59話 所詮・・・・・・パシリさ
「イチ、ニ、サン、シ…………ゴジュウ…………ヒャク」
「よし素振りは、其処までだ! 次は各自で模擬戦をして貰う!! 今、隣の奴と組め!!」
「「はい!!」」
「ノロノロすんな!! そんなんじゃ騎士に何て夢のまた夢だぞ!! ウスノロ野郎共!!」
急いで組んで、演習場で適当な距離を取って、刃が潰してある剣で模擬戦を始めるが、筋トレと素振りをやらされ、騎士養成所の騎士見習いの志願者達は疲労でいっぱいで、動きが鈍く。教官から罵声を浴びせられながら、キビキビ動こうとしていた。
「はああああ!」
「ふぅ~」
「でぃあああああああああ!」
「はぁ~」
「せいやあああ!」
「……」
何で、俺が騎士見習い何てしなくちゃ行けないんだよ、あれもこれも、3人の―。
「せいだああああああ!!」
「うお!」
マユさん、バートラン、ドロシーさんの顔を思い出して、苛立ちをぶつけて、剣を思いっきり弾き返して、相手を仰け反らせ一撃を入れてしまった。刃を潰してあるとは言え、当たると滅茶苦茶痛い。闘気を使ってないから、打ち身程度で済むが、本当に痛そうだ。相手は悶絶して、座りこんじゃったよ。
「ごめん、大丈夫かディラン?」
「……お前、ひょろい癖に、強すぎるだろ……」
相手は騎士養成所での生活を共にしている。ルームメイトのディランと言う男だ。見た目は二十代後半で、商人の三男として生活していたが、「何か違うんだよね~」とか言い出して、商人を辞めて騎士を目指しているらしい。
ディランの身体は、打ち身程度で済んだが、その体には綺麗な赤い線が出来ていた。
本当に骨とか折れてなくて良かった、本気の攻撃を本気で止めるって、難しかったよ。
「おし! 今日は此処までだ! ささっと宿舎に戻って、飯食って寝ろ!」
「「「はい!」」」
ぞろぞろ戻り、素直に宿舎に戻り夕食を摂ってから寝る者が多い中、俺はコソコソ動き回り。宿舎の柵を飛び越え、そのまま城内に忍び込み。
軍団長バッカスの執務室に忍び込んで、書類やらを盗み見ては、メモを取ったりと、息を潜めながら作業に追われていた。兵力の増強とかの計画書ばかりで、内乱時の戦闘の計画類は見付けられずに終え。
部屋を移して、大臣ガウマンの執務室にも忍び込み、同じ様に漁るが、こっちも内乱時の計画類は同じく無く、外交書類の山ばかりが並んで、何も出来ずに終る。
ある程度見たら、急いで戻り寝坊ギリギリで、朝から夜までの訓練を受けて宿舎を抜け出し、城内に侵入して書類漁りを繰り返している。こんな、生活を二ヶ月近くも続けてるのは、全部○○ギルドマスターと、○○学園の学園長のせいだ!!
経過報告は、ファルクスさんにする事になっていて、昼休みの時にメモした紙を渡しているが、会話はない。道で擦れ違って敬礼して、ファルクスさんが、通り過ぎるのを待つだけ。
それと、ランディールから来た、アスレイさんは如何やら、俺の冒険者としての実力を、証明指せる為に来たんだってさ……。
その報告の結果、騎士見習いとして潜入して、夜になれば柵を飛び越え、城壁を攀じ登ったり、時には正々堂々、正門から見張りの目を掻い潜って、城内へ侵入して、第一王子と第二王女の内乱を止める為の証拠探しに動いてます。今夜もまた、進入してます。
「隠密さまさまだね~っと」
足音が聞こえ、闇に紛れ通り過ぎるのを待つ。
「勇者がダンジョン攻略に行ってから、この数ヶ月は安泰だな」
「そうだな、バッカス様とギルファー王子の機嫌が良いから、無駄に怒られずに済んで助かるよ」
「そうだな……勇者が帰って来たら、また八つ当たりに遭うのかな」
「「はぁ~」」
成る程、あの兵士達は王子側かな? 勇者が城に居る事に、賛成派と反対派がいる。そして、どちらでもない、って言うのも居ますね。
それにしても、今日は見回りが多いな、そろそろ見付かるんじゃね? あ! やばい。隠れる場所と闇が無い、この部屋に入っても大丈夫かな? 何も音がしないし。ええい! はいっちゃえ!!
