第2話
俺がゲートを潜った後、しんみりとした空気が流れていた
「行っちゃったね…」
「リアム、寂しくわあるけどあるけど、こうなる事は分かっていたはずよ。」
「そうだけど、いざこの日が来るとね……」
リアムは寂しそうに俯く。さっきまでの、明るい態度は俺のことを思い我慢していたのだろう。
「そうじゃの。あの子が来てから随分と賑やかになった。寂しいのは皆一緒じゃ。だかいつまでも過保護でいる訳にもいかん。それに最近になって外にいる奴らも動き始めているのが分かった」
1度言葉を切り、髭を触りながら神妙な顔つきになる。他の皆もそれに気づき難しい表情になる。
「あの子と出会い、ここに連れてきてから丁度1000年。あの子の旅たちと共に止まっていた運命の歯車が動き出しておる。偶然がそれとも必然か……わしらがあの子にしてやれることはそう多くはないじゃろう。」
「そうか、あ奴らが動き始めたか私も覚悟を決めないとな…」
「3人とも、そう暗い顔をするでない。わしらの運命は決まっているかもしれんが、あの子は違うじゃろ。もしかしたら、あの子の力で運命を断ち切ってしまうかもしれんぞ?」
「確かに、アランの力は規格外だからね。有り得るかも」
皆もそう思ったらしくクスリと笑う。
(アランがこの先どういう未来を選択し行動するのか…その先にあるのは希望かはたまた絶望か、わしはあの子の運命を見届けなくてはならない)
アランの行ったゲートの先を見つめながら心の中でそう決心する。
ゲートをくぐった俺は、近くにある街の駅に着いていた。
ここから目的地である学園は遠いので列車で行く事になる。この街には姉さんと何回か来たことがあり中央にある大きな教会が印象的だ。
駅は街に隣接するように作られていて、駅舎は赤レンガで組み立てられいる。俺は、中で切符を買い小腹がすいた時に列車の中で食べる物も買う。
程なくして、列車が到着する。乗客は俺の他に数人程度しか乗らなかった。地方の駅である為、それ程利用客は多くない。この列車も5両編成で、途中の駅では連結する事になっている。
俺は、列車に乗り個室の席に座る。通常はボックス席などだが、爺さんが気を利かせてくれて個人席分のお金をくれた。長時間の移動になるのでとてもありがたい。
列車が動き出す。すると、胸ポケットから妖精がモゾモゾと顔を出し、窓の近くに行き、羽をパタパタと早く動かしている。高速で動く列車に興奮しているようだ。
この列車も実は魔道具で、エネルギーは魔力を結晶化させたクリスタルを使っている。車輪などに張り巡らしている回路を通って動かしていて、クリスタルの魔力は1回の補充で長時間持ち、クリスタルは自分で魔力を作ることが出来る為、使う魔力の3分の1で済む。
(魔法ってすごい)
「そう言えば、ソーラさんに君の名前を付けてくれと頼まれてたね。どんな名前がいいかな……」
妖精はこっちを見る。髪は、ソーラさんと同じで緑色で目は青色。自然を連想させる感じだ。ふと、そこでこの前読んだ本を思い出す。神話物語で出てきた妖精の名前があったな。それを捻って……
「シノ……なんてどうだろう?」
妖精は笑顔で頷き、俺の周りを飛び回る。
どうやら気に入ってくれてようだ。
列車が発車してから小1時間、窓の外のは未だに田園が広がっている。爺さんが言っていたが、俺が行く学園は都会で建物が多くあり、人の数も桁が違うらしい。
俺は、ここら辺の街しか知らないので、どうも想像しにくい。まぁ、昔の事を思い返せばいいのだが、今の時代はどうなっているのか楽しみだ。
お昼時になったので、ご飯を食べる。次元収納からリリアさんが作ってくれた弁当を食べる。
流石はリリアさん、中にあるおかずはどれも美味し。これからは、リリアさんのご飯が食べられなくなるのは残念だ。
シノが近くによってきて、弁当を見ている。シノもお腹がすいたらしい。
「シノのは、駅で買ったのがあるけどそれでいい?」
袋からパンを出してそれをちぎって渡す。しかし、シノはブンブンと首を振り弁当を見て、俺に潤んだ目を見せてくる。
(う、これをされると弱い……)
俺は、シノに弁当のおかずを箸で口に運ぶ。シノは嬉しそうな顔で食べ、弁当の味が気に入ったのかどんどん要求してくる。
(まぁ、可愛いからいいっか…どんどんお食べ)
そんなことを思いながらシノに弁当を食べさせていると、いつの間にか食べ物が無くなっていた…
「めっちゃ食うな!その小さな体のどこに吸収されてるの!?」
シノは首をかしげている。どうやら本人にも分からないようだ……
弁当を食べ終えたシノは、お腹が膨れたのかウトウトとし始めて俺の膝に丸まって寝てしまった。
俺も、駅で買った残りの食べ物を食べ終え少し仮眠をする事にする。
目が覚め窓の外を見ると、もう夕方になっていた。
次の駅では、列車の連結があり多少時間が空くので、そこで夜ご飯を買いに行くことにする。シノはまだ寝ていてヨダレを垂らしながら幸せそうな寝顔をしている。
絶対弁当の夢を見てるよな…
駅に着いて食べ物を買う。
米は絶対だな。後は、パンとシノ用にお菓子も買っておこう。足りるかな?足りるよね…
買い終えた俺は、駅を見渡す。出発した駅とは違い人が多い。駅舎も立派で都会にいるようだ。
すると、オームでオロオロと何やら焦っている1人の女性がいる。俺と同じ学園の制服を着ていた。
目があった。俺は、何故か嫌な予感がしたので踵を返した。
しかし彼女は逃がしてはくれなかった。全力で走ってきて、俺の目の前にやって来た。
