32話 デザートライオン
遅くなりました。
巨大蠍との死闘が終わり、満点の星空に癒され、今日の朝は穏やかだった。初日の様な激しかった砂塵は、鳴りを潜め、弱々しい砂埃が荒野に舞っていた。
今までとは違い、風の無い場所を見付ける事が出来た。風に吹かれて舞っている砂が、その場所だけを、まるで見えない壁が有る様に避けていた。触れると確かに湿っている、間違い無いドルディサンドだ!! 資料に書いてある通り、水分を多く含んでいる砂は、握ぎると水がタラタラと落ちた。袋がいっぱいに成るまで集め袋を収納し、他の場所を見つけては袋に詰め、また収納を繰り返した。
他にも、鉱石等を資料の内容に載っていた通りに、苦労をする事も無く、無事に採掘する事が出来た。今日一日の活動は、今までの遅れを取り戻すかの様に、夢中になって日が落ちるまで作業を繰り返した。
今日でドルデ荒野に来て6日目の朝。指定以来の採取を終え、念願のデザートライオンの狂心苔を取る事にした。デザートライオンの生息地は、荒野と砂漠で特定の住処と呼ばれる場所が無く。一つの集団事に決まったルートが存在して、ぐるぐる巡回してるらしい。見付けるには2通りしかなく、足跡を見つけて後を追うか。その決まったルートを見付け、来るまで待ち続ける。その、2択だそうだ。
やっぱり、聞き込みは重要だよね。馬車を預ける時、村長さんに話を伺って置いて助かった。森とか道なら、だいたいの予想は付くけど。デザートライオンの様に、寝床を必要とせず、その場で寝るタイプを探すのは骨が折れるよ。要するにポイントを知ってれば良いって事でしょ? 村長さんが言うにはドルディサンドが取れる所を通る事が多いから、足跡は直ぐに見付か・・・・・・ん!? 今、俺・・・ドルディサンドって・・・。
おかしいぞ!? だって、昨日さんざんドルディサンドを探して採取活動してたけど・・・足跡なんて無かったぞ!? ・・・・・・そうか!! 昨日まで吹き続けていた、あの激しい砂塵が足跡を完全に消したのか・・・そうだよね・・・冷静になって考えれば、誰でも解る事だったよね。
辺りを見回すと、自分が歩いた足跡だけがポツリと残っていたのだ。昨日ドルディサンドを採取したポイントを、一つ一つ見て行き足跡が付いていないか探したが、俺の足跡すら残っていなかった。方法はポイントに山を張り、来るのを待つしか無いが、馬車を預ける時、10日分しか払って居ない。残り4日だが、村に戻るのに2日かかる。6日目の今日は、足跡探しで使ってしまった。デザートライオンとの接触を計る事が出来るのは、わずか1日だけだ。
「参ったな・・・」
今日、回ったポイントを思い出しながら、一番来そうな場所を、無い知恵を絞って考えながら、眠りについた。早めに寝た事が幸いしたのか、日が昇る前に目が覚め、勘で来そうなポイントに向かった。
「頭が良ければ、良い方法が思い付くんだろうけど・・・駄目だな・・・ほんと」
ため息交じりで、呟きながら隠れる場所を探していた。
本当に来るのか不安になるが、探し回って入れ違いに成る何て事は避けるべきだっと言う考えが強く頭の中に過ぎった。そもそもデザートライオンの強さを知らないし、仮に強いとしたら、体力を残して置かないと逃げる事も戦う事も出来なくなる。村長さんに訊いても、強さに関しての有力な情報は得られなかった、荒野を渡るの際には護衛を付けて冒険者任せだから、良く解らないそうだ。
隠れるのに丁度良い大岩を見付け、その影に隠れた。
潜めるのは良いけど、暇なんだよね。周りを警戒しながら、来るのか判らない相手を待つ何て、面白くもない、しかも命に関わる事だから、なお更だ。きっと他人からは、こう言われそうだ、『何で、やらなくても良い事を、やろうとするの?』ってさ。確かに思う事はあるけど、仲直りしたいんだフェイミィと、だって俺は、返せなかったんだから、アーレンで世話になった人達に。だから早めに返す事にしたんだ。
自己満足だって事は解ってる。許してくれなくても良い、でもちゃんと謝りたいんだ。
日が昇ってそろそろ半日は経っとうとしているが、一向に来る気配すら無い、ひたすら待ち続けて足元には大量の汗が落ち、水分を吸った砂の乾きにくさが、その時間を物語っていた。
デザートライオンの情報を、もっと集めてから来るべきだったな・・・こんなに苦労するとは思わなかったな。そろそろ何処か、適当に寝れそうな所を探さないと、ギリギリまで粘るとしても、朝にはこの場所を発たないと、村に間に合わないかもしれない。期限以内に戻らないと、ギルドに『消息不明届け』出されちゃうよ。もちろん、馬車は乗ってかれちゃうから、帰りは徒歩だよ。それだけは絶対に、何が何でも阻止したい! 行きは馬車でも急いで4日も掛かったんだ、それが徒歩って―――
「辛すぎますよっと」
ポロっと声に出しながら、見張っているポイントが何とか見える、岩山を見つけ、適当な高さまで攀じ登り、程よい割れ目を見つけその中に入り、ゴロンと寝転がって見張った。
目覚ましが有れば良いのに・・・それと、仲間が欲しいよね。1人で見張りとか、厳しいよ。いや、それよりも寂し過ぎる。今後の事を含めて、仲間を集めないとか・・・危険がいっぱいだし、実力のある人に依頼として同行して貰う事にするか。邪神と戦える位とか言わないけど、逃げれる位の人にお願いしよう。
手帳に仲間っと記入して丸で囲って直ぐに眠った。
月が高くなった頃、模様したくなり起床し済ませ、ポイントを見ると何かがモソモソ動いていた!
