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異世界ってスゲェェェ!!(仮)  作者: ポチでボッチなポッチポチ
ダンジョン(仮題)
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81話 頼りになるのは・・・・・・・

 このサブタイも……良いのが無かった

 今まで最大速度に達してから邪神の部屋に入ったが、今回は走る事なくゆっくりと歩いている。

 とうぜん邪神はシュンを感知してシャイニングカッターを放つ。

 真っ直ぐ白い刃がシュンの体目掛け飛んで行く。

 リべレーションソードを縦に振り、白い刃が二つに割れシュンを避けた。


「これで良いんですよね……アランさん」


 アランの姿をした邪神を見て、アランとの打ち合いを思い出す。

 何度も何度も打ち合っていく中で、アランが教えくれた。

 最初は恐怖心を無くすための打ち合いだったが、シュンが意外な程に反応が良かったため、その理由を訊かれ、危険察知スキルの事を教えた。

 それを知ったアランが、『スキル』について講義した。


『良いかシュン! スキルってのはな自分の五感を使った技の事だ! シュンの危険察知スキルと俺の持つ悪意を見抜くスキルは似ている。だから俺はシュンに教える事が出来る』


 邪神の部屋に入った途端に邪神が剣を抜いてシュンを襲う、今まで何度も剣を避けるのに苦労していたが、今度は剣を軽く受け止めてみせる。


『危険察知スキルは確かに便利だが、それは全体の一部に過ぎない』


 邪神の攻撃が息をつく暇を与えぬ様に絶えまず襲って来るが、一撃一撃を綺麗に捌いていく。


『五感を研ぎ澄まして、相手を観察するんだ。そうすれば、本当の力が開花するはずだ』


 本当の力と言われても()()()何なのか理解できない。冷静に攻撃は捌ける。まるでスローモーションの様に、いや最初からそこに来ると解っていると言った感じなのか、体が勝手に動いている。無意識とは別だ。意識はしている。

 無意識なら自分に当たらない攻撃までも捌いているだろう。今までは当たらない攻撃も捌いていたのかもしれない、紙一重とはこの事なのだろう。服の布が少しずつ削れ、鎧も剥がれ落ちて行く。


『恐怖心は捨てるな! 無謀と勇気を間違える事はするな! その中で五感を研ぎ澄ませ自分の身体を脅かす攻撃だけを捌くんだ!」


 これで良い、軽装とは言え鎧は鎧だ。確かに身を守るのには適しているが、邪神の様に一撃で鎧ごと斬る破壊力を持つ者の前では無力だ。

 それなら、動きを良くする為に鎧を捨てた方が良い。動きの妨げにならない様に調整されているとは言え、それでも妨げになってしまうのは変わらない。

 今の戦闘で妨げになる物は捨てて行く。


 鎧が全て剥がれ落ちた頃に、防戦一方から少しずつシュンの攻撃が始まりだす。

 シュンの攻撃は全て邪神に阻まれているが、今までの一方的な戦いが拮抗し始めた。

 拮抗し始めた二人の剣戟戦の音が絶えまず響き渡る。


「はっ……っは……は……」


 速すぎる剣戟戦で息を付く暇を得られず。無理矢理に小刻みに呼吸をしながら酸素を取り込む。汗が飛び散って床を濡らしていく。


 このままでは、シュンに勝ち目が無い。汗も掻かず息を切らす事も無い相手に対して、大量の汗に酸欠に陥りそうな程の取り込む空気の少なさが拮抗した状態を打ち破られ始める。


 拮抗していた時の手数は充分に多い攻防戦だが、時間にして1時間に満たないだろう。だが今までの戦いの中では充分過ぎる程の長い戦いだ。


 邪神の剣の力を利用して後ろに大きく飛び退いた。


「ぷはぁあ! ぐぅ!」


 深く息を吸った瞬間に目の前に白く光る刃が迫ってきた。その刃を最小限の動きで華麗に避け、エアカッターを放ち、それを切り払った瞬間に間合いを詰め終え、剣激戦を繰り広げる。


