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異世界ってスゲェェェ!!(仮)  作者: ポチでボッチなポッチポチ
アランの想い人
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73話 言葉・・・・・・

 亭主代理のクマの縫いぐるみで、ドロシーと訓練に訓練を重ね。治療の日がやってきた。魂を身体に定着させるのは、かなりの苦行な為。ドロシーさんとスイッチしながら、やる事になる。交代と言うよりスイッチと言うべきなのだろう。何せ魔力を流す作業を途切れさせずに変わらないと行けないのだから。もし、そこでMISSをしたら、一瞬で魂が天に向かってしまう。一人で出来れば良いのだが、長い時間を使って、人一人分の魔力を流すのだから、一人でやったら身代わりに天に帰ってしまう。だからこそ、最低でも二人でやらないといけない。


 第三王女レイアとマユが立会い。シュンとドロシーで、アリールさんを治療する。申し訳ないが、流す魔力と魂を見る為に、アリールさんには、かなりの露出をして貰う事になる。その旨を伝えてあるため、部屋に着く早々、着替えはしてあった。


「シュン! 治療の為ですからね。邪な事を考えてはいけませんよ!」


 マユさんが念押しする。


「はい!」


 順番は、シュン→ドロシー→シュンの順になっている。これは、魂が見える様になっている、シュンがアリールさんの魂を逃がさずに、繋ぎ止める所から始まり。ドロシーさんが全体に魔力を塗り伸ばし、最後にシュンが隙間が無いかを確認しながら、最後の仕上げをする形となっている。


「私は、何時も行けるよ。シュン、自分のタイミングで始めるんだよ」


 ドロシーの言葉に頷き。深く深呼吸をし。


「魂は、ちゃんと心臓の位置に在りますから、問題なく作業を始めます!」


 右手を心臓に(かざ)し、魔力を少しずつ送り込んだ。アリールが纏流している闘気の量に合わせる為に、少しずつ丁寧に送っていく。魔力が弱ければ、闘気に打ち消され治療に成らず。強ければ、繋ぎ止めている闘気が消え、魂が飛んでいってしまう。だから、弱い魔力から放って行き、合う量に成るまで探していく。この作業だけで数時間を費やし、魔力と闘気が入れ替わり。シュンの魔力に合わせて脈打ち始めた。


「俺の魔力とアリールさんの魂が同調しました。これから魂と身体を定着させる為に、魔力量を少し上げて、身体に塗ります!」


 シュンは、本の少しだけ魔力量を上げ、上げた分だけ左手で塗り伸ばして行く。先ずは、心臓を重点的にやっていく。


「シュン大丈夫かね? 長くやるのは自分の命が危ないと、打ち合わせた時に言ったのは忘れて無いだろうね?」


 作業をしながら頷き。せめて心臓の部分が終るまではと続けていく。心臓への作業だけで、すっかり日が落ち、発光石が放つ光を頼りに、アリールの表情を窺う。微かだが顔色が良くなり始めている。


「後は、少しずつ伸ばすだけだ……ドロシーさん、そろそろ良いですか?」

「ああ、任せておけ」


 バトンを渡すため、ドロシーも同じ心臓の場所に手を置き、シュンが弱めた分をドロシーが放ち。


「「せーの!」」


 掛け声に合わせて、一定の量で魔力量をシフトしていく。この作業が一番難しい。下手をすればアリールさんが、二度と目を開ける事が無くなるからだ。その為、今まで以上の魔力コントロールと連携を必要する。


