日本語
俺は廣瀬ハルオ。この町では名の知れた名士だ。『外国人に間違った日本語を使わせる』これが俺の生きがいである。この前など留学生に「ふがいない」という言葉を「親切だ」という言葉の最上級の表現だと教えてやり、学校で恥をかかせてやった。
さて、今日うちに来る奴は昔俺が色々と世話をしてやった劇団員のジョセフだ。俺のことを信用しているから何でも言うとおりに話すだろう。よし、演劇終了後のステージ挨拶で恥をかかせてやる。俺はジョセフに目いっぱい下劣で卑猥な言葉を教え、その場で復唱させた。
当日、俺は演劇に招かれ、最前列でジョセフが恥をかく瞬間を待った。ステージが終わってキャストが並び、いよいよやつが話す番だ。さあ、行け。絶望を味わえ。
ジョセフは静かに話し始めた。
「皆さん、今日は私の恩人、廣瀬ハルオさんからいただいた素敵な言葉を紹介します」