 息を吸う深く吸う為に何度も後ろに下がっては間合いを詰めての剣戟戦を繰り返す。


 体力の限界が近い事を悟り、安全地帯に逃げ込み休息を取る。ルーファは目を覚ましていて、置手紙に書いてあった指示に従って食事を摂ってくれたようだ。

 暫く、このやり取りが続くと告げて、新しい食事を出して置いておく。

 そして、次の戦い方を考える。


 何故魔法を戦をしないのか、魔法は確かに便利だ。ゲームやアニメの様な凄い魔法は存在する。戦略的魔法とか大量破壊魔法とかそんな感じの魔法が。

 だが、そんなのがポンポン撃てる訳が無い。そして初級だとか中級とかに分けられたとしても、『最終的に一番使える魔法は初級魔法へと帰ってくる』。

 長い詠唱を唱えて強い魔法を放つより、短い詠唱や無詠唱で放てる魔法を底上げすれば良い。

 例えば初級魔法であるエアカッターだが、最上級にはトルネードカッターと言う魔法が存在する

、相手を竜巻の結界に閉じ込めて無数の風の刃で切り刻む魔法だ。

 確かに決まれば、相手の体をバラバラにするだろう。だがそれは本当に使える魔法なのだろうか、見た目こそハデだが使えるのは格下までだ。

 実際に本当の強者と戦えば、長い詠唱中に攻撃されるか、結界に閉じ込める前に防御魔法を張られ無数の刃を防いでしまう。無数の刃と言えば聴こえは良いが、その刃はエアカッターとさほど変わらなし、術者の魔力量や魔力操作に比例して決まるため、最悪エアカッターより弱くなってしまう。

 つまり、結界と無数の刃を作る魔力を単発のエアカッターに回せば! トルネードカッター以上の威力を放つ事が出来てしまう。

 詠唱すれば一定の威力しかでない訳じゃない。それなら初歩的の魔法の威力を底上げすれば、どんな上級魔法より強くなる。

 それが出来る様になるには魔力操作が必要だ。どこで溜めて何処で放つかを熟知して初めて出来る手法だ。

 これはメイルさんの記した手帳に書かれていたレポートにあった事だ。

 『威力だけを求めるならシンプルな魔法を強くすれば良い』と。


 その言葉を信じて、シュンの使える魔法のバリエーションは属性魔法の初歩とそれの発展系の魔法だけだ。

 エアカッターやファイアーボールをベースにして、速度や威力を上げるだけだ。

 魔力操作に長けていない者から見れば、中級や上級に見えるが、正真正銘の初級魔法だ。


 それを含めて、魔法もまた謎に包まれている。魔力と闘気の真意に近づいたとは言え、解らない事があり過ぎる。『魂と肉体を定着させるノリの様な存在が魔力だと』王都で理解しても、何故それが火や風になるのかが理解出来ないでいる。


 ただ、便利だからと言う理由で使っている魔法より、職人が作り上げた剣の方が頼りになる。

 きっとメイルさんなら理解しているだろうけど、残されている魔道書にはヒントすら書かれていなかった。


「うし、行ってくる」

「気をつけて下さい、御主人様」

「ああ」


 ルーファに見送られ、また邪神との剣戟戦が始まる。何度も繰り返した剣戟。何度も打ち合いながら使った御互いのカッター系の魔法の切り傷が床や壁に残っている。

 ダンジョンは何時も修繕されてるのだが、二人の規格外の戦闘で修繕が間に合わずに激戦の痕が残りだした。

 燃え尽きる事のない闘争心で闘気を纏い、ずっと使い続けているリべレーションソードが完全に己の体の一部になり、無駄の無い剣気で戦う。

 今までは無理矢理薄くて濃い闘気を体や剣に纏わせて戦っていたが、剣が体の一部の様に扱える様になった事で、本当の意味で一体化したのだ。従来の場合は身体に纏ったと闘気と剣に纏わせてた闘気の質と量は違った。身体に纏わせていた闘気の倍近い量で剣に纏わせ、剣に合う闘気に調整して剣気に変えていたが、今回の戦いで身体に纏わせる闘気と剣に纏わせる闘気が完全に一つとなった。