「後は……頼みま……す」


 シュンは、そのまま後ろに倒れマユが、シュンを支える。


「ああ、任せなさい。君が起きる頃には、粗方終わらせておくさね」


 ドロシーがアリールの身体へ魔力を流し塗って行く。少し時間が経った頃、部屋の扉をノックする音が聞こえ。


「レイア様! 大変です!」

「コニー、今は治療中よ。声を張り上げてはいけません」

「……すみません」

「話しは、外で聞きます」


 レイアの専属メイドであるコニーと共に部屋の外へ出て、レイアは用を聞くと。


「それは、本当ですか」

「はい、先ほど使者の方が入らして……城の者が慌てておりました」

「解りました、私が御相手しますと、御父様に伝えて下さい」


 コニーはレイアの言伝を伝える為に、テイラー王の下へ行き。レイアはマユを手招きして部屋の外に来るように促し。


「困った事になりました」

「困った事ですか?」

「勇者様方がお戻りなるそうです」

「勇者が!? 如何して……何かあったのでしょうか?」

「いえ、ダンジョン攻略は順調に進んでいたそうですが……内乱の噂を聞きつけて、引き上げたそうです」


 レイアがコニーに聞かされたのは、勇者が戻って来る事なのだが。戻って来る分には問題は無いのだが。今まで勇者達の面倒を見ていたのが、ガウマンと第二王女のアルフィスだ。ガウマンは余罪の追及やらで、まだ牢屋に居るが、何時処刑されるか解らない。アルフィス第二王女は王位継承権を剥奪され、母である妾と共に田舎の地に飛ばされている。


 ここで、一番重要なのが、どの様に勇者に伝えるかだ! 真実を伝えるのは勿論、上手く伝えないと、勇者が暴れるかもしれない。そんな不安で城の者が慌ててるのだ。一番良くしてくれた人物が罪人だと急に言われても、直ぐに納得が出来るとは限らない。勇者達には第一王女であるアリールの事は伝えてない。自分達を召喚した、ガウマンの姪であるアリールが死にかけて居るのに、何も大きな戦果を挙げていない事で。ガウマンが内乱を起した等とは言い難い。勇者達が、城に着くのは早くても一月は掛かる。それでも、早めに手を打つ事を執らなければならない。


 その為レイアは、如何伝えるべきが頭を悩ませ。マユに部屋に戻りますと言い、この問題と立ち向かう事になる。マユは治療が終わるまでは、妨げにならないよう、レイア様は急用で立ち会えなくなったと、ドロシーに短く伝えるが、集中している為か、ドロシーには聞こえていない様だった。


 シュンからドロシーに変わってから、十時間近く経ちすっかり、夜から昼近くまでの作業が続く。心臓の近くから塗り始め、徐々に頭まで塗って行く。魔力を流しながら頭部へ、頭部の次は肩へとゆっくりと、慎重に丁寧に、そして下腹部へ。


 シュンが目を覚ましたのは、交代してから十三時間程経ってからだ、すっかり日は昇り昼を過ぎた頃で、ドロシーがアリールの身体に魔力注ぎ身体全体に魔力を染み込ませ塗り終わる所まで来ている。


「凄いですね。ここまで終わっているとは、予想より早く終わりそうです」

「君が最初をしっかり抑えてくれたから、私は魔力を注ぎ塗るだけの作業で済んだのだよ」


 充分な睡眠と食事を摂り終え、シュンとドロシーが交代をする。


「「せーの」」


 シュンと交代した事により、ドロシーの緊張が解けたのか、ドロシーもシュンと同様に交代時に倒れる様に眠りにつく。


 シュンは、今まで流されていた魔力を綺麗に塗れているのかを確認する為に、軽く魔力を流しつつ流れるように左手で確認していく。


「問題ないみたいです。ドロシーさんが一人で全部塗った様です。マユさん、このままアリールさんの魂を定着させます!」

「わ、分かりました」


 立会人であるマユさんに経過報告をし、最後の締めにはいる。最後の締めとは魔力が漏れない為に止める事になる。血液の流れをイメージすれば、解り易いのかもしれない。

 血を流しても食事を摂ったりして血が生み出される様に、魔力もまた使った後に回復して元に戻る。そうやって魔力が保たれている。

 ここまで行なった治療行為は言うなれば輸血にあたる。そして、流れを止めるのは縫合に当る。


 輸血に似てて、最後は縫合って……針でチューーって出来れば良いのになぁ。


 縫合は難しい訳じゃない、溶接するように繋ぎ止める魔力をくっ付ければ良い。ただ、問題なのは隙間なく塗り、ちゃんと魔力を循環させる事が出来てるかだ。


 隙間があれば、魂がそこから漏れていく、隙間が多数あれば魂が四散して漏れていって取り返しのつかない事になってしまう。

 そして、魔力が循環しなければ、心臓が脈打つ事が無い。循環する速度も大切だ速すぎれば、身体が追いつかず死なせてしまう。遅すぎれば目を覚ます事が無い。


「これで、取り合えず終わりました。後はアリールさんが目を覚ます事を祈るしかないです」

「分かりました。シュンは――」

「すみません、俺は休む事が出来ません。ドロシーさんが目を覚ましても、彼女には魂が見えないので、交代する事も出来ないので、俺が寝ないように監視して貰って良いですか?」

