67話 詭弁
謁見の間に着くと、壊れた所は修復されていないが、除けれるモノは除けて綺麗になっていた。最後の鎧騎士との戦闘は、長引いたとは言えここまで綺麗になってるとは思わなかった。流石は王宮で働く人達と言う事なんだろう。
既に、多くの者が集まり。ガウマンは真ん中で縄で縛られ、鎮座させられ、その左右には憲兵が偉そうに、剣を突き付けている。
何で、お前が偉そう何だよ、捕まえたのバートランで、鎧騎士倒したの俺とバッカスさん何ですけど?
一通り集まったのを確認し、第三王女リアラがテイラーを呼びに行き。周りからは、バッカスを非難する声が響き渡り、テイラー王が現れたと同時に静まり返り裁判が始まった。
「ラディーユ=ガウマン公爵! 貴殿を国家反逆罪の罪で裁判を始める!」
「……」
ガウマンは抵抗する気が無くなったのか、何かを考えているのか解らないが、大人しく沈黙したまま、
テイラー王が罪状を述べて行く。
証拠となる物等は、ドロシーとマユが提出したのか、ドンドン公の場で明らかにされていく。
ガウマンの罪状は国家反逆、魔法石の密売と横流し、貴族の虐殺、リアラ第三王女の暗殺未遂、闇奴隷禁止法を主に審議が始まる。他にも余罪が在るかも知れないが、証拠が無い以上、裁く事は出来ない。
そして、ガウマンは無言を貫く中で、ドロシーとマユにテイラー王は質問していく。
ドロシーは、生徒の供述で明らかになった魔力石の件で、それに関与したフェルニア学園の教師と仲介役をしていた男の事を話す。その仲介屋は既に亡くなっているが、それでもガウマンとの繋がりがある証拠が出てきたのだと言う。その証拠とは、闇奴隷に落とされた使用人達が証人として挙げられ、王の前で証言した。マユが刻印を解除した為、刻印が発動する事なく、スラスラと証言されていく。
メイドや執事達は、闇奴隷に落とされなければ、墓場まで黙って行く積もりだったと言う。皮肉にもガウマンが彼女等を信じていれば、自分が考えていた、使用人による裏切りは起きなかったのだろう。
使用人の裏切りとは、マユに社交界へ行く為の招待状を渡す事だ。
闇奴隷の刻印は、敵意や殺意に反応するが渡した使用人は、敵意や殺意では無く、純粋に主人を止めて欲しいと言う願いだったから、発動しなかったのかもしれないとマユは言っていたが、本当何だろうか? こればかりは、調べようが無い。
「ガウマンよ、その者達が言うのは全て事実か」
「……」
「沈黙は肯定と取るが良いのか?」
「……」
それでも尚、ガウマンは沈黙を貫き通している。本当に何も言わないのが不思議だ。観念していると言えば、それまでだが、さっき啖呵を切った後だから、自分が指導者として相応しい等の言葉が一つも出ないのが、少し不自然かもしれない。勘の良い者は、そう思っている。
その一人である、テイラー王はガウマンの本心を知るべく、牢に入れて保留を決めるが、多くの貴族達は『さっさと処刑するべきだと』騒ぎ立てるが、王は一蹴し裁判を終らせ謁見の間を出て行った。
残された者は、裁判の不満を述べているが、どれも似たり寄ったりで、処刑の催促ばかりで、聞くに堪えられない言葉で溢れている。
証言をする為に呼ばれたのに、何もする事なく終ったシュンは、暫く空けていた魔道具屋に戻ろうとするが。
「小僧! 悪いが付き合ってもらうぞ!!」
バッカスに呼び止められ、マユとバートランを含め四人で、王とレイアが待つ執務室に向かい、部屋に入る。
部屋に入った途端、バッカスが王の前で膝を付き。
「此度は、我が愚息が無礼を働き、申し訳ございません! 如何なる処罰でも、受ける所存で御座います!!」
「うむ」
バッカスの息子の罪。それは、レイア第三王女の誘拐未遂だ。グレイディアは、昔からレイアに惚れていたが、レイアにはアランと言う存在が居た為に、相手にされなかった。アランを失っても、レイアの心はグレイディアに向く事は無く。闇の奴隷商を使って、自分のモノにしようとした。幸い二回ともシュンが救った為、全て未遂で終っているが、王族に対しての狼藉は極刑が決まっている、闇の奴隷商と関わっている時点で、死刑宣告は免れない。
「ヴァルデリア家の全ての者も覚悟を決めて居ります!」
「ヴァルデリア家は、昔から優秀な騎士の子が多く生まれ、代々から国を守って貰ってる故に、今回の件は真に残念でならん」
まさか?! マユさんを見ると、マユはシュンの言いたい事が解り、悲しい表情を浮べたまま頷いて肯定する。
「そこの子供が、御主の息子を捕らえた者か?」
「はっ! その通りで御座います」
テイラー王が、シュンに視線を送る。
「今回の働き、御苦労であった、愛娘を救った主に、何か褒美をやらねばならぬな」
「別に……何も要りません……王の為にやった事じゃないので」
緊張で上手く言えなかった。敬語が使えないとか、どんだけ緊張してたんだよ。しかも言った言葉、相当捻くれてるよ、俺の人生終ったかも……。
「はっはっは。王の前で捻くれるか。何が、そんなに気に入らぬのか、申してみよ!」
俺は少し考えた。下手な事を言って国を追い出されるかもしれないか。牢屋に入れられるのかを……。
「多少の無礼なら許す。御主はこの席に慣れて居らぬ様だしな」
「では、僭越ながら、全部です!」
「全部とは何だ?」
「先ほどの謁見の間の貴族も、バッカスの息子の件の罰もです!」
真実を知ろうとしない貴族が気に入らない! バッカスの息子であるグレイディアの罰もだ! グレディアがしでかした事で、死刑だと言われれば納得は行く。だが、一族が覚悟を決めるって事は、一族全てに死刑を言い渡されるって事だろ! 変だろう幾らなんでも!!
