57話 勇者って見世物なんだ
ドロシーさんから聞かされた、百一年前の出来事。それは、歴史上最大で最悪の邪神討伐。それに加わり討伐を果たした、ネイルさんとメイルさんの話だった。ネイルさんとメイルさんから聞いた話しだから、飛び飛びで、ところどころ不鮮明だったが、聞いただけで吐き気がする程、悲惨な出来事だった。
「それで、強者が減ったのは解りましたが、それと強者が育たないのが、如何結びつくんですか?」
そうだよ、世界中のS~SSSランクの冒険者と、それに並ぶ騎士や兵士が挑んだのは解った。そして壊滅したのも……だけど、それと強者が育たないのは、理解できない。
「それはだね、解らないんだ。確かに、強い奴は強い。それは事実だ。だけどね、百一年前より前の時代は、本当に、そこら辺に居たんだよ。豊作の次期と言っても良い位だ。邪神が現れれば、直ぐにでも討伐隊を組む程にだ。だけど、今は邪神の真実の名を見つけ、力を更に弱めなくては、戦えない程に落ちてしまったのだよ。ああ、直ぐに討伐は例えだ、そんなに滅多に邪神なんて現れんよ」
でしょうね、そうポンポン現れたら、神様いなくなるんじゃね? その前に、この世界が無くなるよね?
「で? あの生徒会長さんが、Bランクなのは、今の世界のバランスとして普通だと?」
「そう言う事だ。だから今は、こう言う分け方をしている、クラスと」
「クラス? ですか? ランクとは別って事ですよね?」
「ああ、ランクは依頼達成や功績で上がるが、クラスは単純な戦闘能力で分けられるっとは言っても、人間いやヒューマンと言うんだったな、今の時代は、ヒューマンは他の種族と違って寿命が短い、だからクラス分けが出来ないのだ、何せあの強者の時代を生きた者は、もう生きていないのだから、ヒューマンで強者の仲間入りするのは、早くて三十代半ば位だからね。例外として勇者召喚された者か天才位だろう」
むむ! 俺は異世界の人間だけど勇者じゃないから弱いよ? しかもスキルセットは、しょぼいの取ったし。
「ヒューマンでSクラスの人は、存在するんですか?」
素朴な疑問だけど、一応ね。
「ヒューマンでSクラスは、勇者を除けば、フェルニア王国では冒険者のギルドマスターのバートランと軍団長のバッカス位だろう」
獣人、エルフ、天使族では、それぞれ種族で現役で活躍してるのは十人前後だそうだ。Aクラス冒険者は、それなりに居るそうで、ヒューマンもまた、Aクラス冒険者と分類される者は他の種族に、劣るものの存在するらしい、じゃあ何が多いかって、DクラスとCクラスだそうです。一番多いランクも同じなのでランクと変わらない。ここで、生徒会長のランクが例に出てくるのか、BランクのDクラスって感じかな?
「あの、生徒会長さんは如何やってBランクに上がったんですか?」
ギルドの依頼でBランクが受けれても達成出来ないんじゃ意味が無い。
「彼女の場合は、統率力で上がったんだよ、Dランクのメンバーとパーティーを組み、コツコツと功績を積み上げてね。組んだDランクのメンバーは、あぶれ者だから彼女だけが、貯まっていったんだ、何せ学園はある意味、冒険者ギルドだからね、依頼を受ける実習があるし、補習としても使われているからね、生徒会に引率を頼む事が多くてね」
OH それは、それでラッキーだね。お金も貯まって、功績も貯まるって。
んで、強者の話しは、まだまだ続くが殆どが、昔は~凄かった等と言う話しが続いた。
そして話しが進みに進み。
真面目な表情になり「忠告をさせてもらうよ」と前置きされた。その内容は。
今の王都は危ういんだそうだ。先ほど挙がったバッカスと言う軍団長が強い事を良い事に、その息子が馬鹿やってるらしい。さらに、グレイディアを取り巻く貴族連中も厄介なんだそうだ。バッカス自信、親として、何とかしたいとは、思っている様だけど、息子に甘いみたいだ。
「バッカスの息子グレイディアは、街に頻繁に現れるから、関わるな」
その言葉は、今まで以上に強調され。俺は本当にヤバイ奴なんだと理解し。「注意します」と返事をし、学園を出た。昼前に訪ねてから、すっかり長話をして、日が落ちていた。
明日は、勇者が祭りに参加する日だ! 何でも、パレードをするらしいが大変そうだね。俺は見物する側だから、お祭りを満喫させて貰うよ。
…………花見の席取りの様に既に場所取り合戦が、始まってる……これって、もしかして勇者を観たいが為に、頑張ってる人達か……この様子だと、じっくりとは見物できなそうだよ。
「あら? シュンじゃない、如何したの?」
「あ! マユさん」
学園から、勇者が通るであろう道に沿って歩いていたら、たまたまマユさんと、ばったり出会った。勇者を見る良い場所が無いかと、マユさんに訊ねたが、何処も同じだそうで。
マユさんは、勇者が通る道の傍で、出店を出そうとしてる人達を、見て回ってるそうだ。何でも、パレードの邪魔に成らぬ様にと、勇者側の関係者から御達しが来たそうで、厳しく見回ってるんだってさ。何でも、この場所取りの段階で、商人の戦争が始まってるらしく、一触即発の状態で何時、暴力沙汰になるか解らないんだそうです。
それにしても、商人ギルドのギルドマスターで伯爵様なのに、自ら回ってるんですか……。
