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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第五章

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泥沼の中でもがく

ベルトにしがみつけ

王宮内の惨劇を尻目に国内軍は既に発生してしまった南方の反乱軍鎮圧へと矛先を向けることにした。

即座に備えていたロコソフスキー元帥やメレツコフ元帥の率いる部隊は既に南進を開始し他の部隊も南方へ向けて列を成してトルブーヒン元帥の受け持つ南方戦線へと向かう。


尚龍の国平和維持部隊のウラソフ中将は今回の内乱では戻されずロシア解放軍出身者やワグネルの乱参加者やらロシアに弓引いた兵士達であり余り良い印象の無い兵士達である為今回の作戦には連れてこなかったのである。


念のため現地の有力者達はどうしているのか衛星やUAV部隊で確認したが彼らは兵士を提供しており君塚の政権へ反旗を翻していることは濃厚であった。

そして南方へ赴いていた際にリストアップした貴族の邸宅へランセットの編隊を向かわせ次々と爆殺し続けたものの反乱軍の勢いは増すばかりで何かが間違っている事を彼らは認識した。


そしてスタフカでは一人やかましい元帥が今、今回の作戦についてとある指摘をしていた。


「それは考え過ぎではないかね、同志トゥハチェフス─」

「ですから同志摂政、今回の敵軍の行動は明らかなるマスキロフカであり何らかの政治的意図を隠している可能性が高いのです!何で前はあんなにも大量の兵が来ていたのにこんな少数の武装蜂起で収まっているのか、それはつまり何処かへ本隊が潜んでいてそれらが我らを強襲するつもりである可能性が有るのです!!」


ヴァシレフスキー元帥がこんな現実から逃げる為そっと口を覆い天を仰いでいた、隣ではフルレフ上級大将が目を逸らしつつこの紛糾している会議でどうしたら良いか悩んでいた。

二人には作戦の計画を立てて貰っていたが今新倉の軍は不規則かつ時折大胆な作戦に打って出ており予測がしにくくそして交通結節点を確保する為の兵士も足りない状況で

トゥハチェフスキー元帥は今回の作戦を可能な限り迅速に潰して他の敵を殲滅するべきと受注していたがそれが出来りゃ苦労しないと内心君塚、そしてそれ以外の将帥達は理解していたしチュイコフ元帥は最もこの現状を理解していた。


「同志トゥハチェフスキー、我々は機動力でなんとか出来る戦争を強いられているのではない。これはいわゆるガスとかFAEBを村々に投下して解決出来る話ではなく反乱軍を炙り出し鎮圧し確保して次の村へ向かうような地道かつ丁寧な作戦を求められるのですぞ、村落は市街地同様兵を飲み込み続けます故」


チュイコフ元帥は嗜めるように今回の作戦の要点を伝えたが無策ではない、彼には少なくともスペツナズ部隊や市街地戦用の部隊や装備が整った上で陸軍の投入を伸長かつ大胆に投入するべしと考えているだけだ。


「それに今回戦闘が想定される地域は泥が多くそして偵察機によるとあちらこちらに堤防を敵対勢力らはこさえていて、それらを決壊されたら機甲部隊は壊滅させられるだろうと思われますぞ同志トゥハチェフスキー元帥」


ロコソフスキー元帥は無闇な機甲戦力の投入に対して苦言を呈した。

現地の情報では政府の認可を得ず現地貴族が堤防を拵えてダムまでも建設していた、これは廃王カジミエシュ8世の時代に作られたもののであり領主が封建的な特権を与えられていた時代の産物である。


故に国家はこれらの地方領主達の狼藉を一切把握出来ていなかったので様々な方法で確認を取ってはいたものの詳細な内容については現地貴族達が非協力的な姿勢も相まって規模や構造については一切不明であった。


「まぁ落ち着け同志諸君。どうせ今回の内乱は喫緊の課題の王国軍の反乱は鎮圧出来たんだ、後は南部の寄せ集めどもを鎮定するだけで良くなった以上一先ずこの反乱軍をどう始末するかを考えるべきだろう」


なんとか場を収めようとする君塚であるがまだ厄介な報告が届いた。

慌ただしく幕僚が部屋をノックして分厚い報告書を抱えながら入室してくる。


「一体どうしたんだそんなに慌てて、何か良くない事でも─」

「至急ご、ご報告致します摂政閣下、及び同志元帥並びに将軍閣下!我が軍の航空部隊に被害多数!既にSu-35SやSu-30SMに多数の被害有り、敵は多数のSAM陣地を築いておりました!!」

