表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ってスゲェェェ!!(仮)  作者: ポチでボッチなポッチポチ
ランディールの街
35/87

35話 不安と夢

 ゆっくり執筆中

 メイルさん達の仲間を呼ぶ為に、暗号を考えないと行けないのだが。良い考えが浮かばず、薬を調合出来る人を呼ぶ為に、メイルさんの調合書ノートを読んだ。


 何気なく手に取り読んだノートに、当たりが在ったのが幸いし、暗号の文章が決まった。俺は急いで文章を書き、何度も何度も読んで不備が無いかを確認し、起きて直ぐギルドに行ける様に急いで眠りに付いた。


 眠りから目覚め、朝食を摂る事無くギルドに向かい、ブレンさんに暗号を書いた文章を渡した。ギルドマスターの了承を得たら、真っ先にギルドの情報網を使うらしい。


 これで、俺に出来る事の一つは終った。あと俺に出来る事は、調合出来る人が何時でも、作業に移れるよう、材料や必要な物を集める事だ。急いで宿に戻り、食事を終え、屋根裏部屋に戻り引き篭った。


 メイルさんに渡された時は、直筆の魔法書に目が奪われていたが、今回は、その時に渡された大荷物の袋を開いた。中は本でビッシリ詰っていた。

 収納魔法の応用で出来ているのだろうか、袋の大きさに見合わず、書物だけで、パッと見で100冊はありそうだ。

 

 俺は、その中で調合書と、調合に付いて書いてある手帳を選別して出し。闘精練病の治療薬に必要な物を探し、メモを取った。

 

 最初に読んだ病気のページに、特効薬の調合の仕方が書いてあり、調合に付いて知識が無い俺には解らない事が多々あった。メイルさん直筆の、調合基礎手帳と初級編、中級編、上級編を使い、解らない所や用語を逆算しながら解いて行く事になり、闘精練病の内容と特効薬に必要な物を理解するのに、5日も使ってしまった。


 材料で必要な物は、ポーション、激情薬(狂心苔を調合)、沈静薬(鎮静花を調合)、感情薬、等など・・・沢山あり過ぎて、さらに時間が掛かりそうだが、一番の難所である狂心苔を採取できたのは良かった。


 手始めに、聖水を確保する事にした。協会か魔道具屋に行けば、御手軽に買えるから最初に決めた。

 聖水は回復薬など、口に含む物を作るのに使う事が多く。聖水が作れるか作れないかで、調合師または、魔道具屋を経営できるかが決まるらしい。


 食事を取りながら、カチュアに協会か魔道具屋の場所を聞いたのだが、返ってきた返事が―――。

「協会? 協会なんて、この街に無いわよ。魔道具屋も2年前に潰れたわ!」 

「協会が無いの!! 普通にあると思ってた」

「何も知らないのね・・・協会って国の許可が無いと建てられないのよ。それに神官に成らないと、その許可も取れないわ。変わりに一定の距離で建てられてるし、神父様達も街や村を回ってくれてるわ」

「そうだったんだ・・・で、一番近い教会って何処?」

「そうね・・・馬車で急いで、1ヶ月って所かしら?」

「い、1ヶ月!! 遠すぎだろそれ!!」

「しょうがないじゃない、一番近くに在った協会が無くなっちゃったんだから」

「無くなったって!?」

「アーレンに決まってるじゃない!」


 また、アーレンかよ・・・どんだけアーレン優遇されてんだよ。このままじゃ、また何か躓く度にアーレンに在ったとか、続きそうだな。しょうがない、ブレンさんに材料とか相談しつつ決めて行くか。


「で、魔道具屋は何で潰れたの?」

「私も何でかは、知らないんだけど、確か・・・アイシス魔道具店って名前の店が在ったのよ、この宿屋と同じブロックに」

「ぶーーー!! ケホケホ・・・アイシス魔道具店って犬耳の女性が経営してた?」

 覚えがある名前が耳に届き、口に含んだハーブティーを吹き出してしまった。

「汚いわね!! ちゃんと自分で拭きなさいよね。そうよ、犬耳で綺麗な女の人だったわ。確か、夫婦で冒険者をやりながら、魔道具屋も経営してたはずよ。今は何してるのかしら」


 いそいそと、吹き出したハーブティを布巾で拭いて。カチュアに礼を言ってから、ブレンさんの下へ向かった。まさか、アイシスさんが、魔道具屋の亭主だったとは。材料さえ揃えば、自分で調合しそうだな・・・と、ほんの少し期待してしまった。


