目に青葉 山ほととぎす トラブル発生? 1
時間は過ぎて、GW頃に飛びます。授業に慣れつつある頃に事件勃発!!
Side菫
あっという間に春休みも終わって、私と徹君は無事に高校生になった。
仲よしの皆も高等部に進学したから基本的に私自身は何も変わった感じはしない。
入学式では受験して入学した同級生もいたけれども、私達のカリキュラムに合わせる為に、1年間は外部生だけのクラス編成になる。
カリキュラム的に、先に進んでいる私達に1学期で追いつくために、放課後は毎日補習だとか。
この補習は希望すれば、私達も受けることは可能なので、私は苦手な物理を受けることにしていた。
カスミは化学で、百合子は数学。徹君は私に付き合って物理を受けている。
徹君の次に家の近い葉月ちゃんは、部活に専念したいから受けないで私達のノートを頼りにしている。
葉月ちゃんの隣の家のゴンベンツインズは二人で英語と国語を受けている。
クラスの中には、社会を受けている同級生もいるから、全科目のノートを皆でコピーを取って共有している。
やっぱり…私達だっておバカさん扱いをされたくないってのが、本音だったりする。
放課後の部活や芸術系の選択授業や委員会では外部生とも一緒になるので、それなりに新鮮だったりする。
そんな私達がいるのはA組だ。去年は隣のクラスだった葉月ちゃんが久しぶりに同じクラスになれて嬉しい。
けれども、私達以外のクラスの皆は私達…徹君や近所を皆を纏めて『チームご近所さん』なんて言う。
否定はしないけど、テスト前にはそのご近所さんに皆が分散してテスト勉強して帰るのだ。
来年は、進路別にクラスが別れることは決まっている。
今のところ漠然とだけども、私は付属の短大の経営学科を考えている。
皆で来ている制服にもようやく慣れてきたところだ。私達女子の制服は今では少なくなってきているセーラー服。
高等部のリボンタイは白。ちなみに初等部は低学年が水色で高学年が臙脂。中等部は紺だったりする。
女子は皆、少なくても一度はこの白いスカーフに憧れるのだ。私もそんな一人だったりする。
「六条……ちょっと来なさい」
朝のホームルーム。私は担任の黒木先生に呼び出された。私……何かしたかなぁ?記憶にないんだけども。
私は先生の呼ばれたので廊下に出る。黒木先生は大学部の数学科を卒業して今年新規採用された先生。
ずっと学園の中にいた人なら、見た事があるんだけども……あまり記憶がないので、高等部から学園にいる人だと思う。
そう言えるのは、大学以外は、各学校と交流を計る行事が必ず数回あるからだ。
薫君の一つ年上なのだから、そこでの接点もないからちょっと呼ばれたことに構えてしまうのは仕方ない。
「昨日の夜は、六条はどこにいた?」
昨日の夜は……徹君とほぼ一緒に行動している。どこまで先生に言えばいいのか解答に詰まってしまう。
昨日みたいなことは、私にはよくある事なんだけども……それってどこまで担任に報告すべきなの?
