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冒険者になった息子からの手紙

作者: 神山 詠美

考えていた話を無理やり縮めたようなものなので、意味がわからなかったりしたらすみません。






Dear 父さん



お元気ですか。

僕は元気にやっています。

冒険者になって早4年……だったでしょうか。

長いようでとても早いですね。

ちゃんと僕の誕生日覚えてますか。

今僕15歳ですよ。

だいぶ背も伸びたし、見た目はだいぶ変わってると思います。


ところで、僕はこないだパーティに入りました。

田舎にいる父さんでも名前くらいは聞いたことあるかな、『道化師の集まり』っていうパーティです。

多分ハルメラおじさんとかなら知ってるんじゃないかな。

今回はそのパーティの話をします。


リーダーのガルドラさんは、超大男です。

でも、調子が良くて明るくて酒飲みだから全然怖くないんです。

自ら危険を冒したとかするとめちゃめちゃ怖いんだけどね。

そんなガルドラさんは、僕より大きい剣を軽々と片手で持ち上げてしまいます。

両手で扱っているのが常ですが、別に片手でも持てるんです。

どれくらい重いかというと、僕が持ち上げたら一瞬で押しつぶされる、くらいかな。

ガルドラさんは筋肉隆々の楽しいおじさんです。

因みにザルです。


副リーダーのウェンツさんは、背は平均より高いけど、ガルドラさんに比べたら細くて小さいです。

眼鏡をかけてて頭が良くて、普段僕らをまとめてくれているのはウェンツさんです。

ガルドラさんはいつも笑っているだけだからね。

何処かの貴族の出身らしいウェンツさんはすごい美男子で、でも自分にも相手にも厳しい人です。

氷の貴公子って呼ばれててすごい人気です。

僕も大好きです。

ウェンツさんもガルドラさんと同じで剣を扱うアタッカーなんだけど、タイプは全然違います。

ガルドラさんは力任せに突き進むタイプで、ウェンツさんは剣と魔法の併用がものすごく上手くてガルドラさんが取りこぼした獲物をあっという間に刈り取ってしまうんです。

スマートでなんでも簡単にこなしてしまうけど、すごい努力家なのはみんなが知ってます。

僕はそんなウェンツさんを尊敬してます!


次はアデリーヌさん。

アデリーヌさんはとてもスタイルが良くて明るくて、太陽のような人です。

けど、かっこいい男の人が大好きで、かっこ悪い人とかっこいい人では態度がまるで違います。

ガルドラさん曰く、大きな猫を飼っているらしいです。

因みに、ウェンツさんのことは「真面目すぎて対象外よ〜」らしいです。

大きな胸を揺らしながら、拳で、敵を倒します。

拳で、です。

あんなので殴られたら一発KOです。

死にます。

アデリーヌさんは面倒見がいいけど、怒らせたら命の危機なので余計なことは言わないに限ります。


そしてサンティさん。

優男です。

僕が女の子だったらきっと惚れてしまいます。

顔が凄いいいとかじゃないですけど、性格が天使です。

もう一度書きます。

天使です。

しかも掃除洗濯料理などなど、家事はどんとこいなお方です。

むしろ女性になってお嫁に欲しいくらいです。

こんな完璧な人ですが、1つ欠点が……。

歌が物凄く下手なんです。

別にそれはそれでいいんですけど、それでいて歌うの大好きなんですよ…。

サンティさんのことは大好きだけど、サンティさんの歌は好きになれません。

そんなサンティさんですが、ディフェンダーとしてとっても優秀です。

困っている時に困っている人のところへ颯爽と現れるし、自分に興味を引きつける魔法もすごいんです。

普段は虫も殺せないような顔をしていますが、戦闘中は鬼です。

鬼の形相をしてます。

泣きぼくろが特徴的な二面性男子です。


後タツさん。

何処かの民族らしくて、民族衣装をいつも来ています。

派手だけど動きやすくて涼しいみたいで、少し羨ましいです。

タツさんはいろいろなことができて、戦闘は弓か剣を使います。

剣の時は盾を持ってて、ディフェンダーとしても戦ってます。

タツさんの技の多彩さにはパーティが助けられていて、必要なところに必要な戦力を送り込むことができるんです。

お調子者な部分はガルドラさんに似てます。

お酒飲んだらすぐ陽気になって絡んでくるから、そこは嫌いです。

でも背は僕くらいで低いので許します。

先輩といえば先輩ですけど、お調子者のバカです。


そしてそして、僕の最も尊敬するシアンさんです!

ババーン!

シアンさんは凄くて凄くて凄くてすごいんです!

一応回復師ヒーラーなんですけど、魔術師として援護射撃もこなすんです。

僕は一応弓と魔法を併用していたけど、このパーティに入ってから弓だけに集中できるようになりました。


シアンさんはとってもミステリアスで、男か女かもわかりません。

黒い、マントに似たローブを着てフードをかぶって、口に布まであててて、さらに喋らずに魔法で書いた文字で会話してるんです。

痛い時も驚いた時も呻き声ひとつあげません。

もしかしたら本当に喋れないのかも。

で、そんなところも魅力的なんですけど。

回復師で高レベルな人ってなかなかいなくて珍しいんですけど、能力がもう突出してるんです。

組んだ人たち全員に疲労を感じさせないし、体の動きは良くなるし、攻撃されそうになると結界を張ってくれて、しかもそれがいくつも出せて、一撃で魔物は倒せるし、もう本当にすごいんです。