 ブレンさんと、話し合った結果、必要な物は、市場に出回ってる物が多く買い揃える事が出来るらしいが、感情薬の様な薬としてでは無く、材料として市場にバラバラで売られているらしく、店を回りながら材料を集めて薬にしないと行けなかった。


 俺は、またもや部屋に篭る事になった。今度の作業は、○○薬って付く調合品の原料を紙に書いて行く事になった。書き終わるのに、3日も掛かってしまった。


 確かに・・・金貨20枚近く貰わないと、やる気出ないな、それと手間が凄い。ある程度完成した薬品を作る必要があるし、持っていないのなら、原料を集めて調合するとか大変過ぎ。


「ああ!! もう!! 何やってんだよ俺・・・」


 シュンの苛立ちは、増えていく一方で、ついに昼下がりの今日、屋根裏部屋で、不満が出始めた。彼の不満は無理もない事で、仲直りする為に始めたのに、その兆しが全く見えない。


 狂心苔を手に入れてから、一度もフェイミィと話す事は無かった。顔を合わせる度に、顔を背けられ姿を消してしまう。ブレンに助けを求めたが、シュンの話しをすると逃げてしまうらしい。だが、その逃げが、嫌悪感からではなく、罪悪感から来ている様に感じたと、ブレンは付け加えて説明をし、シュンも頷いて納得はしたが、目に見える結果が無いのは精神的にも辛い。そもそもシュンが、そこまでする義理は無いし、狂心苔を欲していたのは、彼女である。それを取って来ただけでも、充分過ぎること。


 それでも、シュンが頑張れるのは、ただ一つの支えが在るからだ。ネイルとメイル、そしてアランとの出会いと別れ、返せなかった思い。その事だけで今日この日まで、腐る事なく頑張れたが、薬の件に関しては、7割以上シュンが負担している。ここで逃げても誰も文句は言わない等と、シュンの心の中で幾つもの葛藤が始まった。


 例え上手く事が運んでも得られるのは、フェイミィとの仲直りだけ。調合師は治療費を貰って潤い、自分は高価な狂心苔を無料で譲り多額な潤いを逃すだけに成っている。その思いだけで作業が止まり、部屋ではベッドに寝転がって眠りに付き。外では、エプロンネコ亭などの飲食店でスイーツを堪能したり、食べ歩きをし、長い休憩を取り始めたりと怠ける行動が多くなって、10日で終る作業が20日も掛けて完了した。


 俺はブレンさんに、材料を全て集めた事を報告し、調合師は来ないのかと訪ねた。その返事は、未だ報告が無いとの事だ。それに、国のギルド全てに連絡を届かせるのに半年かかり、世界中になると数年はかかるとの事だ。俺はここで、重大なミスをした事に気付いた。ネイルさん達は何か特別な情報網を使ったからこそ、人集めに暗号を使ったのだと・・・。俺がやった事は、多分だが伝わる人には伝わるだろう。ただし、いつ伝わるかが解らないのだ。


 ブレンに、その事を告げたが。

「まだ、希望はあります!」

 っと言いつつ、一瞬だけ暗い顔をした。そんな、ブレンの表情を、見逃さなかったシュンは、ブレンの顔を真っ直ぐ見れず。その場から逃げ出したくなり。ブレンに今日の所は、一旦帰ると伝え、宿に逃げる事に成った。


 俺は、何で何時も、浅はかなんだ。考えが足りなさ過ぎる。薄っぺらな考えで希望を見せ、相手を振り回し、そして決定的なミスで、相手を絶望させてしまう。これじゃ・・・とんだペテン師じゃねーか。いや、それより性質が悪い!! 


「くそ・・・」


 ベッドの上で、やるせない気持ちに悩まされ続け、不安だけがシュンを襲っている。希望は確かにあるかもしれない。一番近い街に居る、メイルさん達の知り合いである、調合師が文章に気付いて来てくれるっと言う希望が。でも、それは不可能に等しい事。冒険者の中に調合師が居るとは限らない。っと、シュンの芽生えそうな期待を、すぐに不安が否定してくる。今まで堪えていた涙が流れ始めた。


「ごめん・・・フェイミィ・・・ブレンさん・・・アランさん・・・ネイルさん・・・どうしたら・・・うう、メイルさん、くぅ・・・うう」


 シュンは、泣き疲れて眠りに付いても、眠りながら涙を流し、枕をグッショリ濡らしていく。


 また、夢の中か・・・でも今回は、来た事がある場所だ!


