62話 何で・・・・・・貴方が・・・・・・
バッカス……バッカス軍団長との戦は、奇跡的に死者は出なかった。バッカスの兵士もこちらと同じで、殺しはしなかった。この戦いでの一番の重傷者は、俺を庇って死に掛けたディランと、暴走したファルクスさんだけだ。そう……あの戦場には殺意が無かった。
他国との戦力差を埋める為にも、騎士、兵士を鍛える政策を目指しているのに、殺しあっては意味が無い。それは戦力が減る事なのだからだと、バッカスが率いていた兵士の、一人が話し。
俺は納得はするが、何故それを唱えているのに、大臣達と戦に挑もうとしているのかが疑問に残る。力量差はバッカス達の方に在るとは言え、敵を殺さずに終らせる何て難しい……とは言え、戦略とか解らない俺には、バッカスから聞いても、きっと理解できないだろう。
早めに王都に戻って、暗殺者と誘拐犯は、誰の差し金かを再調査しないと、バッカスが裁かれてしまう。何故なら、アランさんに軍団長の座を渡す積もりだったのだから、そんな人がアランさんの最愛の人を殺そうとするのか? アランさんが亡くなったからっと言われれば、それまでだけど。
剣を交えて解った、俺が生きていられるのは、バッカスが俺を殺すのでは無く行動不能にしようとしていたと言う事だ、俺が受けた箇所全て急所を外されいるからだ。
最初に受けた突きは、俺が下手して後ろに飛び退いたから受けた傷で、避けなければ、水槍の側面で叩かれ衝撃のダメージで、俺の意識または、行動不能を狙ったのだから。あれは、避けるのが下手だった俺のミスになる。
もし最初から殺す気なら、間違いなく俺とファルクスさんは、命を失っている。俺が勝てたのは偶然でしかない。
最後は、不意打ちも良い所だ、もっと力を付けないと、ネイルさん達に追い付けないと思い知らされたよ。
「……課題は山済み……か」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、死に欠けたのに、回復が早いねディラン」
「お前が飲ませてくれたポーションの御蔭さ。それに、バッカス兵の中に治療に長けてる人が居て助かったよ」
「本当、運が良かったな……」
「全くだ! そう言えば、お前のペンダントてさ」
「ん? 預かり物だよ」
「どっかで、見た事あるんだよな」
馬車の中で、呟くと毎回ディランに届くのか、いつも反応してくれるが、シュンは嬉しさ半分と恥ずかしさ半分で話題を替える。
バッカスが倒れ、此方に敵意が無い旨を伝えると、大人しく投降してくれた為、それぞれの見解を話し合うが、その席にはバッカスとファルクスの姿は無い。
バッカスは魔力の消費が激しくて身体が動かせない状態で。
ファルクスは無理な捨て身な戦法と闘気を練り危ない状況だ所を、バッカスが早い段階で意識を刈り取った御蔭で一命を取り止め、今は眠っている状態になっている。
ファルクスの副官のガルシア上等騎士と、バッカスの懐刀のモンド上等騎士、そしてシュンの三人で、話し合いが始まり。その結果が担いでいる王族は違えど、同国の騎士、兵士で殺し合いを避けたいと思っている事と、暗殺者と誘拐犯の事で慎重に話し合い確認しあった。
そして、明かされたのは、大臣であるガウマン公爵が他国にフェルニアを売る売国奴だと言う証拠を掴んでいるそうだが、その証拠は大臣を失脚させるには不十分だそうで、今回の戦で掴む予定だったらしい。
その方法とは戦力に差がある状態で、如何やって軍団長に立ち向かうかにあり、戦場に置いて知将武将と呼べる者すら居ないのだから、他国から助力を得ると踏んでいる様だ。国の内乱に他国が介入するのは禁止されいるが、何事にも特例がある。
そこで出てくるのが、その特例が何かと言う事だ、それはどちらに正義があるかだ! 聞こえは良いが正義なんて三者三様な訳だが。上手く利用すれば、援軍を得る事が出来る。なら、誰もが正義だと思い、誰もが悪だと思う事。それは、解り易い王族の暗殺だ!! その中で一番の効果を得る事が出来る自分物は、民衆の支持率がある、第三王女レイアとなる。