「あれが、デザートライオンなのかな? ここからじゃ、ちょっと見えないな」
遠くて、しっかり確認できない、気付かれないように接近して行き、確認出来る距離まで行くと、確かにライオンが居た。デザートライオンって言うだけあって、砂と同色だった。
さて、如何したものか・・・数が多いな、苔は尻尾に生えてるらしいんだけど・・・もっと接近しないと確認できないな、だけど、これ以上近づくと絶対に気付かれるし・・・この集団の中に苔が生えてる奴が居なかったら、凹むな・・・
突然、風向きが変わり、向かい風が追い風に変わった瞬間、デザートライオンの集団が一斉にこっちに向いた。
「げ!? 気付かれた!!」
さっきまで居た、岩山まで走る事にして、走ったが半分の距離を残して先回りされた。鬣があるライオンが集団の後ろから顔を出し、吼えると、先頭の連中が牙を剥き出して、飛び掛ってきた。俺は、リべレーションソードを抜き、グリーンウルフと同じ様に、回避と同時に首を刎ねに行ったが、グリーンウルフと同じ様には行かず、胴体を浅く斬る事しか出来なかった。
「こいつら、グリーンウルフより遅いのに、強い」
連携が凄い、攻撃する余裕が最初しかない。ウルフなら、集団で着ても回避と攻撃の1セットで首を刎ねて終るのだが。1体1体が、お互いを補っている様だ。回避だけに専念し、仕切り直しに戻るまで回避を続けた。グリーンウルフで慣らした、この世界に来て最初に自己流で覚えた無駄の少ない回避、そしてネイルさんとの修行で磨きに磨いた回避術よって、4足歩行の獣に対しては余程の事が無い限り、ダメージを負う事は無い。
俺は回避を繰り返して行きながら、ひたすら観察をして行った。尻尾に苔が生えてる奴を探しつつ、確実に1撃で仕留める事が出来るチャンスと、襲って来ない鬣があるライオンへの注意も忘れずに、ひたすら避けた。しだいに、激しく動いていたライオンの方が疲れていき、連携が崩れ始めた、最初に胴体に傷を付けたライオンから、首を刎ねて行た。
「やっと1匹目・・・!?」
鬣のライオンが、口を大きく開き咆哮と共に砂の玉を吐き出した! とは言っても巨大蠍の出した砂の塊に比べたら、対した事が無い。冷静に回避した。避けた直後に、後ろからライオンが飛び掛って来たが、それも回避して首を刎ねた。
「2匹目」
仲間を失い、連携が乱れ隙が大きくなって行き、後は楽に倒して行った。
「これで半分!」
ライオン達の戦意が薄て行くが、1匹だけ逆に凶暴性を増して行く奴が居た。鬣があるデザートライオンだ。砂の玉の威力と大きさが上がって来ている。
ああ! これは、あれだ仲間を失うと、強くなるって言う奴か・・・・厄介だなこりゃ・・・でも、こいつらしっかり、ボスを守ってるから、迂闊に飛び込めないぞ!!
「これで、11匹目だ・・・・あ!? やっちゃった・・・」
やばい・・・取り巻き全部倒しちゃったよ。さっき自分で言ったよね・・・ボスの鬣ライオンが強くなって行くって。
「!?」
残された、1匹のデザートライオンが、凄まじい咆哮と共に飛び掛ってきた。俺は咄嗟に横に数メートル転がって回避した。
ズドンっと言う音と共に、デザートライオンの着地地点が大きく抉れ、その穴からデザートライオンが飛び出て来た。その爪を見ると、凄まじい闘気が爪に集まっていた。今まで戦った魔物の中に闘気を使う奴はいなかった。
「我、放つは――く!?・・・うぐ!!」
再び、飛び掛かって来たが、今度は回避が間に合わず、咄嗟に剣で受けた。衝撃で持っていかれそうに成ったが、何とか力を逃がした。また、飛んで来ると思いエアカッターを詠唱するが、今度は真っ直ぐ風を切るかの様に、走って来た、これも不意を疲れ、剣で受け止めるが、余りの速さに牙が届くか如何かの所で間に合った。
今なら背中に有る、もう一振りの剣で、こいつを倒せるはず。と思いネイルさんの剣を抜き放ったが、
デザートライオンの体に弾かれてしまった。
「どうし・・・て」
リべレーションソードには、剣気がちゃんと乗っているのに、左手の剣には剣気が全然乗っていなかった。蠍と戦った時は、確かに剣を2つ使って戦ったのに。
今は、それ所じゃない! 原因は後だ、このまま受け止めた状態は不利だ。ネイルさんから貰った剣を泣く泣く手放し、エアカッターを放ち、デザートライオンを倒した。
「へ? 嘘だろ・・・・」
何気なく、ただ牽制の為に放った無詠唱のエアカッターで倒せてしまい、拍子抜けしてしまった。急いで、鬣が付いているデザートライオンの尻尾を確認して、苔が付いているの見つけた。
デザートライオン達を収納し、急いで村に戻った。まだ、夜明け前だが、今眠ったら、起きれない気がして、早めに村に向かった。
やっぱり、情報って大切だな・・・今度から、聞き込みをしてからだ!
何とか、期限内に村に戻る事が出来たが、2日間程休んでから、ランディールに戻った。
執筆って本当に難しいです・・・
次話の投稿は日曜日に成りそうです。
これからも、異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします




