21話 己の無力さに・・・
のんびり、ゆっくり執筆中
アランさんと邪神の戦いの事を聞いた俺は、ショックで言葉を失った。
あの、アランさんが、そんな事をする訳ないないと、思いたかった。
俺の脳裏では、クエスト帰りで、エプロンネコ亭で食事をしながら、「今日はどうだったのか?」ってニコニコしながら聞いてくる、アランさんと、ちょっと無茶をして怪我して帰った時には「どうしたんだ!!」って心配してくれる、顔が過ぎった。
初めて来た街、初めて優しくしてくれた人が、そんな訳ないって、何度も何度も思った。
だが、話してくれたのは、メイルさんだ、赤の他人だったら絶対信用しない、だけどネイルさんと、メイルさんが嘘を言う訳が無い。
2人は、あんなに厳しく、優しく育ててくれたんだ。
「そんな・・・・嘘であって欲しい・・・嘘でしょメイルさん・・・」
涙が溢れ出した。
今度は、メイルさんが俺を抱きしめ、頭を撫でてくれた。
俺にとって兄と思えるアランさん、姉さんと思えるネイルさんとメイルさん。
どちらも信じたい。信じさせて欲しい!!
「ネイルさん・・・とアランさんに・・・会いたいです・・・・」
俺はこの目で確認したくて、必死にでた言葉。
「ごめんね、それは無理なの・・・シュン君を連れて行っては、守った意味が無いの・・・」
俺の気持ちは、メイルさんには通じている。
でも俺もメイルさんの言う通り、行っても何も出来ない、ただ死ぬだけだ!!
「う・・・うう・・・・うぅぅ・・・」
俺は、メイルさんを強く抱きしめ自分の無力さに、泣いた。
俺は何て無力だ!何て情けないんだ!大切な兄と姉に思える人達に、何もしてあげられないなんて!!
「シュン君は、無力じゃないの・・・・カチュアさんの事に気付き守ったの・・・」
「でも・・・俺・・・一番良くしてくれた・・・人達に何も返せてない・・・」
少しして、気持ちが落ち着いたわけでは無いが、俺は、急いでランディールに向かう事を提案する!!
「メイルさん、これから急いでランディールに向かいます!」
泣きに泣いた俺の目は赤く腫れている。
「シュン君、夜の森は危険なの・・・」
「解ってますよ! でも一人で戦っている、ネイルさんに加勢出来るのは、メイルさんだけなんだから!! 俺は一刻も早くこの場から離れなければ、メイルさんは、行けないのでしょ!?」
俺に出来る事、それはメイルさんをネイルさんの下へ、一刻も早く向かって貰う事だ!
「本気なの・・・」
「ええ、本気です・・・」
「・・・わかったの」
メイルさんは、俺の決意を汲み取ってくれた。
カチュアを起して、俺達はクルワルの森の中に入り、2年前まで整備されていたであろう道を歩いた。
「メイルさん、あの地形が変わってる所に・・・・」
「そうなの・・・あそこに邪神がいるの・・・」
ネイルさんとアランさんの名を出さないのは、俺の決心を鈍らせ、あの場に行かせない為の配慮であり、暗黙のルールになっていた!!
カチュアは、ただ黙って、ついて来てくれている。それだけでも、俺にはあり難かった。
あれこれと説明を迫られれば、俺は感情に任せてカチュアに八つ当たりをしていたに違いない。
森の出口が見え始めた!!
「メイルさん、ここまでで、良いです!!」
「わかったの」
メイルさんが最後の挨拶言わんばかりに、抱き締めてきた。俺もそれに答え抱き締め返した。
メイルさんは、目にも止まらない速さで、ネイルさんの下へ走っていった。
「カチュア、急いで森を抜けよう。」
「・・・わかったわ・・・」
カチュアの手を引いて、森の出口へ向かうが、グリーンウルフにゴブリンが襲ってきたが、俺は無造作に剣を振るって倒した!