「昨日は……徹君の……えっと、竹田君の家にいました」
とりあえず、問題のないのは徹君の家にいた事は別に問題ないはずだ。
「竹田?ああ、保護者代わりになっていたな。でも……どうかと思うぞ?同じ部屋で一晩なんて」
先生は、凄くいやらしい目で私を見る。いくらなんでも、私は徹君と一緒に同じ部屋では寝ないのに。
「先生、そんな事はないですよ。徹君と一緒なんてありえませんから」
「別に無理に否定しなくてもいいから。目立つ事は避けてくれよ」
私に反論のタイミングを与えずに言い切ってから先生は職員室に向かって行った。
先生は……私の家の事を詳細までは知らないのだろうと私は解釈した。
住所は自宅のままだ。緊急連絡先は、私のスマホの番号と徹君の家の電話になっている。
その位は見ればすぐに分かることなはずだ。
昨日の私は、徹君と一緒にやっているボランティアの日だ。この事も学校には報告は既にしている。
私達はこのボランティアを去年から一緒にやっているのだから。
だから、先生のこの発言もなんか変なの?程度にしか思わなかった。
「何?どうした?すう?」
席に戻った私に葉月ちゃんが聞いてくる。いつもは彼女をはっちゃんと呼んでいる。
「あのね……はっちゃん。先生が昨日夜はどこにいたんだって言われたの」
「ふうん、昨日って、あれでしょ?ボランティアの日」
「そうなんだけども。言い方が……ちょっとね」
私は皆の前では言いにくいので言葉を濁した。
黒木先生は見落としているのかもしれないけれども、昨日は徹君と一緒にボランティアをしていたのだ。
ボランティア先は私と徹君の家に挟まれた……徹君達のおばあちゃんの家。
主である美枝さんは、自宅で茶道教室をしている。
初等部に入ってから美枝さんの元でお稽古していたので、私も徹君も今は美枝さんの元でアシスタントと言う名のボランティアをしているのだ。
昨日は、二人で親子教室のお手伝いをしていた。美枝さんは、形式よりもお茶を楽しむ方針でこういう活動もしている。
それがたまたま昨日だっただけだ。その後で、私達の高校入学のお祝いのご飯を食べて、夜が遅かったから美枝さんの家にお泊まりしただけなのだ。
いつもボランティアの日は美枝さんの家にお泊まりするのが、私と美枝さんの定番。徹君はちゃんと自宅に帰る。
結構若者の流行に敏感な美枝さんとガールズトークは結構楽しいのだ。
それに、美枝さんは学校の茶道と茶道部の講師もしているから学校にボランティアの事を申し出たらすんなりと了承されたのだ。
だから、昨日の事を言われるのが却っておかしく思えるのだ。
茶道なので、ボランティアといえ、私達は和装で過ごす。そんな私は一人で訪問着程度は着る事ができる。
父と一緒にアラブに赴任中の母が着付けの免許を持っていたので、一通り仕込まれてはいる。
私自身は、教室を持つ気はないけれど、着付けがアルバイトになることを知っているので、正規の着付け教室に通ってはいる。
この事も知っているのは、学園の中でもごく一部の人間のはずだ。私の口からそれを言ったことはない。
「すう。何か変わった事は?」
「……ない。多分」
はっちゃんは、少し考えてから更に聞いてくる。
「すう、会長は知ってる?今の話」
「呼び出されたのは見ていただろうけど。たった今さっきだよ?言う訳ないでしょ」
「……だよねぇ。だったら、私から話す。すうは何も考えなくていいよ」
「ありがと。はっちゃん」
私ははっちゃんに任せることにする。
はっちゃんは、トラブルハンターという別名がある。初等部から新聞部に入っていて校内の噂をほとんど把握している。
はっちゃんが知らない情報……きっとないと思いたい。黒木先生の事を知らなくてもどこからか調べてくれるはずだ。
私と徹君の籍は少しだけ離れている。はっちゃんは徹君の右隣。授業中でも情報収集は可能だ。
その証拠に、自分の席に戻ったはっちゃんのスマホを操作する手は休む事を知らない。
「はいっ、送信っと。すう、調査依頼したからね。暫く待っててね」
はっちゃんは耳元で私に呟くように伝える。その意図が分かった私は頷いた。
私の身近に盗聴器か発信機があると疑っているようだ。ならば……ある程度はいつも通りにした方が賢明だろう。
それは誰まで言った方がいいのだろう?カスミ……あの子はパニック起こしそうだから言わない方が無難か。
私はとりあえず、席に着いて机の中に手を入れた。机の側面に違和感を感じて中を覗き込む。
机の中を見て私は茫然とした。私は急いではっちゃんにメールを送る。
席に戻っていたはっちゃんは、慌てて私の元に戻ってくれて机の中を覗いて確認してくれた。
そしてノートの片隅に、そのまま放置してい置いて。気持ち悪いのは分かるけど、我慢してねと、書いてくれた。
確かにはずしてしまったら、折角の証拠がなくなってしまう。
やがて授業が始まる。何も身に入らない。全てがスルーしていく。
どうしてこんなことになったんだろう?なぜ私何だろう?理由が一切分からない。
でも、怯えたりするのも相手の思うままだと気付いた私はどうしたらいいのか、完全に分からなくなってしまった。
私の周りでは一体何が起こっているのだろう?
次回は徹目線でお送りします。