 即ち剣気と闘気の境目が無くなった事を意味する。

 それだけで全てが変わった。

 身体強化のために闘気を纏うだけで剣も一緒に纏える。

 少ない闘気で従来以上の力で剣を強化する事が出来る様になり、剣に対する負荷が消えた。

 今までの方法で剣気として纏うと職人の腕が幾ら良くても剣気に耐えられずに武器が壊れてしまう。

 そして、リべレーションソードの様な一級品の剣になると、少ない闘気でも十倍二十倍へと強化される様になる。


 御互いの攻撃を捌いては反撃と言う膠着状態になった。ここまでは今までと同じだが、今回は呼吸で苦しむ事無く永遠と繰り返す事が出来た。

 呼吸の為に攻撃を弾いて下がる事をしなくなった事により、冷静に相手を見据え観察しながら戦う事への余力が生まれ、邪神の得意とする攻撃と苦手とされる攻撃を見極め、弱点を衝き始めていく。


「ぐ! はあああああ! ちっ!?」


 幾ら弱点を衝いても無難に防がれてしまう。高いレベルでの戦闘の場合は弱点となる攻撃が必ず有効打になるとは限らない。

 ネイルがアランを責めた時の様に、弱点を衝き続けられる様に戦えたのはあの(・・)邪神が剣術を理解していなかったから出来たのだ。

 

 やっぱり、あの時の邪神とは違う……いったい何者なんだコイツ


 膠着状態になって剣を打ち合えば打ち合うほど謎が深まっていく。

 自分の知らない魔法、自分の知らない剣術。

 メモリーモンスターの特性は完全に複製された魔物に完全に再現された技で襲って来る事だ。

 だが、今対峙している邪神は姿こそ似せているが繰り出す技や魔法は別物だ。

 シュンが今まで対峙した者の記憶を辿るが誰一人と当て嵌まる者が存在しない。


 剣の軌道に沿って出るシャイニング・カッター。剣の先から鞭の様にしなって切り刻もうとする白い魔力の鞭。

 本当に謎だ。斬撃が飛べばと思った事はあるから、斬撃が飛んだだけなら自分の妄想した技使えるんだと考えて理解は出来るが、鞭として使われた事がその考えを否定し続けている。


「流石に……限界か……」


 膠着し息継ぎの問題が解決したとしても、疲労と言う問題は解決しない。

 だが、もう慌てて戻る必要は無い。相手の攻撃を捌いて冷静に後ろへ下がる。部屋を出て飛んで来るシャイニング・カッターも自分の五感を研ぎ澄ましていれば、最小限の動きだけで避ける事が可能だ。

 冷静に対処出来るのだから右へ左へと慌てて避ける必要はない。

 早く休みたいと言う気持ちはあるが、急いで戻るのは疲れるだけだと冷静な気持ちで自分に言い聞かせてルーファの下へ戻った。


「お帰りなさいませ御主人様。お怪我はありませんか?」

「ああ、うん。かすり傷だけどケガしちゃうのは多めに見てね」

「はい……」

「ごめんね、俺がもっと強ければ良か――」

「いいえ! 御主人様がいなければ私は既に死んでいました」

「やめよう、そう言う話しは街へ帰ってからにしよう」

「はい」


 何度も繰り返した話し、彼女が奴隷に落ちた経緯は聞いていない。そして奴隷解放の話しは街に出るまでなしだ。安易に期待させるのは良くない。ちゃんと準備を整えてから言う事にした。


 食事を摂り少し長い休息を取り、眠ってから剣の手入れを始めポーションの在庫を確認し、戦闘前の食事を摂ろうと準備はじめた瞬間。


 パリーンと言う窓ガラスを割った様な音が聴こえた。

 

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