43話 あの背中を目指して・・・
何とか、いつも通りの長さになりました。
何でだよ…何で3匹もいるんだよ…
「エアカッター!! …っう!?」
突然の3匹の出現で、慌ててエアカッターを放つ。詠唱後に叫んだせいで、言霊を無力化してまい、小さいナイトスコルピオンに弾かれてしまった。
まずい…1人で3匹は厳しい。瞬間的に逃げる事は出来ても、最終的に捕まるのは解りきってる。なら、如何すれば良いのか。 この広い荒野の中で、しかも岩山が乱立していない、この場所で!! 考えろ…考えるんだ! 無い知恵を振り絞れ!! 生き残るために!!
「く!?」
小さい蠍が2匹が、シュンに接近してハサミで、攻撃してくる。ハサミの稼動範囲とパターンは、前回戦った固体と変わらない、違うのは速さと重さ、そして大きさだけだ! 避けれない訳じゃないが、避け続ける事は出来ない。きっと、薄皮1枚を剥がすかの様に削られる事だろう。
「!? くぅ…」
急いで、蠍の尻尾を受け流した。まさか、尻尾で突いて来るとは思いも寄らなかった。デカイ方にも注意を払って居るが、攻撃はしてこないが一定の距離を保って付いて来ている。
こいつら親子か!? 前回倒したのは、メスかオスか解らないが、それは倒してから考えよう。で!! 今は狩りの練習中って所か…。チャンスは、あのデカイ蠍が本格的に動く前に、このチビ蠍を倒す事だ。
「はぁあああああああ!! !? っち…」
1匹に攻撃のチャンスが生まれ、1撃入れようとしたが、もう1匹の蠍の攻撃が、俺の攻撃を回避に変えさせる。
くそ!! 回避するので精一杯だ。1匹だけなら、まだ何とか、攻防として成り立つかもしれない。だけど2対1じゃ、そんな形に持っていく事は出来ない。
回避、回避、回避…………ひたすら回避。
今出来る事は、観察する事!! ただ、それだけしか出来ない。以前戦った事がある固体との差を、冷静に、焦らないように比較して行く。蠍2体の、ハサミは両方とも、同じ大きさだ! だから、どっちが利き腕かは解らない。だけど堅さは均等で、攻撃範囲も同じの筈だ、攻撃して見るまでは、堅さに付いては保留にする。なら尻尾は如何だ! 以前の固体は、横を通り抜け様とする時だけ、尻尾で攻撃してきた。だけど、こいつらは、平然と正面に居る俺に向かって、尻尾の針で突いて来る。っと言う事は、あの砂球を発射してくる事は低いと見て良い筈。砂球が来る事への警戒は薄いと見よう。あれは、いくらかタメが居るはずだから、その時に警戒すれば良い。だけど、俺の世界の蠍は毒針が有る事で有名だ。突いて来る以上、毒がある事だと思った方が良い。
今、俺の中で出た結果。小さい蠍は、尻尾の針に細心の注意を払う事。ハサミの稼動範囲は狭いから、上手く側面に回り、尻尾を回避して攻撃を入れる事だ!
「…!! これで、どうだああああああああ!!」
イメージ通り、2匹がお互いフォロー出来ない様に外側に回り、尻尾を回避して1撃を入れた。
「ギシャアアアア!!」
「浅かったか…」
入れた1撃は、確かに通ったが、皮膚を3cmほど傷つけた程度だった。
剣気が弱かったか…だけど、これ以上、闘気を剣に集中させたら、速度が落ちるから、回避が疎かになる。一か八かの攻撃で1匹倒しても、まだ2匹いるんだ。しかも、そのうちの1対である、特大のナイトスコルピオンが!!