「ええ、分かりました」


 そう、魔力が身体中に循環してるのが見えても、魂が見えないと出来ない。魂が何処かへ移動し無い様に診て、動いてしまったら心臓の位置へ戻さないといけない。


 この世界に来てから、大切な場面に何度も何度も立ち会っているから、逃げ出そうと言う気は無い。いや、本当は逃げ出したい、だけど成功した時の喜びを知っているから、後ろ向きに考える事を辞めたんだ。元の世界の俺なら『どうせ~』や『俺なんか~』が口癖だったけど、今日の俺は、そんな事を口に出す所か思う事無く、ただ救いたいと言う気持ちだけで、ここまで来れた。女神様が言っていた成長とは、こう言う事なのかも知れない。


 縫合が終わってから、半日経ちドロシーが目を覚まし様子を診に来るが、簡単な確認だけで話しが終わり、リアラが抱えてる勇者達の件について、話し合うためにドロシーはレイアの下へ向かう。


「そんな事があったんですね。勇者が戻って来るとは予想外ですね。でも当然と言えば当然か、御世話に成ってる人が大変な目に遭ってるんですから」

「そうね。でも、これは彼女が招いた事でも在るのだから、仕方ないですね」


 そう言われると、そう何だけど……第一王子と第二王女による第三王女暗殺未遂事件の影響か……二人が暗殺者何て使わずに、ただ普通に過ごしていれば、牢屋に入れられる事は無かったのに。陰謀が渦巻き過ぎじゃね? 王侯貴族って奴は厄介だね……本当にさ。


 さらに半日経ち、すっかり日が落ち。魂は心臓の位置から動かず、魔力もしっかり循環している、ドロシーが良い仕事をしたからだろう。


「ここまで来れば、目を覚ますのを待つだけですね。念の為に俺はここで寝ます」


 マユにそう言って、椅子に座ったまま寝入る。マユは、一定の時間が経つ度にアリールの呼吸と脈を確認して、異常が無いかを確認する。


シュンが起きマユと交代してアリールの調子を見て、日が昇りきって昼頃となった頃、アリールが目を開けた。その様子を見てマユが急いで、レイアに知らせに走って部屋を出る。


 アリールが一生懸命に何かを伝えようと口を動かすが、シュンには、その言葉が届かないが、目線が窓を見ている。


「外の景色が見たいんですか?」


 その言葉を聞いて、アリールが頷く。急に立たせるのは良くないのだろうが、シュンには何故か立たせてあげたいと思わせる程、彼女の瞳は真剣に伝えている。


 シュンは手を差し伸べアリールを立たせ肩を貸しながら、折れてしまいそうな弱々しい身体をゆっくり……ゆっくりと窓まで連れて行き、窓を開け外の景色を見せる。


 見える景色は、城の通路と中庭だけだ。


 少しすると、ガウマンが兵士に連れて行かれて歩いてる姿が見えた。


「お……じ……さま」


 アリールさんは、必死にガウマンを呼ぶが近くに居るシュンに出さえ、その声はやっと届く位だ、それが遠くに居るガウマンに届く訳が無い。それでも彼女、アリールは必死に何度も何度も叫ぼうとする。


 その姿を見てシュンが叫ぼうとすると、一つの優しい風が吹き。ガウマンが此方を見上げ、アリールの姿を見て、少し固まったが兵士に押されて歩かされてしまう、歩きながらアリールを見て声に出さずに口を大きく五回動かして見せ歩いて行った。


 ガウマンが何を言ったのか俺には判らない、だけど俺はガウマンが口を動かして真っ直ぐ歩いて行った時の横顔には、一筋の涙が零れた様に見えた。


 あの風は何だったんだろう……。あの最後のガウマンの姿は忘れる事は無いだろう、最後のガウマンは大きく口を動かした時の表情は、とても柔らかく優しい顔だった、あれがガウマンの本当の顔なのかも知れない。


 この日を最後にガウマンの姿を見る事は無かった。 

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