「……どうも……こんばんは……お邪魔!? ですよねー」
部屋に入ると、黒服で黒頭巾を被ってる人達が、女の人を誘拐しようとしてるのを目撃しまして……ナイフが飛んできたんですよ。
これって、あれですよね。見られてしまっては止む終えない。って奴ですよね。五人か、どうしよ……。この人達が証拠になるって事は無いかな?
「わっとととと」
急いで、女性の所まで駆け抜け、お姫様抱っこして、部屋中を逃げ回った。この女性見た事ないんだけど。メイドさんって訳でもないし。何か美人さんだし姫様かな? って事はレイアさんかな?
「貴女は、レイアさんですか? うお!」
迫り来る攻撃を避けつつ、返事を待ち。彼女は頷いた。
これで、シュンの方向性が決まり。レイアさんを降ろして、敵の輪の中に入り視線を自分に集め、ポーチから魔法玉を取り出し、床に叩きつけ強い光を瞬間的に発し目を眩ませ、その間にスタンで、気絶させて行き、縛れそうな物を部屋から見つけ縛り。
「縄を解くけど、声を上げないで下さい、お願いします」
これも、頷いてくれたのを信じ、縄と布を解いた。その縄で、命令してた奴を縛り上げた後、レイアさんの信用を得る為に、アランさんのペンダントを出して彼女の手に、そっと渡し。
「アランさんから、貴女に渡して欲しいと、頼まれたペンダントです」
「アランから……」
「俺の事については、ファルクスさんに聞いて下さい。彼が、俺の事を知ってますので。今夜、俺と出会った事は内緒でお願いします。この連中の1人は、俺が貰って行きますんで、ではでは」
誘拐犯のリーダーらしき奴を担いで、レイアさんと別れて、夜の街へと俺は消えて見せた。うん……格好良く消えるのは無理で……部屋を出てから、地味にコソコソ移動しながら、冒険者ギルドまで向かった。逃げてる俺に気を使ってくれたらしく、城門を出る頃になって、レイアさんの悲鳴が聞こえた。
無事にバートランさんに誘拐犯のリーダーを引き渡し。急いで宿舎に戻った。明日の早朝訓練……魔物の討伐何だってさ、近くの森までのマラソン付きの為、急いで寝に帰る。
「貴様ら! 今日の討伐訓練は中止だ!! 訓練は昼からだからと言って休むなよ!! 貴様等は半人前の騎士見習いだと言う事を忘れるな!! 昼迄に戻って来るなら、外出も認める以上、解散だ!!」
「「「はい!!」」」
教官殿は訓練の変更を告げて、部屋を出て暫くすると歓喜の声が響き、全員が走って部屋に戻って着替え、街へ出て行く中で、俺は訓練場の数少ない木陰で2度寝を始め、風の心地よさを感じながら夢の中へ……夢の中へ……。
「だれだよおおおおおお!! さっきから小石を投げてくる奴!!」
「起きたかシュン!!」
犯人はファルクスさんでした。柵越しから小石を拾っては投げてたよ。
「何ですか、基本会話は禁止のはずじゃ?」
「それなんだが、もう養成所に通わなくていいぞ!」
「え!? マジですか。やっと、この生活とオサラバかあ~」
「それで、次の仕事何だけどな」
「えええええええ!! もう良いでしょ開放して下さい!! この一ヵ月以上、自由の無い生活をさせられて、苦痛だったんですよ。魔道具屋の時も入れて三ヶ月は余裕で越えてますって」
「俺に言われても困るな、全ては、あの三人に言って欲しいんだけどね」
ファルクスさんは、こちらに背を向け、俺は寝転びながら話しをしている訳だが、うん、スパイ関係のドラマとかのワンシーンぽいな。ドラマとかなら、受けようとか、気を付けろよ、何て絵に成る事言うんだろうけど。