闘気の量を上げるしかない。だけど、そんな方法は、ネイルさんだって知らない。普通に闘気を練りその比率を移動させる事が出来ても、絶対値は決まっている。1つの方法を除いて……。
それは、怒りで我を忘れる事。いわゆるバーサーカー状態だ! 成ってしまうと、闘気の量が跳ね上がるが、その代わりリバウンドが激しい。下手をすると一生立つ事が出来なくなる、だから厳しい目で真剣に絶対しちゃ駄目だって言われた!!
蠍に対しては、怖いと言う恐怖は生まれても、怒りを抱く事は無い。ましてや、殺すと言うより逃げたい気持ちの方が強い。
また、回避、回避、回避……と回避が続くが。
「くぅ……!?」
焦りなのか、調合の時からの疲労なのか解らないが…動きが鈍くなって、蠍達の攻撃が掠り始め出す。
闘気の質…量…どうすれば…どうやれば…魔法は、詠唱するのに時間が掛かるし、乱撃を避けながら、集中しないと使えない。無詠唱だと効果が無い。闘気頼みの状況になっている。
「たく!! 痛いなあああ。もう!!」
……こんな怒りで上がってたら、誰でも闘気で苦労しないよね……。
考えろ…考えろ…俺に出来る事を…思い出せ…思い出すんだ…ネイルさんとメイルさんの教えを…最高で最強の師匠の教えを!!
「くそ!? この!? くぅ!? はあああああ!!」
2匹の間を駆けて行き、蠍が転回する前に側面に回り、攻撃を加えるが。どれも、傷が浅い。
ダメージが通らない訳じゃないんだ。あのデカイのが、俺に襲い掛かる前に、せめて1匹だけでも倒すんだ。そうしないと…。
初めて闘気を使った時は、ゲーム感覚だった。だから、何故使えるのか!? 如何やって練り出して纏ってるのか!? 解ってるのは『戦う気持ち、闘争心』ただ、それだけだ! ちゃんと理解していれば、今こんなに苦労していないのかもしれない。
「ぐ!? …ぐは!?」
今まで見守っていた巨大蠍が、急に砂玉を発射してきた、咄嗟に剣で防御したがタイミングが合わず、飛ばされ背中から地面に激突した。その衝撃で、今まで考えていた事が、分からなくなり、頭の中がグチャグチャに混乱した。
もう…嫌だよ…こんな世界…本当は、怖くて怖くて堪らないし…元の世界に帰りたい。必要とされない人間だとか伸び代が有るって、女神様が言ってたけど。もう、どうだっていい…剣と魔法の世界に憧れてたけど…危険があって、大切な人が出来ても…すぐ別れが来るし。もう嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ! …………死ねば元の世界に帰れるかな……痛くないと…良いなぁ。
3対1に成り、全然倒せる気がしなくなり。全身の力が抜け、ただ立ってるだけで、完全に全てを諦め、死を受け入れようとした。
なのに何故!? 勝手に身体が動き、蠍2匹の攻撃を受け流し、更に攻撃をしている。
何で…俺…諦めてるはずなのに、こんなにも身体が動くんだ。何で闘争心を失っているのに、何故? 闘気を纏ってるんだ。何で、こんなにも身体の奥底から温かい何かが、込み上げて来るんだ。
「ネイルさん…?」
俺は左手でネイルさんの剣を抜いて戦っていた。リべレーションソードに剣気は無く。純粋な職人の腕だけで磨き上げられた力だけで、蠍の攻撃を凌いでいる。そうして生まれた隙を突くかのように、剣気を纏わせた左手の剣で蠍を斬っていく。
何度もピンチになると、ネイルさん達と過ごした日々を思い出して、解決策を見出していたが、この戦いでは思い出しや、夢じゃなく身体が勝手に動いたのだ。
「まったく…本当に最高の師匠達だよ。弟子のピンチを毎回助けてくれるんだから…」
本当に、俺って情けない。『シュン君は、本当に泣き虫さんなの』って、またメイルさんに言われるちゃうじゃないか。こんなにも簡単に諦め様としてる、こんな俺を見たら、2人は何て言うかな…。
さっきまでと違い、戦いを有利に運んでいた。闘気の量が増えた訳では無い。心にゆとりが生まれただけ、ただ、それだけで戦況が変わった。
小さい2匹の蠍のハサミを掻い潜り、ハサミの付け根を目掛け、剣を振るいハサミを切断していき、その勢いのまま、足と尻尾の付け根も切断し、胴体だけを残した。青色の体液を流しながら、悲鳴をあげている。
残るは、特大のナイトスコルピオンのみと成った。
「はあああああああ!!」
不思議だ、あんなに不安で怖かったのに、その感覚が懐かしい感じがした。ネイルさん達が、邪神と戦ってた姿を! あの背中を思い出す!