パーティを組むきっかけになった、『蛍の迷宮』では、僕はシアンさんに助けられたんです。

一休みということで、めいめいに食事したりポーション飲んだりしてて。

でもそこまでの戦いで、絶対シアンさんのお陰でみんな全然疲れてなかったんです。

で、自分の実力が高くなったんだと思った勘違い馬鹿野郎が、僕とシアンさんのポーションを奪ったんです。

「お前は弓師で殆ど魔法は使ってねーし、回復師は今回は全然仕事してねーだろ。」

って言って。

そいつは魔術師で、一番魔法を使ってるって言うんです。

弓師だって、遠くに飛ばすためや効果を付与するために魔法を使うし、シアンさんなんて1人で回復をやっていたから、そいつの無知が思いっきり表に出たんですよ。

でも僕等がいたのは他の冒険者さんたちから離れた場所で、皆さん全然気づいてくれなくって。

そいつは目の前で僕達2人分のポーションを仲間と一緒に飲み干しちゃったんです。

僕はもちろん何するんだって怒ったんですけど、そいつらに殴られて、僕達の悪口を言いまくられました!

別に僕はいいんですよ。

今となってはシアンさんにあんな暴言はくなんて、地獄の苦しみを味わってから死ぬべきですね。

その時は僕はシアンさんのことよく知らなくて、僕に言われたことに対して、ポーション取られたことに対して怒ってたんです。

ポーション、高いですから。

シアンさんはしばらく黙ってて、音も立てずに立ち上がりました。

そのとき、僕からシアンさんの眼が見えたんです。

シアン、という名にふさわしい鮮やかな青が。

でもその眼は、まるで水晶玉のように、人々を魅了するのに何にも関心を持たない、美しくも冷たいものでした。

シアンさんは魔術師たち……いえ、馬鹿野郎たちの前に進みでると、魔法で文字を書きました。

柔らかくて暖かくて綺麗な文字。

淡く光る儚い文字でした。

でも、その内容は。

『何にもわかってない冒険者の風上にも置けない馬鹿野郎さん方。』

ってはじまってました……。

いや、言ってることは納得ですし、僕も反対はしません。

でも、そのとき寡黙なシアンさんのイメージが思い切り壊れました。

もうそりゃガラガラと。

内容は僕にポーションを渡せというものでした。

まあ、始まりがあんなでしたから、勿論馬鹿野郎どもは怒りますよね。

シアンさんに逆上して殴りかかって行ったんですよ。

僕は助けようにも、剣士もいて不利だったし、そこにいた全員僕よりランクが高かったので、他の冒険者さんを呼びに行こうとしました。

でも、その瞬間。

シアンさんはそいつらの前から跳ね上がって、頭の上を通って背後に降り立ちました。

音はなかったし気配も殆どありませんでした。

唖然とする馬鹿野郎たちはギコギコと振り返……る前に、シアンさんが雷魔法をそいつらに食らわせました。

しっかり調節された、気絶ギリギリの威力です。

それだけでそいつらが戦意喪失するのには十分で、シアンさんは真ん中の馬鹿魔術師に近づくと、そっと懐に手を伸ばしました。

そいつはもう腰が抜けて震えるのみ。

まるでシアンさんが悪者みたいでした。

勿論シアンさんは悪くないですよ!

そしてポーションを2つ取り出すと、1つを僕に渡して1つを自分の懐へしまいました。

「早く飲んでおいたほうがいい」

そう魔法で僕に伝えてくださいました。

もうこれで惚れなかったら人間じゃないかもしれない。

超かっこいいです。

シアンさんは身のこなしまでイケメンでしたし、多分剣士とかとしてもやっていけるほどの体術まで身につけてます。

能ある鷹は爪を隠すってヤツですね。

そのあとシアンさんは、ちゃんと馬鹿ゴミ野郎どもに回復魔法をかけて行きました。

本当に優しいです。

僕はシアンさんについ言ってしまいました。

「大好きです。弟子……なんて烏滸がましいですね。下僕にしてください。ゴミとして扱ってくださっても結構ですっ!一生ついていきます。」

ってね。

シアンさんは暫く固まったあと、

「……下僕は、やめてください。」

そう言って(書いて?)ついていくことを認めてくださいました!

もう人生で一番嬉しかったですね。


そのあと聞いた話によれば、シアンさんは『漆黒の魔術師』と呼ばれているらしく、パーティに加えたい輩ばかりらしいのですが、滅多に現れないそうです。

だから『蛍の迷宮』攻略に来たのは相当珍しくて運がいいことだったらしいのです。

僕は本当に幸運でした!

シアンさんにいつもついて回ってると、迷宮に滅多に現れないのは村人たちの依頼を受けているからだとわかりました。

冒険者のように魔法とか力とかを持ってないとできないことがままあるようで、ギルドにあるそういう地味な依頼をこなしていたみたいです。

僕もシアンさんを見習って今のパーティに入ってからするようになりました。

結構楽しいですよ。

父さんと暮らしていたときに培った技術も結構役に立ってます。

ありがとう。


まあそんなこんなで楽しくやっています。

これ以上書くと料金が高くなってしまうけど、本当はもっと書きたいことがあるんです!

みんないい人たちで、どうにかやってけそうです。

僕なんか下っ端の下っ端ですけどね。

今は僕の名前なんか全然有名じゃないけど、父さんのところまで届くくらい大成してみせますよ!


父さんもお元気で。




From カストル






後。

息子は本当に大丈夫だろうか、と心配になり仕事に手のつかない父の姿が、近所の人たちに心配された。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 後半ペースがガッと上がって読みづらいけど、主人公のシアンさんに対する熱い思いが伝わってきます!
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