「ちょっと待ってくださぁぁい!」
「え、何ですか?迷子なら駅員に言ってください。では、」
「迷子ではないんですけど!これを逃したら人生の迷子になっちゃうかもしれないの!」
「なに意味のわかんないこと言ってるんですか?退いてください」
「絶対に退きませんよ!お願いします!私を学園までは連れて行ってください!」ガシ!っと腕を掴まれる。
やばい、なんかこの人力強い。それに、周りの人も注目し始めている。変に目立つのは嫌だし列車の時間もそろそろだ。
俺は、仕方なくこの人を列車の中に入れることにした。
「いや〜一時はどうなる事かと思いましたよ。ありがとうございまた。」と言い頭を下げる。
髪は後ろで1本に縛っていて赤いフレームが付いた眼鏡をかけている。
「どういたしまして。それで、どういう事か説明してくれますか。」
「そうだね。とりあえず、自己紹介から。私はミオ=キュラベルって言います。ミオでいいわ、よろしくね。あなたは?」
「アラン=ローウェンです。よろしく」
「よろしくねアラン君。」
そして咳払いをしてから一呼吸する。
「まず、順番に説明するね。私は、あなたと同じ学園に向かうため家からさっきの駅に向かったの。改札で切符を買って列車が来るまで時間があったからお手洗いに行った後に待合室で座ってて、列車が来る10分前にホームに向かおうとしたら切符がないことに気がついたの。お手洗いの場所には無かったし家は遠いから帰るのは無理で、しかもお金は行きの時分しか貰ってないから、どうしようかと途方に暮れてた訳」
言い終わると、フゥ―と息を吐いた。
「なるほど。だからあんなに慌ててたんだ。それで丁度同じ制服を着た俺を見つけて、どうにかして学園に行けるように頼み込んだ訳か」
「うん。そう言うこと。だからね、君を見つけた時は私の本能が君を逃がしちゃいけないって叫んでいたわ。それで、その……今後の事なんだけど…」
ミオが申し訳なさそうにこっちを見てくる。
「事情は分かったし、ここで降りろなんて酷いことは言わない。学園までの切符分は出すよ。席は自由席でになるけど。」
「うんん。ここまでして貰っておいて贅沢は言わないわ。学園に行けるだけでも十分よ。ありがどう。それと、この恩は決して忘れないわ!もし困った事があったら絶対に言ってよね力になるから」
ミオは荷物をまとめて部屋から出ていった。
ミオが行った後、俺はシノと一緒に夜ご飯を食べそのまま寝ることにした。
(結局、シノ用に買ったお菓子の量で足りなかった……)
夜中、俺は目を覚ました。すると、列車は停車しアナウンスが流れてくる。
『お客様に連絡致します。当列車付近で魔物の確認がされました。尚、近くの街の討伐隊が安全を確認するまで当列車は緊急停車する事となります。出発のめどが立ち次第また連絡をします。』
(参ったなぁ、一応時間に余裕を持って来ているけど、遅れて到着するのは嫌だな。)
そう思い、魔力感知で周囲を探る。反応があった、俺の窓側の1キロ先に鳥型の魔物を見つけた。数は3体、はぐれだと思われる。
俺は、手の平で魔力を練り拳一つ分くらいの玉を作った。光源体は目立つので避ける。
魔力に反応するかもしれないので微量にし接触と当時に破裂するようにする。窓を開け魔物に狙いを定め撃つ。
魔力の玉は魔物の頭部に当たり、パァァン。と言う音とともに落下していった。
「おい!魔物の位置は掴めたか!」
討伐隊のリーダーが声を荒らげる。
「はい、それ何ですが...東の方角に鳥型の魔物複数体確認しましたが、先程反応が無くなりました。」
「反応が無くなった!?どういう事だ?」
「それが分かりません。さっきまで魔物の反応はあったのですが急に全ての反応が無くなったのです。」
部下の1人が戸惑った様子で報告する。
「何が起きているか分からんが、その場所に行くしかないか、これから森に入る!全員周囲の警戒を怠るな!」
程なくして、討伐隊は魔物がいたとされる場所に着いた。
すると、そこには絶命している鳥型の魔物3体がいた。
「これは……何があったんだ?」
「魔法での狙撃でしょうか?」
「いや、それは有り得ない。狙撃でここまで綺麗に仕留められない。魔物の危険度はLv.2程度だが感覚が敏感で通常だと避けられてしまう。それに、魔法での傷が少ない...こんな芸当が出来るのは国家魔法師しか考えられん。」
「国家魔法師!?でもそんな情報どこにも……」
「ああ、だから有り得ないんだ……。とりあえず、列車には安全が確認されたと報告しろ。それから、この事は街の本部に直ぐに連絡してくれ」
「了解しました」
(まったく最近魔物の出現が多くなってる時に、また面倒事が増えたじゃねえか。)
最初のアナウンスから30分が経った頃、再びアナウンスが流れた。
『お客様に連絡します。当列車の安全が確認された為、運行を再開します。』
そこまでの、大きく遅れる事は無かったようでひと安心し、俺は寝る事にした。
登場人物の容姿を書いてなかったので……簡単にですが。すいませんでした。
※設定は後から変えるかも知れません。
アラン=ローウェン
本作の主人公。黒髪
リアム
アランの義姉。剣術体術の師匠。短髪茶髪。
リリア
アランの母親。長髪。リアムより強いです。
ローウェン
アランの育ての親。魔法などの師匠。白髪で髭を生やしThe魔法使いの印象。
ソーラ
妖精王、又は精霊王と呼ばれている。緑色の長髪でローマのトガの様な服を着ている。リリアさんとは犬猿の仲。