今まで、襲ってこなかったのは、メイルさんが守ってくれたからだって理解できた。
森を抜けると、そこには数人の兵士がいた。
俺達が森から抜けた途端に、一斉に皆、剣の柄に手を置いていた。
「止まれ!! 貴様ら、何処から来た!!」
隊長なのだろうか? ぶっちゃけどうでもいいので、話しを進めた。
「俺はシュンと言います、この子は、アーレン唯一の行き残りのカチュアです、この子の、保護をお願いします」
「アーレンだど!! おい、シュンとやら、アーレンは今どうなっている?答えろ!!」
「アーレンは、邪神に乗っ取られた、今、Sクラス冒険者のネイルさんとメイルさんが、戦っています」
「剣聖殿と大魔導師殿が!!」
兵士達は、邪神を言葉にしたら、皆が、三者三様に、うろたえた。
「そうか・・・ランディールまでは送ろう、詳しい事は、そこで聞こう!」
俺は、怒鳴り散らしたい程、怒りが込み上がって来た!!
何故、ネイルさんとメイルさんの加勢に行ってくれないのか!! と。
それは、分かってる・・・この人達は強くない・・・俺よりは強いけど・・・この人達でも2人の足手まといにしか、ならないのだと。
カチュアも、兵士に保護され馬車に乗せられた。
「カチュア、俺もここまでだ・・・」
俺は、兵士に聴こえないよう、カチュアに別れを告げた。
「シュン・・・もしかして・・・」
「行く・・・3人の下に!!」
「貴様!? どこへ行く!!」
俺を馬車に誘導した兵士が他にも、何か叫んだが、俺にはその言葉は届かなかった!!
「ごめんなさい・・・ネイルさんメイルさん・・・俺は・・・それでも3人に・・・」
兵士達は連れ戻そうとしたが、隊長と思われる男に静止させられ、追っては来なかった。
俺はクルワルの森の中に、また飛び込んで行った。
時は戻り!!
メイルが、シュンを助けに向かった直後!!
「フッフフハハハハ、間に合う分けなかろう、アーレンはアンデットで溢れ返っておる、時期に貴様の弟子もアンデットの仲間入りだ!!」
「私の・・・いえ、私達の弟子よ、メイルが駆けつけるまで持ち堪えて当然よ!!」
ネイルは、邪神がアランの体に馴染む前に、攻撃に転じたいのだが、今までの戦闘で、闘気も魔力も回復していない為、動けずにいる。
邪神もまた、体が馴染むまで、ネイルに攻撃が出来ずにいる、そこらへんの1流冒険者程度なら、相手に出来るのだろうが、ネイルは別格だった、さっき侮っていて痛い目にあったのだ、邪神も気持ちを切り替えていた。
お互いが睨み合いを続け、回復したとは言えないが、戦闘を再開させた!!
「ハァアアアア!!」
「フ、我は剣が不得手だったのだが、使えん男と思っていたが、役に立つではないか!!」
「ぐぅ!?」
ネイルの剣は、あっさり弾かれ、反撃された!!
「剣が不得手とか、何言ってるのかしら」
そう、アランの体を乗っ取る前から、ネイルの攻撃を剣で防いでいたのだ、それが、今は不得手じゃ無くなった、それを意味するのは、かなり厄介になった、と言う事だ。
「メイルが来るまで、持つかしら・・・この邪神・・・隙が無い・・・」
打ち込めず、動きを止めてしまった。
「どうしたのだ? 来ないならこっちから行くぞ!」
邪神が、真っ直ぐ突っ込んできた、その動きには、何の小細工もなく、単純な攻撃だった!!
その太刀筋は美しかった! 剣術の心得が無い者でも見惚れてしまう程だ!
「!?・・・うぅ・・・くぅ・・・かは!!」
ネイルも、また太刀筋に見惚れ送れて剣で受け止め、剣を弾いた。
ネイルは、防戦一方になってしまい、防ぎに防いではいるが、徐々に捌き切れなくなり、鎧は傷付き、服はボロボロに切れて行く。その連撃の中で、上手く剣で受け止めその衝撃を利用して、距離をとる事に成功した。
「はぁ・・・・はぁ・・・・ふぅ~、私が教えた事なのにね・・・駄目な師匠ね・・・」
ネイルは息を整え、闘気を練り上げ様とするが、思うように練り上がらなくなって来たのだ。
シュンに教えた事それは、誰もが知っていながら、誰も知らない基礎中の基礎だ。
『闘気』それは『闘争心』!!
