスタルは魔力を供給し続けていた。」

「それでは、バスの暴走はクリスタルの暴走が原因だったと言うのですか?」

「そういう事になるね。」

「そんな、クリスタルが暴走するなんて初めて聞きました。」


 驚くのも無理はない。クリスタルとは世間一般的には絶対的な物と認識されている。

 それは、クリスタルを発明したのが英雄の1人でありそれを歴代の国家魔導師によって試行錯誤が繰り返され造られた、言わば人類の技術が詰まっている物だからだ。

 今回のバスの暴走では実際にクリスタルの確認をしないと原因は分からなかっただろう。


「けど、アラン君はクリスタルが原因だとどうやって突き止めたのですか」

「俺はまず、バスの魔術回路に自分の魔力を流したんだ。魔術回路が壊れていれば即席の回路を作ろうと思ったけど実際はクリスタルが原因だったと分かったんだ。そこで俺は、クリスタルの権限を奪うことにした。」

「あのクリスタルの権限とは何でしょうか…」


 リネットさんはその言葉を初めて聞いたようで首を傾げて頭の上に?を浮かべている。


「クリスタルには安全に魔力供給をする為に中に核が組み込まれているんだ、それは術者の魔力に反応して魔力供給のON/OFFつまりスイッチになっていて今回その機能が正常に動いて無かった。そこで俺が直接魔力を流し込んでクリスタルに俺の魔力を上書きしてその機能を奪い強制停止させたって訳。」


 簡単にではあるが俺がしたことの流れを話したが、リネットさんは固まっていた。


「リネットさん?」

「あ……すいません。アラン君の話を聞いていて、私が知らないような事が多くて頭がついてきませんでした。クリスタルの中に核があったり、権限を奪うことが出来たりそんな事初めて知りました。」

「あ、そうなんだ。俺はてっきりみんな知っているもんだと思ってたよ。」

「いえ、普通ならクリスタルは既に完成されたものなので深く考えたことがありませんでした。アラン君はどうやってその事を知ったんですか?」

「自分で勉強したからとしか……まぁ気になるのなら研究してみればいいと思うよ。色々と面白いことが知れると思うし」


 実際のところバスを止めた方法以外は話す気は無い。バスを止めた方法も他の人が出来るものだとは思わないので話はこれくらいにしといた方が良いだろう。




 教師と別れてから10分くらい経った頃、結界の境界付近に着いていた。一見何も無い様に見えるが、俺からしたら目の前に壁がある感覚だ。

 けど壁と言っても結界自体はドーム状のようなもの何だろうけど。


「リネットさん、ここが結界の境界だよ。」

「え、ここですか。何にも見えないんですが…」


 やはり、たいていの人では周りから見られない様になっている。

 俺は自分の魔力を使い結界に手を当てて干渉する。すると、結界が揺らいで浮かんでくる。


「結界が……ほんとにあんったんですね。」


 リネットさんは驚いた様子で結界を見ている。


「ここ抜ければ学園はすぐだと思うよ。行こうかリネットさん。」

「は、はい!」


 学園にいくのが緊張したのかつい返事の声が大きくなってしまう。俺はそれを見て少し笑いながら結界を抜けた。



 結界を抜け俺とリネットさんは立ち止まる。いや、見上げていた。

 俺は、三階建てで敷地とかが少し大きい普通の校舎を想像していたのだが予想は大きく外れた。

 今俺が見ているのは、校舎ではなくビルだった。学園にビルがあるのは初めて見た。


「リネットさん、学園にビルが建っているのは普通なの?」

「いいえ、学園にビルが建っているのは世界中を探してもこの学園だけですね。流石はセブンズです。」


 校門前で立ち止まっていると邪魔になってしまうので学園の中に入る。

 ビルは学園の中心に位置しており、校舎はその周りに建っている。その他にも違う建物が色々と建っている。


 俺とリネットさんは教師に言われた通り受付を目指して歩く。学園の入学試験だけあって人は多くリネットさんは俺の制服を掴んで歩いている。

 その途中、試験で合格できなかったのだろう生徒が悔しい表情をしながら学園を出て行く姿も見受けられた。


 校門から直線に歩いていると『受付』と大きく書かれた表示を見つけた。俺とリネットさんはその受付に行き教師に渡された合格通知書を担当の人に見せる。

 受付の人は、通知書の中身を見て俺達の名前と顔をそれぞれ確認する。それからこの後の式の流れを書いたプログラムを受け取り、式の会場となる場所を説明してもらった。


 式の会場は校舎と隣接している講堂らしい。式に出席するのは新入生が主だが、数人の在校生と教師による話がある。


 俺達は指示に従い講堂の入口まで移動する。入口には『入学式会場第3講堂』と書いてある。

 入口付近には教師が立っていて俺達が講堂内に入る際『入学おめでとうございます』と言ってくれた。俺とリネットさんはそれに会釈する。


 講堂内には既に試験に合格した生徒が座っていた。席は前詰めで俺達は空いている席に座る。

 俺は講堂内を見渡す。中は広く最前列の前にはステージの上に演説台が置いてある。そして、1番目を引くのが学園の旗が吊るされている。


 この学園は魔導師を育成する機関で通称『セブンズ』と呼ばれていて学園の歴史はとても古い。

 人類が魔物との戦いにおいて苦戦を強いられている時に7人の魔法使いが現れ、その7人は驚異的な力を保持しており魔物を撃退する事に成功する。しかし、一時的な撃退でしかなく次にくる魔物の襲撃に備え魔導師を育成する必要があった。

