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最後の切り札 1

前話の放課後から話は始まります。薫が徹・菫・葉月を呼び出したみたいです。

side薫



「おー、ちゃんと来れたな。帰りは皆車で送って行くから問題ないだろ?はっちゃんは俺が睦月にメールしてあるから何もしなくてもいいよ」

「なぜに、ここなんだ?兄貴」

「とりあえず、ある程度の密室でないと困るって事?」

「かおちゃん……」

「とりあえず、19時までは皆でここにいることになってるから、食事も兼ねてしっかり食べような」

「兄貴……金は?」

「ん?そんなの気にすんな。すう?大丈夫か?」

「うーん、なんとかってところ?どうしていいか分からなくって」

菫はそう言うと、俯き加減になる。気持ちは分かる。先生にいきなり眼を付けられ、盗聴器まで机に仕込まれてる。

そんな俺が、弟たちを呼び出したのは、自宅とは逆の方向のカラオケBOX。

しかも、駅前だと学校帰りの生徒の目に入ってしまうから、住宅地の中にある店舗だ。

立地条件のせいだろうか、この店はかなり防音が施されているのだ。

俺は三人にメニューを手渡す。この店は県内で展開している外食チェーンが母体になっているのでフードメニューが豊富なのも売りの一つ。

ファミレスと居酒屋のメニューが仲良く同居している。もちろん、ドリンクはソフトドリンクだけど。

俺が選んだのは、ソフトドリンク飲み放題の3時間600円のコース。

食事は別料金だが、ファミレスの方も低価格が売りなので、俺一人がたっぷりと食べても二千円はかからない。

高校生3人がいても合計で一万円位だろう。なにより、ここは俺のアルバイト先。スタッフ割引が適用されるから実際にはもっと安く済む。

チビ共には教える必要はないけれどもな。



それぞれが食べたいものをオーダーしてから、ようやく本題に入ることにした。

「あの後、俺はゼミ室で情報を収集したんだが、唯一分かった事と言えば、黒木は和風な人が好みで着物を着る人がいいらしいぞ。すう、十分思い当たるだろう?」

俺がそう言うと三人はあっと顔を顰めた。幼稚園から学園育ちの俺達は、普通の学校とは少しだけ変わっている。

学園生活を過ごしながら、自然と帝王学を学んでいくんだ。だから、校外学習という名の研修のような授業も多い。

その為か、高等部を卒業した卒業生には、早くから起業して、いわゆる青年実業家になるものも多い。

俺自身も、ネットショップを経営している。収入は月に八万円位の総売り上げ。

コストを差し引くと月に五万円位って所か。それとカラオケのバイトを週に一度しているから月に十万円あるかどうかだ。

バイトの収入の他にFXの利益とか株式の収益もある。確定申告は一人で十分できる。

俺が持っている株式は主に外食・レジャー産業がメイン。飲み会、テスト前の勉強会、打ち上げには重宝している。

もちろん、幹事役を積極的にやって有効的に優待券を使う。支払いはカード払い。

ずるい?せこい?俺はそんなものは褒め言葉位にしか思わない。そんなものは基本だ。貰うものは最大限頂かないと。



「最初からターゲットはすうでいいの?」

「その可能性は高いな。でもさ……先生がその気があるってどうなのさ」

「とりあえず、モラル面に大問題があるのは事実だけど。今はそれに触れるの止めておこうか」

弟たちは以外に古臭い事を言う。表沙汰になっていないだけで、高等部では先生と女子生徒のトラブルが少なくないんだ。

お前たちは1年だし、ずっと学園育ちだからその先例を受けていないだけだ。

夏休み明けには……ちらほらと見えて来るだろうな……かつて俺も見てきた光景を思い出した。

「薫さん、うちの兄貴に依頼しておいたんですけど……」

俺も気が付くよりも、はっちゃんの方が一歩早く睦月にコンタクトを取っていたようだ。

「はっちゃん、ありがとな。睦月に依頼して、母さんにすうの家に入って貰ってな……」

俺は言葉を濁して、睦月からの写メ添付のメールを3人に見せる。

そこに映っているのは、玄関に置いてあるテディベアのぬいぐるみ。すうの表情が消えていくのが分かる。



「兄貴……まさか」

「ああ、そのまさかだ。オルゴールに盗聴器が取り付けられていた」

「でも、勝手にそれも取り外せないから、そのままにしてある。すうの机と同じ。撤去して最悪の事態にならない為にな」