『闘気』なくては強靭な肉体を得ず!!
如何にスキル高かろうが『闘気』なくして、強敵に立ち向かえない!!
『闘気』それをを剣に込めなければ、『剣気』は生まれず!!
『闘気』は『武術』に於いて絶対普遍の理!!
それ即ち『闘気』極めし者、『神を超える力』を得る者成り!!
「どうした!? 闘気が、練れんようだが? それ程あの弟子が気になるのか?」
「何度も言わせないで、私達のシュンは、生き抜くし、メイルも向かってるわ!!」
「ほう、たいした自信だ!! ならこれなら如何だ!!」
またも、黒い魔力がアーレンに向かった!!
だが、先ほどの様に変わった変化は起きなかった。
「何をした!!」
「フフ、我は今、貴様と戦って楽しいのだ! だが、闘気が弱まってる御主に興味が湧かんのでな!! アンデット等に、入り口で罠を張るよう指示を出したまでだ!!」
街の住民全てが、アンデット化しているのだ! その全て入り口に集まるとしたら、何万人もの大群になる、いくら突破出来たとしても、1人では無事では済まない。
ネイルの頭の中では、何万もの大群にシュンが襲われ、その体に噛み付かれてる映像が、脳裏に浮かんだ。
「あなたわああああああああ!!」
ネイルの闘気が、怒りによって強く練り上げられた!! それはネイルの望む闘気ではなかった。
「フハハハ、それで良い、しっかり我の相手をし、満足させるが良い!!」
ネイル攻撃は、怒りによって単調になり、それは、ただ振り回しているだけだった!!
それでも、邪神を喜ばせるには十分な程だった。
「よくも、よくもおおおおおおお!!」
「そうだ、もっとだもっと、もっと我に見せるが良い、貴様の絶望した顔を堪能した後、貴様が転生できぬよう、無に返してやろう!!」
怒りに任せて闘う、ネイルは反射的に致命傷だけは避けてるが、駆け引きもない攻撃を、休む事なく続けていく。
それに対して邪神は、冷静に剣を捌き、ネイルの体を斬り付けて行く。
その攻防とも呼べない戦いが、ひたすら続いていく。
「我は、もう飽きたわ!! 他に無いのなら、ここで終わるが良い!!」
邪神の剣に、闘気と魔力が剣に集約され、剣を横に薙ぎ払い、その軌跡にそって、魔力で造られた刃が斬撃となって飛んでいった!!
「う・・うぅ・・ぐぅ・うう!!」
ネイルは剣で受けるが、その力に押され、吹き飛ばされて行った。
吹き飛ばされた事と、剣術の可能性を見て、剣聖としての血が冷静さを取り戻させてくれた。
「邪神に、剣気と魔力を融合させた、剣術を見せて貰うとは・・・」
「我はもう剣のみで、戦う事に飽きたのでな、これで終わらせてもらうぞ!!」
その言葉と共に魔力が跳ね上がり、全てを吹き飛ばそうとした時!!
「ぬぅ!?・・・・」
邪神の目の前で『エアバースト』が炸裂し、放とうと練った魔力を防御に回してしまった!
「はぁ、はぁ・・まにあったの・・・」
息を切らせながら、メイルが走って、ネイルの下へ辿り着いた。
「ネイル!!」
「シュン君は、無事に森を抜けたの!!」
「メイル・・・ごめん・・・私、もう限界みたいだわ・・・」
「姉さん、私も・・・・なの」
「本当に、これで最後よ、メイル!!」
「死力を尽くすの」
「そうね。心残りは、もう無いわ」
「それ以上は、贅沢なの。」
慢心相違の2人は、最後の決戦に挑むため、闘気を魔力を全て練った!!
初めての街編も、残り僅かになりました。
これも、皆様が、お目を通してくれたり、お気に入りや、評価して下さった御蔭です。
これからも、執筆の方も頑張って行きますし、手直しの方もして行きます。
これからも、異世界ってスゲェェェ!!(仮)を宜しくお願いします!!




