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コロン関係

石宝少女四詩-【試】

作者: RYUITI

 柔らかい白一色に統一された室内で、

朝陽の光を受けて眩しそうに寝具から身体を起こして眼を擦る一人の少女の姿があった。

擦る手の甲からチラリとだけ見えた瞳は赤くまるで熟したトマトや、真紅に彩られた宝石を思わせる。

その下には薄く小さな鼻と、桃色よりも少し濃い唇。

柔らかい口を大きくあけて「はあああ」と大きめのあくびをする。

少女の髪色は薄く、柔らかい白色をしていて。眼を閉じたままの睫毛は濃く多い。


腕をゆっくりと上に上げて伸びをしようとする姿はまるでわたあめのようにゆっくりと柔らかい。

伸び切る前につられてずり覗く寝間着からは下着などつけて居らず、

なだらかな丸みを帯びた二つの柔肌の左下にはぽつりとホクロのような、

宝石のような、蒼色の点が小さく一つ表れている。


「ん~ 」伸び切った腕や胸が張った身体に促されるように、

唇からもれる吐息と声は、歪みや混じり気など存在しない純粋なモノで。

【コンコン】と規則的なノックの後に開いた薄茶色の扉が、ゆっくりと音を立てて開いても、

件の少女は寝間着から肌を覗かせたまま眼を見開く事も無くふわふわと身体を揺らして、

寝具から出ようともしなかったもので、

ノックをしたのが少女の姉妹であってもそれは変わらなかった。


「おはようベリー、まだ眼がもくもくとしてるの、? 」

ベリーと呼ばれた先ほどと同じく未だ寝具から身体を起こした状態のまま止まっている少女は、

コクコクと頷き揺れている。……が。 動きが変わることは無かった。

対照的にベリーと少女を呼んだ女の子は、ベリーの眼が霞むことをもくもくと表現したのち、

ベリーが包まれている寝具より少し歩いた先にある、白いカーテンをシャッと開けて。

差し込んできた陽の眩しさと温かさに眼を細めながらも、

窓の外に映るキラキラとした湖と、原っぱの様子を眺めてしばらくほほ笑んで。


その表情は、いつも通りの日常と景色に安心するかのように、

一日の始まりを心地よく思っているような柔らかな顔をしていて。


「今日も優しい朝で良かった。 」そう呟く少女の眼は、

太陽の光をさんさんと浴び育ったパイナップルのように黄色く、

幸運をもたらす宝石のようにさわやかで濃い色を輝かせていました。


ふう、と一つ唇から息を零した後、少女は、ベリーの元へ歩いて髪を手で撫でながら、

朝食が後少しで出来る事を彼女に伝えた後、静かに部屋から出ようと扉に歩いて行ったのですが、

少女が扉の持ち手に手をかけたとたん、扉の外側からバタバタと足音が響いて、

扉の前から慌てた声が聴こえてきたのです。


「ベロウお姉ちゃんどこーっ、ベルの、ベルのくまさんが何処にもいないよーっ」と。

その声が扉の内側にいる黄色い眼をした少女に助けを呼ぶような声であるのは間違い様が無く、

ベロウと呼ばれた少女は、またかといった様子で少しだけ引きつった笑いを浮かべながら、

ゆっくりとドアを開けたのでした。


ベロウの顔を見たベルという少女は、泣きそうな顔をしてベロウに勢いよく抱き着いていきましたが、

ベロウは身構える事もせずベルを抱きしめてよしよしと彼女を宥めていきます。

「くまさんは昨日洗ってからお庭に干したでしょう? 」ベロウがそう抱きしめている妹に声をかけると、泣きそうな顔から一変して、「あー、そうだったっ 」と少し潤んだままの顔で、

笑顔を浮かべてよりいっそう顔を身体に押し付けて来るので、

ベロウは先ほどと同じように「ベルはあわてんぼうさんね~ 」と、

声に出して先ほどよりも少しだけ力を入れてベルの髪を撫でまわします。

追加の攻撃というようにベロウが頬を頭に押し付けて可愛がるのを、

ベルは少し苦しそうに、けれど心底嬉しそうな表情で身を委ねていました。


くすぐったいと言わんばかりのベルの眼はお茶葉のように深い緑色をして、

癒しを与える宝石のように穏やかで柔らかく輝いています。

ベロウとベルが穏やかに触れ合っていると、少し前まで寝具でふにゃっとしていたベリーが、

あくびをしながらベロウとベルを近づいて行きました。


「ずるい」その一言が二人に聴こえるのと同時にベリーも二人をギュッとして、

少しだけ得意げな顔をしているのがベロウとベリーにも見えたので、

なんだか可笑しくなって少しだけ小さく、三人で笑ったあと。


三人そろって一緒にキッチンへと向かっていきます。

さり気なく、手をつないで。

長女のベロウ、次女のベリー、三女末っ子のベル。

彼女たちは今日も三人姉妹、仲良く温かく一日を送ることでしょう。


ベリーが寝ていた寝具の近くには、黒ぶちの眼鏡が一つ。

窓から差し込む光と共に、彼女たちを見守るように佇んでいたのでした。


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