「そんな!!のん気な事を言ってないでよ」

「はっちゃん。分かるよ。でも俺達が気づいているって黒木に知られる方がすうには危険だろ?」

「そうだな。兄貴の言うとおりだ。葉月。それに兄貴の事だから、対策だってあるはず……だろ?」

「流石。俺の弟だな。黒木はさ、ばあさんの家の存在をどうやら知らないらしい。だから、すうだけが出入りするのなら勝手口でも問題ないだろう?」

「うん。そうだね」

「そうすれば、プライベートの情報を漏らすリスクを自然に減らす事が出来る訳だ」

「成程ね。私達に出来る事は?」

「時間が合えば、放課後すうと共にいて欲しい。諭も護も協力するようにメールしてある」

「諭は……ここがバイト先か。護は大丈夫なのか?」

俺は二人だけでは不安だから、はっちゃんの隣の家のゴンベンツインズも巻き込むことにした。

護のバイト先は睦月の家だから今頃状況を把握しているだろう。

「二人の事は、後で家に戻ってから話すから、すうはいつも通りにしていろよ?」

俺は諭はボディーガードで、護はリスクマネージメントを依頼している。

諭は合気道の有段者だし、護は睦月も元でプログラミングの手伝いをしている。

すうの方も、俺が言いたい事が分かったようだ。

「玄関では、宿題とか、部活とかの話題はしてもいいんでしょ?皆が家を出入りしているってことが分かればいいのね?」

「その通り。後3週間で中間テストだから、今から皆が出入りしてテスト勉強しててもいいだろう?」

「いきなり、それをするのは却って妖しくないか?」

「それは教室で一芝居打てよ。その位徹だってやれるだろ」

俺は何気なく徹を挑発する。クラス内では俺はすうに何もしてやれない。

その為のお前たちだろうが。少しはこっちの手駒になって動けばいい。



俺の計画がようやく理解できたらしい徹は苦虫をつぶした顔をしている。

そりゃそうだろうな。俺の掌で転がされている感満載だもんな。

だったら……そんな俺を出し抜けばいいんだ。

力ずくですうを自分のモノにできるような奴じゃない。

それが分かっているから俺は炊きつけて、煽りたてる。

「薫君、私お泊まりしてもいいの?」

「それもあり。とにかくすうの家にすうしかいないって状況が長時間ではない事を分からせる必要があるからな」

それと同時に、いくつか防犯カメラを付けさせて貰った。あからさまなのはダミーだが、玄関はあらゆる角度から監視されていると言ってもいい。

「そうだ。近日中に、すうの家の玄関のカギを替えるからな。しかも睦月制作の新作のモニターだ。良かったな」

俺がにこやかに言うとはっちゃんはうんざりした顔をする。睦月の防犯システムは抜かりない。

それだけに破ろうとすると大変なことになるのだ。

「大丈夫。睦月のマンション程じゃないから。可愛いもんだと思うけど」

「何かすると、警察に通報されるだけ。弥生ちゃんの所に情報が飛ぶらしいよ」

「そんな、弥生さん忙しいのに。そんなことしなくってもいいのに」

「睦月が弥生さんと話し合った結果だ。すうは気にすることはない。

弥生ちゃんははっちゃんと睦月の姉で、警視庁のキャリアさんだ。

睦月同様ハイテク方向に明るいから内勤がメインだ。それに俺の同級生で元カノなんだよな……弥生。

「弥生さんにありがとうって言って貰ってもいい?はっちゃん?」

「姉さんに関わりたくないけど、兄さんが手配しているのなら、最短解決狙っているってことよね」

「俺達はそのつもりだ。弥生さんがそのうちすうの家に行くから指示だけは聞いておけよ」

「分かった。ちゃんと言う事を聞くよ」

すうは、涙目になっている。そりゃそうだ。こんな状況気持ち悪い以上に怖いだろう。

俺は頭をポンポンと撫でる。

「大丈夫。皆でお前を守るから。お前が困っている姿が黒木の思うつぼだぞ。それから徹」

「何?」

「お前は暫く俺の服を着てすうの家に行けよ」

「俺がどっちか分からくする為か?」

「そう言う事。黒木が現にストーカーになっている可能性もあるからな」

渋々徹も俺と服の交換を納得した。

黒木の本当の目的が菫だけとは俺には想えなくて、思い切って踏み込めないでいる。

その為にももう少し黒木の過去も調べる必要があるし、黒木を泳がせる必要もあった。


一気にきな臭くなった感がしますが、そんなに深刻ではないです。

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