「俺、自由をこよなく愛する冒険者なんですよ! こんなに縛らないで欲しいです!!」
と、絵に成るシーンを、打ち壊した。
「でも、アランの形見を、レイア様に渡せたじゃないか」
「それと、これは話しは別です! 俺のコソコソ生活を一気に打ち壊されたんですよ!」
「名誉な事じゃないか」
「名誉なんて要りません!! そう言うのは勇者に、リボンを付けてプレゼントしますよ」
「そうか、今回の仕事はレイア様からの、依頼でもあるんだよね……如何する?」
「如何するって何ですか?」
「依頼を受けるか、不敬罪で牢屋に行くのと、どっちがいい?」
……貴方も、俺を虐めるんですね……。
俺は気の無い返事で、受けますと答え。昼前に騎士養成所を辞めた。まるで身元引受人の様に、マユさんが来て養成所の残りの授業料を一括払いして、俺を馬車に乗せフェルニア学園まで向かった。学園に着くまでは、眠りに付いて、僅かな至福の時を過ごす。
そんな至福な時間は直ぐに終わり、学園の会議室の椅子に座り、久しぶりの御茶と御菓子を堪能しながら。バートランを筆頭にフェルニア王国のギルドマスター達が内乱の事で話し合いをしているが、別に戦に参加する訳では無く、住民の避難に関しての会議だ。
本当なら騎士や兵士達の仕事だが、その大元同士での戦いが始まるのだから、まともな避難誘導等できるわけが無いだろうっと言う理由だ。
マユさんは、話しに参加はせず。今後の商人達の動きを、先読みする為に聞き役に徹している。
ファルクスが何か偉い人と後ろに立ってるし上に、フェルニア中の冒険者ギルドのマスター勢揃いして大切な話しをしている中で、寛いでる俺って……って言うか……この場に俺、必要なくね? 必要ないよね?
何で大切な場所に何時もいるんだよ俺……。
問題は、いつ勃発するか何だよね、今かもしれないし、一年後かもしれない。勇者達がダンジョン攻略を終えて戻れば、内乱は起こらずに済むらしんだけど。ダンジョン攻略の平均は全盛期である強者の時代では、早くて三ヶ月、遅くても一年だそうだけど。今の時代だと早くて一年、遅くて五年だそうで。全く読めない状況です。
悪い言い方だけど、内乱が起こるなら早めに起きて欲しい。起こらないなら良いんだけど。この緊張状態だけは何とかしたい。って所かな?
「さっきから、御菓子と御茶を飲み食いして、寛いでるシュン!! お前の意見を聞かせて貰おうか!!」
「ふぇ?」
何で俺に振るのバートランさん!! 俺ただのDランク冒険者ですよ……何処で道を間違えたんだ!!
「ふぇ? じゃない。曲りなりに邪神と剣を交えたのだろう? お前の事はアスレイから聞いたぞ! 一人で凄い事してるじゃねえか。何がDランク冒険者だ!! ランク詐欺でギルドを追放するぞ!!」
周りの視線が一気に集まってるし。内緒にしてねってお願いしたのにな……裏切ったなアスレイさん!! ナイトスコルピオンとか、内緒に処理してくれるって言う約束は、何処へ行ったんですか!!
アスレイを睨むと顔を背けられたし。しょうがない、言ってみるか、駄目だったら、この件から堂々と逃げれるし。
「あー、内乱起せばいいんじゃね?」
俺は爆弾を投下した……。
4コマ漫画は、何故高いのでしょうか……一冊1000円以上って……と言う、お財布事情と戦いながら、執筆してます。
来月からは、稼げる時期なので、更新速度が遅くなると思いますので、今のうちに、ドンドン進めて行きたいと思います。
これからも。異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします!!