 シュンが、見ている夢の中は、何度も、お茶を飲んだ。メイルさんの魔道具屋の奥の部屋だ。そこには、お茶運んできたネイルと、お菓子を持っているメイルだ。その2人の視線の先には、シュンが座っていた。


「俺が2人!! どう言う事!! しかも、俺が泣いてるし」

 2人の前で泣いた記憶はあるけど、魔道具屋で泣いた記憶なんてないぞ。何で・・・!?


 考えようとするが、その前に、話が進んでいった。


「シュン君は、泣き虫さんなの・・・でもねシュン君、人の為に泣ける泣き虫さんは、とっても優しい証拠なの」


 メイルさん・・・俺は、そんなに優しくないよ。1人で旅するのが怖いから、フェイミィに仲間になって欲しいって、最初は考えていたんだから。しかも、フェイミィがエルフだから・・・メイルさん達の変わりにって・・・思ってしまったんだ!!


「シュン、この先、辛い事があるかもしれない、そして立ち止まるかもしれない、それは悪くないわ。でも、立ち止まった後が大事よ! その後に前を向いて、歩けるかが重要よ!!」


 ネイルさん・・・無理だよ。前に進む何て、俺には出来ない。


 それにしても、もう1人の泣いてる俺は、何故喋らないんだ。ただ泣き続けてるだけだ。幾らなんでも、反応しろよ、俺!!


「!? あれ?」

「どうしたんだ? シュン?」

「アランさん!?」

「おいおい、何を驚いてるんだ? 一緒に飯食いに来たんだろ」


 今度は、アーレンのエプロンネコ亭でアランと食事をしていた。今度は相手と会話が出来る。


「話しの途中だったな。何で俺が騎士に憧れたかだったな。それはな、守りたい! 救いたいって言う感情に従って動けるからだ」

「感情に従うですか?」

「ああ。俺は昔、ある騎士に助けられた事が在るんだ。顔も名前も知らない騎士、そして、俺の命と引き換えに・・・その騎士は・・・」


「そんな事が・・・」

「だから俺は、彼の様に損得だけで動かない、騎士に憧れたんだ」

「でも。俺は考えが何時も足りなくて、結局不安にさせて―――」

「そんな考えは、駄目だぞ! 誰だって失敗はするし。失敗できない時だってある。失敗を考えれば、不安だけが襲ってくる。しかも、そいつは強敵だ! 打ち勝つ事が出来るのは自分だけさ」

「難しい事・・・言いますね」

「ああ、難しいな。だけどな、立ち向かえる者だけが、夢を叶える事が出来るはずさ」

「夢ですか?」

「シュンにもあるだろ? 夢の一つくらい」

「俺には・・・」

 確かにあった、だけど忘れてしまった。この世界に来てから・・・思い出す事が出来ない。でも、心の底から熱いものが確かにあった筈なんだ。だから就職もせずに、バイトをして頑張ったんだ・・・だけど、何一つ思い出せない。

「無いのか。だったら、見つけてみろ。そいつを見つければ、きっと不安なんてフッ飛ばしてくれるはずだ」

「でも、見つける前に、不安が襲って来たらどうすれば・・・良いんですか」

「その時は、やろうとした事を頑張って見ると良い。不安に立ち向かう為にもな。もし成功すれば、その先に待ち受ける困難にも闘えるさ」


 その言葉を残し、アランの姿は消え。眩い光にシュンは包まれた。


 「あれは・・・夢だったんだよね・・・」

 シュンが目を覚ますと、窓の隙間から日の光が射し。それが顔に当たり起された様だ。


 夢の中で、3人に励まされる程、情けない俺だけど・・・


「解りました・・・アランさん。何処まで出来るか解りませんが、頑張って見ます」


 俺は、メイルさんの調合手帳の『基礎編と初級編』を手に市場へ向かった。

 いつも、異世界ってスゲェェェ!!(仮)に、御目を通して下さり有り難うございます。

 だんだん、私自身が忙しくなって、次話の投稿が、スムーズに出来なってしまいました。

 これからは、毎週日曜日に一話ずつ投稿して行きたいと思います。


 これからも、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