まあ。今回は大臣と繋がってるであろう国が解る前に、シュン達、第三勢力が台無しにしてしまった事になる。そこでシュンは、自分が持っているカードを明かした。誘拐犯のリーダーを捕らえた事、送り込まれた暗殺者を捕まえ、ギルドの牢獄に捕らえている事。
そして彼等の供述が嘘になる事だ。供述を取る時は、嘘を判別する魔道具を使って得たんだから、本当なんだろう。その変の矛盾に納得が出来ない限り、平行線を辿るかと思いきや、モンドが闇魔法なら出来るかも知れないと話す。
闇魔法は相手を欺く事に長けているらしいが、使い手の中でも、稀に相手を暗示で縛り、思い通りに動かせる者がいる。その方法なら確かに、魔道具が反応する事が無い。本人は本当の事を言ってる積もりなのだから、反応する訳がない。
如何すれば、その呪縛から開放出来るのかだが、流石、精鋭が揃ってるバッカス兵って言う事でバッカス兵の中に光魔法に長けている者が居り、その者なら呪縛から開放が出来るとの事だ。
王都のギルドに行き、バッカスとガルシア、そしてギルドマスターの立会いの下、尋問が始まる。そして、その供述は呆気なかった。それは、ガウマン公爵の屋敷に招かれ、そして、ある個室に入る様に促されてからの記憶が無いんだそうだ。
だが、誘拐犯の供述だけは違っていた、バッカス軍団長に頼まれたと言い張っているが、バッカスが、そいつの前に現れ。
「俺は、そんな命令なんぞ出していない」
と、言い放つと誘拐犯は驚き、誰に会い『バッカス軍団長からの命令だと、言われ実行した』と話し。
それを聞いた、バッカスの顔が強張った。
如何やら、供述を取る時の質問が悪かった様だ、誰に頼まれた。では無く、誰と会ったかと聞くべきだった様だ。この事に関しては、良く考える必要がある見たいだね。
殆どが、『誰の命令だ』『誰の差し金だ』等と、焦る余りに質問が、お座成りになってたと、ギルドマスターが反省していた。
「たたた、大変です!! リアラ王女殿下を見失ってしまいました!!」
シュン達、第三勢力の女性騎士に護衛を御願いしたのだが、逃げられたのか? 誘拐された? 行方不明に成ってしまった様だ。
「何?! 捜索隊を組んで探せ!! まだ、全てが解決してる訳では無いのだぞ!!」
「モンド!! お前達も協力してやれ!」
「ギルドの中で、レイア様の顔を知っている者も手伝ってやれ」
「「「ハッ!」」」
ギルドマスター、バッカス、ガルシアの指示で、それぞれが第三王女レイアを探す為に動き出す。
そして、俺も捜索に手伝う為に、ギルドを出ると。
「シュンも、捜索に加わるのか?」
「ディラン!? 傷は良いのかよ? ケガが治って無いだろう??」
「レイア様の為なら、この傷……」
「やっぱり辞めろよ……」
「いや、俺だって騎士だから」
「見習いだけどな……。俺は行くな。傷口が開く前にちゃんと直せよ!」
「待て、シュン。そのペンダントの事なんだけど――」
ディランの言葉を聞いて、俺は自然と何かに、背中を押されるかのように走り出した。
★
王都の中で自然が溢れている、フェルニア学園の奥地、自分の意思で踏み込まない限り、生徒は拝む事がない緑豊かで小さな湖がある場所。
「アラン……何故、貴方は私を置いて逝ってしまたのですか……私の傍にずっと居て守ってくれるって……ばか……」
「探しまたよ、姫様!!」
「貴方は……」
徐々に近づいて来る男が、不適な笑みを一瞬だけ浮かべ直ぐに戻し。
「いや……来ないで下さい……来ないで!!」
「如何したんですか姫様?」
レイアは、後退りをして下がる。男はそんな姿を見て、気持ち悪い笑みを浮かべながら、近づいて。
「嫌、離して下さい!!」
「俺が、君を暗殺の魔の手から救って遣ろうと言うんだ!!」
リアラの袖を掴み、連れ去ろうと強引に引き寄せようと、力一杯引き袖が破け、男の手から逃れ、走ろうとするが、躓き転んでしまい。男が近づいてくる
「誰か!! 誰か居ないのですか!! 誰か助けてええええええ!! アラン!!」
「アハハハハハ、馬鹿か!! 死んだ男の名を呼んでも助けに来る訳が無いだろう!! これからお前は、俺の奴隷になるんだからな、ずっと前から、お前を抱きたくて堪らなかったんだ! 闇の奴隷商を待たせてるんだ、さっさと来て貰うぞ! 姫様、いやリアラ!!」
