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救ったはずの仲間が、俺を忘れていた。〜追放ヒーラーは“存在を削る回復魔法”で世界の裏側に立つ〜 ―未記録層と界喰いの神話―  作者: 白銀レン


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第24話 七日の猶予

 七日。


 世界が削られるまでの猶予としては、あまりにも短い。


 だが、ないよりはいい。


 広場の瓦礫は片付けられ、仮設の足場が組まれ始めている。


 人は、壊れても動く。


 それが救いでもあり、残酷でもある。


 俺は町外れの丘に立っていた。


 空を見上げる。


 青い。


 だが、その奥に薄く歪みが見える。


 未記録層との境界が、波打っている。


「観測結果の共有を行う」


 背後で空間が開き、リゼが現れる。


 今日は一人ではない。


 三名の執行官を伴っている。


 グレイスもいる。


「七日後、界喰い本体の“部分顕現”が予測される」


「全部じゃないのか」


「本体は未記録層に根を張っている。完全顕現は世界崩壊に等しい」


 さらりと言うな。


「部分顕現であっても、都市一つは消える可能性がある」


 重い現実。


「この町か」


「確率四割」


「高いな」


「あなたが触媒となっているため」


 否定しない。


 俺は触れた。


 界喰いに。


 未記録層に。


「対策は三段階」


 リゼが指を立てる。


「第一段階、侵食の前兆を分散」


「均す」


「あなたの能力が必要」


 頷く。


「第二段階、物理干渉部隊による核露出補助」


 グレイスが一歩前へ出る。


「我々が斬る」


 冷静な瞳。


 だが、前よりも敵意は薄い。


「第三段階」


 リゼの声が、わずかに低くなる。


「あなたが、再編する」


 核を削らない。


 喰わせない。


 分解し、未記録層へ“返す”。


「負荷は」


「致命的」


 即答。


 覚悟は必要だ。


「成功率は」


「四割」


「低い」


「だがゼロではない」


 沈黙。


 風が吹く。


 丘の草が揺れる。


 ミアが俺の隣に立つ。


「七日で強くなる?」


「なるしかない」


 俺は胸に手を当てる。


 抱えた粒子。


 未記録層の冷たさ。


 これを制御できなければ、終わる。


「訓練を開始する」


 リゼが告げる。


「あなたは未記録層との接続を安定化させる必要がある」


「落ちるな、ってことか」


「落ちても戻れるようにする」


 難易度が高すぎる。


 グレイスが剣を抜く。


「私はあなたを斬る」


「は?」


「再編中、暴走した場合の切断役だ」


 合理的だ。


 つまり、俺が崩れれば。


「切り離す」


「そうだ」


 迷いのない言葉。


 ミアが強く俺の袖を握る。


「死なない」


「保証はない」


 リゼが冷静に言う。


「だが、成功すれば」


 彼女は空を見上げる。


「界喰いは“局地的存在”に戻る」


 世界規模侵食は止まる。


 七日。


 短い。


 だが、動くしかない。


 そのとき。


 丘の下の街道で、馬の蹄の音が響いた。


 振り向く。


 見覚えのある影。


 鎧姿の男。


 大剣を背負っている。


 ガルド。


 俺の元パーティの前衛。


 彼が、こちらを見ている。


 目が合う。


 眉がわずかに動く。


「……お前」


 呟く声が、風に乗る。


 彼の視線は、俺を正確に捉えている。


 今までと違う。


 見えている。


 はっきりと。


 胸がざわつく。


 リゼが小さく言う。


「干渉の波が広がっている」


 削った履歴。


 均した堆積。


 未記録層への落下。


 その影響が、記憶を揺らしている。


 ガルドが歩み寄る。


「……死んだはずだろ」


 直球だ。


 胸に刺さる。


「死んでない」


「俺は見た」


 低い声。


「お前が消えたのを」


 沈黙。


 過去が、揺らぐ。


 七日後の戦いとは別の波が立つ。


 リゼが静かに言う。


「時間がない」


 わかっている。


 だが。


 逃げられない。


 俺は、ガルドと向き合う。


 七日後、世界が揺らぐ。


 その前に。


 過去も、揺らぎ始めている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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