 その為、7人は魔導師育成の専門機関を建てることにする。それがこの学園であり7人が建てたことに由来して『セブンズ』と世界から呼ばれる事になる。


 この話はその戦いから語り継がれて今ではその7人を英雄と呼び劇や本などある。この都市にも2年に1度その7人を讃えて『英雄祭』なんてのをやっているらしく俺はその英雄祭を見た事がないため楽しみにしている。


 そんな事を考えていると講堂の入口が閉まった。どうやら今回の合格者が全員揃ったようだ。

 講堂内の照明が薄くなりステージの方が明るくなる。そこからは、教師の人により式の進行が始まる。

 教師たちの紹介から学園の校則など説明を受ける。学園の教師の人数は多くその中にはバスの試験で会った教師もいた。式は滞りなく進み残すは在校生と新入生代表挨拶最後に学園長の挨拶なる。


 教師の進行に従いステージの脇から1人の女生徒が演説代に移動する。髪は赤く腰まで伸ばしていて姿勢を正し威風堂々とした雰囲気で歩く。

 演説代に着いてから講堂全体を見渡し少しの間を開ける。


「新入生の諸君入学おめでとう。私は学園の生徒会会長兼騎士団長をしているカレン=スカーレットだ。」


 講堂全体が静寂になるまで待ってから話し始めた。元々、静かではあったがそれでもステージに立っている生徒会長はまるで講堂全体に圧をかけているように感じて空気が張り詰めていた。


「君達はこの学園に合格できた時点で魔法の才があると認められている言わばエリートだ。だが、その事を必要以上に信じきって自信過剰になるのは辞めてもらいたい。君達はまだ学園に入ったばかりの子供に過ぎず、故に無闇に無茶な行動は慎んでもらいたい。なぜなら人類の宝でもあるからだ。」


 生徒会長の口調は鋭く一言一言が肌に突き刺さるようだった。


「来るべき魔物との戦いにおいてそして人類の発展のために君達はこの学園で最高峰の教育を受けれると保証しよう。生徒同士互いに切磋琢磨して自分の武器を磨いてほしい。私からは以上だ……。ようこそ、セブンズへ。」


 生徒会長は挨拶を終えると学園旗に一礼して演説代の横に移動する。


『では続いて、新入生代表挨拶に移ります。学園長と代表者はお願いします。』


 重苦しい空気の中教師が進行を続ける。ステージの脇にいた女性の教師に対して頭を下げた。

 でもこのんな中で誰も新入生代表挨拶何てやりたいと思わないんじゃないか。元々話す人は決まっているとはいえ、緊張して失敗すると思う。俺は絶対そうだな……


 ステージの脇からは魔女衣装の様な格好をした人が出てきた。その人は演説代に移動する。生徒会長はその人に深く一礼した。

 あの人が学園長なんだろう。どこからどう見ても1人だけ違う格好しているからそうだと思う。


 その後に、ステージに登ってきたのが新入生代表挨拶をする女生徒だ。その女生徒の髪は白銀で立ち姿は凛々しく見るもの全てを引き込むような感じだがどこか冷たく刺々しい印象の様に俺は思った。

 その生徒はぶれない姿勢のまま学園旗と学園長に綺麗に一礼する。なんと言うか、一つ一つの動作が洗礼されている。


 生徒は演説代を間に挟んで学園長の前に立つ。


「今日セブンズに入学出来たことを私達は誇りに思います。」


 生徒は講堂内によく通る声で代表挨拶を始める。


「来るべき魔物との戦いと人類の発展のため私達は学園での生活を有意義に過ごし時間を無駄にせず日々学業に専念します。今日は私達のためにこのような式を御用意して下さりありがとうございました。新入生代表アシュリー=クロード。」


 学園長が拍手をしそれにつられて講堂全体が拍手に包まれる。あの空気の中で見事言い切った。良くもあんなに堂々と出来るものだとは感心する。

 挨拶を読み終えると生徒会長と共にステージの脇に移動する。


『では最後に、学園長の挨拶となります。学園長お願いします。』


 新入生全員が学園長を見つめる。離れているので年齢の程はわからないが外見からしてそこまで歳をとっていない様に見受けられる。学園長は優しい笑顔を作りながら話し始める。


「新入生の皆さん入学おめでとうございます。私は学園長のアラディア=カニングと言います。あなた達のような魔法の才溢れる人材を学園に招くことが出来てとても嬉しく思っております。」


 学園長の口調は優しく今までの緊迫した空気を和らげてくれる様だった。


「この学園に入学した生徒は魔物との戦いや人類発展の為にと意気込んでいるかと思いますが、まずはここの生活になれ学友を作り楽しく過ごして暮ださい。戦いに見を転じればいつ死んでもおかしくありません。なので今という時間を精一杯生きて楽しんで欲しいと思います。余り長い話は退屈だとは思いますのでこの辺で私からの挨拶は終わりにさせて頂きます。」


 これで入学式はようやく終了した。新入生はそのまま講堂を後にして先程の受付に貼ってあるというクラス表を見に移動する事にする。

 俺達1年生は100人の4クラス25人ずつに別れることになり、この学園全体では約300人の生徒が在学している。


 受付に移動した俺とリネットさんはクラス表を見る。俺の名前はと……お、あったあった。4組に俺の名前が書かれていてすぐ側にはリネットさんの名前もある。


「あ!見て下さい。私とアラン君同じクラスですよ。」

「ほんとだこれからよろしくね。」

「はい。」


 リネットさんは知っている人と同じクラスになれたのが嬉しいようでホットしている。俺も誰も知らないよりは知っている人がいれば気は楽だ。

 俺は自分のクラス表をもう一度見直すと気になる人の名前が書いてあった。それは新入生代表挨拶をしたアシュリー=クロードの名前だった。


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