明日の昼前に、商人ギルドに来るようと去り際に言い残し、マユさんは忙しそうに他の場所を見に回っていった。
宿に戻り、何時も通りコツコツと調合してから眠りに付いた。
遅めに起き、朝食を摂り終え、外に出ると、人でごった返していた、勇者が通る道だけが綺麗に作られ、王国の騎士や兵士達が警備に当たっている。新兵さん達は成れていないのだろう、戸惑いながらも役目を果たそうと、意気込んでいる。
約束通り商人ギルドに行き、受付でマユさんに来ように言われたと伝えると、3階にあるテラスに通され。
「お! 来たか待っていたぞ!!」
「ここからなら、のんびり勇者達の姿が見えますよ」
冒険者ギルドのマスターのバートランと、商人ギルドのマスターのマユさんが、お茶を飲みながら椅子に座っていた。
まさか、バートランさんが居るとは思わなかった。それに、俺みたいな奴が偉い人と一緒に居ていいのかな? と思いつつも、流されながらお茶を飲みつつ、勇者が通るの待っている。
バートランさんと、マユさんの会話は、今の王都のあり方に付いての話で、正直ついて行けなかった。王が病に臥せる前は、しっかり統治されて居たらしいが、今じゃ第一王子と第二王女の勢力に、二分されているとの事で、内戦になったら結果が見えてるんだってさ。それは、王子側にはバッカス軍団長が付いてるからだと……ドロシーさんが昨日言ってた、Sクラスの力を持ってる人だって。
「あれ? 第三王女のレイアさんは?」
「彼女が立ち上がれば……本当は良いんですけどね」
「そうだな! 彼女は国民の支持率が高いからな!」
「じゃあ、何で立ち上がらないんですか?」
「「それは、君が一番知ってるだろう!!」」
「???」
「思い人を、最悪の形で失ったのですから……同じ女性として、痛いほど気持ちが解ります……」
「あ!」
レイア様は、二年前から体調を崩し部屋に閉じ篭ってるそうです。その理由は、事ある度に出てくる、あの場所、アーレンが関係している。俺が王都に来た理由も、それ関係な訳で……騎士なのに門番してた優しくて面倒見が良い、イケメンな御兄さんのアランさんって、レイア様とそんな関係だったんだね……ペンダントを渡すって事は、それなりの関係なんだとは、思ってたけど……アーレンに集まってる人達って実は、凄い人達なのかな……鍛冶屋のおっちゃんが造ったリべレーションソードだって、傷の一つも付か無い、頼れる相棒な訳で……出だしが凄く怖かったけど、終ってみると最高の人達でいっぱいだったんだな……。
「! いらして下さったんですね、ドロシー学園長先生」
「お! ドロシー婆も呼ばれてたのか」
「サカキ伯爵殿、君は商人ギルドのマスターなのだから、先生は要らんよ。それとバートラン、婆とは何だね、少しは彼女を見習ったら如何なんだ、君は学生の時から――」
……俺、場違いじゃね? ねね、場違いじゃね? 何で俺、来ちゃったのかな……。
ドロシーさんが、バートランさんにグチグチと言っている、間に周りから歓喜の声が響き渡り。
「お! 勇者達が来るぞ!! 見なくて良いのか? ドロシーば……学園長!」
馬車の椅子に座ってる、男女4人の高校生が周りに手を振りながら、頑張って笑顔を見せていた。何で高校生か解るかって? 制服着てるからね。
「あんな弱そうなのが勇者とはな……あんなんで、ダンジョンを攻略出来るのかよ!!」
「私には、ただの御調子者にしか見えませんね」
「ノーコメントで」
「異世界から召喚された勇者には、それぞれ特別な力が備わっていてね、その力はSクラス程の力があるそうだよ、実戦経験が薄いのが問題らしいがね」
ドロシーさんが、勇者について説明していく。途中で流石ドロシー婆と聴こえ、説明が止まり痛そうな悲鳴が聞こえたが、聞こえなかった事にして、勇者達を眺めた。
俺の目に映った勇者達は、まだゲームの世界か何かだと思っているのか。それとも、貰ったスキルセットで苦労が無いと思って、余裕を持ってるのか……死線を掻い潜れる勇気が彼、彼女らに本当に有るのかと、問いかけたく成る程の、甘ったるい雰囲気にイラっとして。見るの辞め目の前の御菓子を自棄食いした。
勇者達が通り過ぎても、熱気が冷める事なく、祭りは続いていった。
「さて、勇者を見物し終わった訳だし。あの件の話しでもするか!」
「そうですね。その為に、ドロシー学園長先生に御足労を掛けるように、御願いしたのですから」
そして、テラスにいる偉い人三名が、深刻そうな話を始め様としている。
「えっと、じゃあ勇者達の姿を見たので……俺はそろそろ――」
「待て! お前に頼みたい事があるんだ!!」
「はい?」
バートランさんに腕を掴まれ、引きとめられ。
「申し訳ないのですが……シュンには王都の為に、いえ、フェルニア王国の為に、働いて欲しいのです」
ええええええ!? それこそ、勇者の仕事じゃね!!
むむ、なかなか、捗らないです。誘惑多くて、困っちゃいます。別の小説書きたい病が襲ってきて、大変です。
でも、今ある作品が終るまで、書かないと誓いつつ、この小説では使えないネタを使おうと暖めてます。そう思えるのも、皆様の御蔭です。本当に有り難うございます!!
そんな私の作品、異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします!!