男の手がリアラに、触れ様とした時。
「このおおおお!! 糞野郎!!」
男が殴られ吹き飛び、リアラと男の間に入った者の、首からペンダントが揺れ。
「アラン……?」
「貴様!! 俺の顔を良くも、許さん!! っう!?」
男が剣を抜こうする瞬間に、鳩尾に剣の柄が入り、気を失い倒れた。
「……ア……さん……レイアさん!!」
「……あ! シュン!!」
「無事で良かった。駄目ですよ、護衛を置いて来る何て!!」
「ごめんなさい。でも、如何してこの場所が?」
「アランさんの御蔭ですよ」
「アランの?」
「このペンダントは、魔道具だったんですよ、俺の知り合いに商人の息子が居て、ペンダントの事を教えてくれたんです」
シュンがペンダントの端を指で挟み魔力を流すと、そこには一枚の映像が写真の様に映し出された。そこには、今居る場所でレイアが笑っている映像だった。
「ここは、アランが剣の練習をしていた場所で、二人だけの秘密の場所なんです」
レイアは、涙を浮べながらシュンに話した。
「このペンダントは、レイアさんが持って始めて価値がある物ですね、だから返します」
そっとペンダントをレイアの首に掛け。後から来た護衛にレイアと男を引き渡した。
「ここで、アランさんが……」
俺は、何故か無性に剣を振るいたくなり、二振りの剣を振るい始める。一振り一振りにアーレンでの思い出を刻み直すかの様に振り続けて行く。どの位時間が経ったのだろうか。この世界に来てから、邪神との戦いまで、差し掛かる頃。
「まだ、居たのかシュン!」
「ドロシーさん」
俺は、アランさんが此処で剣の修行をしていた事と、レイアさんに取って大切な場所だと説明した。ドロシーは「そうか」と笑って聞いている。そして――。
「ここはだね。妖精が済む森だそうだよ。綺麗な花が咲き、綺麗な水が流れている場所でね。そう言われてるらしいんだ。残念ながら、私は見た事がないがね」
シュンが、レイアの下に駆けつける事が出来たのは、王都の中で森がある場所は、フェルニア学園だけで、その中で映像に移っている場所を、ドロシーに聞いたからだ。
もう少し、剣を振ったら帰りますと告げ、俺は剣を振るい続ける。「余り遅くなるなよ」と言って、ドロシーは戻った。
そして、最愛の人達との別れの所まで刻み直し、剣を収め。
「ペンダントはちゃんと、渡しましたよアランさん」
「レイアに届けてくれて有り難うシュン!」
湖の方からアランの声が聞こえ、振り向くと。そこには、笑顔を見せているアランの姿があった。
「……何で……」
「俺にも……解らないんだ」
シュンの目に涙が浮かび、そして何故アランが現れたか解らないが、あの後から王都での事を話した。
アーレンの、みんなが無事に天に帰った事を伝えると、申し訳ない顔をしていたが良かったと、笑顔を浮かべ。
ランディールの生活の事を話すと、『頑張ったんだな』と誉めてくれたが、『無茶はするなよ』と兄貴分として、注意され。
王都での話しでは、『ファルクスが迷惑かけた』と謝り。バッカス軍団長についても話してくれた。あの人は不器用で誤解され易いけど、本当は優しく自分に厳しい人で、そして誰よりも、国と暮している人達の事を考えているんだそうだ。剣で語りましたから知ってますっと答えると。『そうか』って笑ってくれた。
そして、時間が無くなったのだろうか、アランの身体が点滅しだし。
「そろそろ、別れの時間だ」
「レイアさんに、何か伝える事とか」
「……いや、いい。レイアには強い女性になって貰いたい」
「……解りました」
「シュン!! お前が何処まで強く成るのかを、近くで見て遣れないのが残念だが、遠くから見てるぞ!! 俺の自慢の弟の姿をな!!」
その言葉を最後にアランの姿が消え。何かの笑い声が聴こえ。
ごめんなさい PCが壊れてしまい、新しいのを購入するまで、チマチマとスマフォで執筆しますので、完全不定期になります。
そんな私の作品、異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします。




