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メインヒロインの紹介

目標・・・二十話続ける。

     一話あたり1500~2000文字を維持する。

 野崎沙耶のざきさやが天田幸樹という少年に興味を持ったのは、彼女が小学五年生の時だった。

 周囲のクラスメイトがぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる中で、一人静かに本を読んでいる。当時の彼女は、そんな幸樹の姿が大人びて見えていた。

 それから数年後、中学生となり性にもそれなりに関心を持ち始めた頃。沙耶の前で衝撃的な事件が起こる。


「聞いた?山田先生が二組の島崎さんの体操着盗んだんだって!マジキモイ!」


 あちこちから聞こえてくる教員の不祥事。女子生徒の大体数が一丸となって教員を激しく糾弾したが、そんな中で沙耶は一人別な思いを抱いていた。


(……そんなにいいのかな?)


 インターネットでそういった趣味趣向を持つ人種がいることは知っていた。

 好きな人、又は興味のある人のリコーダーを嘗め回したり、歯ブラシをこっそり使ったり、使用済みの体操着や制服の匂いをかいだりなど、前例は全国各地で見られている。

 沙耶が目下興味を持つ人物は未だ幸樹だった。幸樹は未だ教室の隅で本を読む毎日を送っている。そして、そんな彼を未だ沙耶は目で追っていた。

 沙耶が初めて興味を持った異性とは天田幸樹。それは疑いようのない事実だった。

 それから数日後、機会は突然訪れた。放課後、幸樹の机には一つの小さな袋が残っていた。

 日頃から幸樹を見ていた沙耶は、その袋が何なのかすぐに分かった。

 袋の中に詰め込まれているのは禁断の果実。襟元や裾が僅かに茶色く染まったシワだらけの体操着だ。

 沙耶はそれを手に取り、ゆっくりと広げた。女子生徒達の会話が、インターネットで見た情報が沙耶の脳裏をよぎる。


「…………」


 沙耶は禁断の果実の味を知った。

 その日を境に、沙耶の幸樹に対する興味はより一層増した。制服、靴、上 履きなど、学校で手の届きそうなものには全て手を出した。

 幸樹の行動を逐一監視しては行動パターンを分析し、陰で接触しては一人 甘美なひと時に酔いしれる。そんな日々が続いた。

 この時、沙耶は幸樹が自分にとっての『特別』だということは自覚していた。だが、それが幸樹に対する好意(?)だとは気付いていない。

 彼女がそれを自覚するのは中学三年生になったある日の放課後、日課となった幸樹の尾行をしていた時のことだった。

 幸樹は通学に利用している橋を渡らず、土手を降りて橋の下へと降りたのだ。

 いつもと違う行動パターンに興味を惹かれた沙耶は影からこっそりと様子を伺った。

 幸樹の前には一匹の子猫がいた。小さなダンボールの中で小さな泣き声をあげる小汚い捨て猫だ。

 幸樹は鞄の中からお菓子を取り出した。動物の絵が描かれたビスケットを、幸樹は一つずつ丁寧に子猫へと与えていく。

 まるでドラマのワンシーンのようだ。沙耶はそう思った。

 夕日に照らされ煌く小川のほとりで、子猫と戯れる一人の少年。

 その幻想的な光景は、近所のおばちゃんも声を掛けるのを躊躇するほどの神々しさがある。沙耶にはそう見えた。


「にゃぁ。にゃー」


 この瞬間、沙耶の中で何かが弾けた。

 幸樹が見せた笑顔は、これまで学校で見てきた笑顔とは一線を画してた。作り笑いではない、彼の心の底から笑った顔。

 加えて、普段口数の少ない、しかも他人行儀な言葉ばかりしか言わない幸樹が放った猫言葉。

 この二つのギャップが重なり合い、凄まじい破壊力を生み出した。

 沙耶は完全に萌え殺されてしまったのだ。


(ああ、これが……これが恋ですか?)


 こうして、自らの恋心を自覚した沙耶は汚い乙女妖怪と化した。

 野崎沙耶は天田幸樹を愛している。愛しい人に無償の愛を捧げる。その思いは異世界に召喚された今も変わらない。


「え?いや、あの……き、興味ないから」


 突然話しかけてきたクラスメイトに言葉を返す幸樹。彼の焦った表情を見ながら、沙耶は顔を赤らめこう思った。


(結婚したい)



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