あの美しい剣撃は、今でも鮮明に覚えてる。俺も、いつかは、ああなりたいと思った。
あの時のネイルさんの、闘気は、ふわふわしたのを纏うのではなく。綺麗に自分を包んでいた。
自分の闘気をどう纏っている何て、解らない。でも、如何纏いたいかは、決まっている。
今は、如何強くなりたいかもだ。
だから、俺は勝てる。最高の師匠達の本気の戦いを、この目で見たのだから。
「もっとだ! もっと速く!! そして、無駄を無くすんだ!!」
とてつもなく重いであろう、ハサミの攻撃と尻尾の攻撃を、紙一重で回避して行く中で、纏っている闘気を限りなく薄くしていった。
身体への闘気を弱めるのでは無く。闘気の質を変えていく。それだけで、今までとは桁違いな程、身体が強化され、今まで経験のした事がない世界が広がっていた。
ナイトスコルピオンの攻撃が、スローモーションに見え。以前オークとの戦いで経験した事があるが、それとは、違い。今の状態は、気持ちと思考に余裕があった。
回避が出来ないかもしれないと、焦るかもしれない攻撃を、冷静に剣で防ぎ、力で押し返した。
今まで業で受け流したりして、防いでいた攻撃を、純粋な力で押し返せるほど、今のシュンの闘気は力に満ち溢れている。
「はあああああああああああ!!」
小さいので解った、付け根を斬れば簡単に切断出来ると。焦らず足を1本と危なげなく切断する。
ナイトスコルピオンが悲鳴を上げている隙に、また1本と切断した。
また、避け難いハサミと尻尾の攻撃が襲うが。
「はぁ!!」
ネイルさん直伝の業で相手の隙を作る弾き業で、ナイトスコルピオンを垂直に立たせる程、大きく仰け反らせ、柔らかい皮膚を露にした。
「うぉぉぉおおおおお!!
柔らかい皮膚を目掛け、ひたすら斬り続けて行く。右ての剣と左ての剣、いまだ同時に闘気を纏わせる事が出来なくても、斬る瞬間だけ闘気をシフトさせ倒れる直前に蹴りを入れて退避した。
ナイトスコルピオンは、青色の体液を大量に流し、絶命した。
剣を鞘に納め。その場で座り込み。無事に土埃の結界が消えたのを確認し、一息ついた。
「終った…これで…ゆっくり…休め!? つぅ!? いってぇ~」
身体の関節と言う関節が悲鳴を上げ、今まで我慢していた、傷の痛みまで共鳴するかの様に体中でアピールしていた。
少しずつ動かして、ポーチに入ってるポーションを取り出そうとするが、痛みと疲労で思うように動かず、意識が朦朧とし始め気を緩めたら、簡単に手放してしまいそうで、必死に眠る事を堪えた。
「シュンさん! シュンさん!!」
「ああ…ブレ…ポーチの…ポーショ」
ブレンさんが、約束通り迎えに来てくれて、安心して意識を手放した。
いやぁ本当に、楽しくて難しいですね。
上手く説明できてるか不安な文章で本当にすみません…。
2~3話でランディールとお別れ出来るといいなぁ~。
こんな私の作品ですが、これからも異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします。
次話は、第44話 え・・・あ・・・うそ・・・なにこれ