血縁者にまで責任取れって。確かにガウマンがした様な大量虐殺をしてしまったら、気持ちは解る。だけど、グレイディアがした事は許されない、だけど未遂で終わっている。だから納得できない。
「ほう、御主はフェルニアの法が気に入らぬか?」
「はい、有能な人材を自ら手放すのが、気に入りません!! ドロシーさんが言ってた強者を、自ら手放すのが変です。今回は未遂で終ってるんだから、グレイディアだけ裁けば良いじゃないですか! 法を見直さない限り、この国は発展しないと思います!」
やばい……言い過ぎた、感情的に成り過ぎて、変な事いっちゃった。如何しよう、不敬罪で罰せられるかも……。
「はっはっはっは。小僧が吹きおたっわ。この場には、我等しかおらぬ良かったな小僧。その言葉、ここにいる者だけに留めておこう」
如何やら、不敬罪は免れたようだが、他は如何なんだろう……。
「小僧、お前の言いたい事は解った。この件も終わりだ皆の者、下がるが良い」
ああ、この感じはあれだ! 王自信は法律を変えたいと思っているが無理だと言う事を告げているのか、俺の言葉を堪え、体裁を保つ為に言ったかの、どれかだろう。
バッカスは、グレイディアと闇の奴隷商の関係を調べる為に、自分の領地へ戻り、バートランは他のギルドの裏切りを調べる為に、自分のギルドに戻った。シュンとマユは、ドロシーに呼ばれている為、フェルニア学園に足を運んだ。
「そうか、未遂とは言え、王族に手を出してしまったのだから、仕方ないと言えなくは無いね」
「でも、バッカスさんは国の為に頑張っているんでしょ? だったら変だと思うでしょ、罪を犯したのは息子なのに何で、何もしてない血縁者まで、そうなるのさ!!」
「シュン、君の言いたい事は解るが、事はそう簡単では無いのだよ!」
簡単だろ! 何が難しいのさ。グレイディアだけ裁けば問題ないじゃん!! 意味わかんない!! 一々そんな風に裁いてたら、王族しか残らないじゃん!!
「フェルニアの王族に罪を働けば、その血縁者も同罪として裁かれるのは、ずっと昔から在るのだよ。それを変えると言う事は、今まで栄えてるファルニア国を否定する事に繋がるのだよ」
「はあ?! 栄えてる? 何処がですか? 栄えてたら、今回のガウマンの事件は起こりませんよ? それが原因で事件が起ったんですから!!」
その言葉を皮切りに、今まで抑えてた不満を爆発させる。
「国が安定してなくて、他国に差が付けられているから、起った騒動なのに何いってるんだ? 何処かで修正しないと、国が滅ぶのは誰だって解るだろうに……。今は解決しても、第二第三と起ってから、法を改正したって遅いだろう! それこそ、関係ない所で有能な人が消えるんだから、国が衰退化するに決まってるじゃないか!!」
マユはシュンの熱に押され、ドロシーは自分も同じ事を思っているのだろう、頷いてはいるが肯定の言葉は、口から出さずに聞いている。
「確かに、君が言う事は、もっともだね。だけど、それを成し遂げる為には、それこそ国を手に入れなければ変ええられぬよ。如何するのかね? 今度は君が国を乗っ取るのかね?」
「しませんよ! めんどくさい」
「そうか、それは激しく同意するよ。それと、落ち着いたかね?」
「ええ、まあ。多少は」
「そうかそうか、僅かな時間を過ごしたとは言え、弟子は師匠に似るモノなんだね」
「え? それは、如何言う事ですか?」
「まあ、昔の話さね。ネイルとメイルも、君と同様に言いたい事が言えない時、何時も私に不満を述べていたよ。ちょうど、今の君の様にね」
今回は、シュン一人で済んだけど、ネイル達の場合は姉妹揃っての言葉で大変だったと、ドロシーは笑って話してくれた。その話しが一段落した頃。
「あの、ドロシー学園長先生。私達を呼んだのは何故でしょう?」
「ああ、ガウマンが何故、裁判の時に、何故沈黙を貫き通したかを知りたくてね。調べたのさ、二人もあの時、疑問に思ったのだろう?」
「「はい」」
「私は、足掻くと思いました。自分が指導者に相応しいと、言う程でしたから」
「俺も同じです。それも鎧騎士を召喚する直前の言葉は、勇者に対する怒りが印象的だった」
召喚されてからの勇者が、どんな生活を送ってるのか知らない。だけど、あの怒りは我が侭の子供に対してでは無く、もっとこう違って。
「勇者召喚に対しての怒りに感じたのだろう」
「え!?」
「シュン、君は本当に顔に出やすいな、気を付けた方が良い」
「……はい」
「その考えは、間違いではないのだよ」
「ええ!?」
「ドロシー学園長先生! それって、第一王女様の事が関係しているって事ですか?」
ドロシーは頷いて肯定する。
第一王女? 確かに、今回の件で一回も耳にした事ないし、謁見の間にも現れなかった。
「今回の件は全て、勇者召喚から始まったのだよ」
マユは最初こそは驚いたが、納得が行く節があるのだろう。シュンには何の事だか解らず首を傾けた。
勇者召喚と第一王女に付いてドロシーが語る。
いつも通りって感じですね、スマフォと格闘中。