「は?今なんと」

「申し上げます!我が軍の被害甚大!敵は多数の戦車部隊、そして多数の航空部隊を抱えておりました!!!」

「…何だと!?一体そいつらは何処から湧いてきたのだ!!数も揃えて!?一体いつそんなに揃えて…」


どよめきながら今回の戦役が長期化する事が確定した事を悟るとまたもや総力戦挑め様相を呈し始めたこの南部紛争へ君塚はつくづくうんざりした。


「やはり我が軍を全軍向かわせるか、だが農民のゲリラ兵だけでこんなにも被害が出る訳が無かったし恐らくだが敵の主力部隊を全力で叩くしかもう手は無いな…」

「では同志摂政、今回の戦争はいかがされるおつもりで?」

「決まっている。今すぐ全力で潰して全力で新倉を捕縛するぞ、たとえ便所の中に潜んでいても必ず捕らえて法廷に連れ出してやる」


そしてまたもや国内軍は南方へ全軍を向かわせていたが南方貴族軍はゲリラ戦へと移行していた。

ニーナの率いる共産党軍は貴族軍へ兵器の供与や対空ミサイル等による支援を行なっていてS-300Pによる防空陣地は歩兵主体の貴族軍での戦闘を支える柱と成っていた。


だが国内軍も愚かではなく対空ミサイル陣地が確認されるとSu-34を中心としたSEAD任務を行い、後にDAEDを実施してS-300Pを軸にした防空陣地による接触不可領域の破壊を行なって何とか航空優勢を確保していた。

航空機に関しては最早火を見るよりも明らかでSu-35SやMiG-35.MiG-31BMが一方的にMiG-21bisやMiG-23MLDを撃墜して圧倒していた。

中には航空基地を突き止められた後に徹底的に巡航ミサイルや弾道ミサイルの攻撃で破壊され飛ばせずに要員の撤退を余儀なくされる事態が発生してしまった基地も発生したがそれでも貴族軍は降伏せず頑強に抵抗していた。


無論国内軍がずっと圧倒していた訳では無い、共産党軍の攻勢である程度後退する国内軍は海軍の援護を受けながら遅滞戦闘を実施したが敵の空挺軍の空挺部隊に混乱させられスペツナズ部隊により荒らされた補給線の維持のため部隊をより王都ズラトポルへ向けてジリジリ押されて戦況は混迷を極めていた。

更に国内軍側航空部隊は敵防空網での損害を避けるため低高度に退避した後、敵のMANPADS─9K38イグラにより追尾され被害を出すようになり両軍は一旦制空戦闘を止めて地上部隊は航空支援を受けられない為国内軍は全体的に動かず共産党軍の動きを待ち構えるように成った。


転機が訪れたのは反乱軍蜂起から3ヶ月経ってからであり、龍の国平和維持部隊の活躍で本隊側と繋がっていた補給線が絶たれてしまい突然窮地に陥っていた。

密輸ルートを龍の国西部を迂回して平原の国辺境を経由しつつ南方まで届かせるように補給線を確立していたがそれがディートリヒ上級大将率いる高地の国の平和維持部隊とウラソフ中将率いる平原の国平和維持部隊の活躍で寸断され根拠地であった龍の国北西部を攻撃されていしまい最早補給線の引き直しも不可能な状況であった。

その為戦力の投射を著しく減らして兵隊の消耗を避けつつ徐々に南方へと退きつつ逆に侵攻してくるようになり最早主導権は国内軍へと変わった後である。

この頃に成ると王国軍も再編成され親政権的な姿勢の東部軍管区出身者を指揮官に据えた結果部隊は国内軍と協調しながらじわじわと追い込んでいた。

地上では堤防を決壊させて洪水を人為的に起こし泥に足を取られた国内軍はT-90MやBMP-3Mを一旦後退させ工兵隊の支援を行わせつつ架橋作業を行いながら前進を行った結果自分達も身動きが出来なくなった共産党軍兵と貴族連合軍は緩やかな包囲をされ両翼と中央を寸断され戦線は細切れにされていった。


そして水に濡れた真綿の糸で絞められるような感覚に焦った南方貴族軍へ役に立たない存在と彼らを見做した赤軍は凶行に及んだ。

南方貴族軍はとある会合の際貴族達が赤軍に襲撃を受けて尽く貴族階級が粛清されてしまったのである。

そしてこの際運良くゾフィアは逃げ出し難を逃れたが赤軍は貴族達の私兵を「革命戦線労働隊」として動員する事にした。


この赤軍を率いるのはイワン・パブロフスキー中将、市街地への電撃的戦車投入なら彼に任せるべき人材である。

パブロフスキーを補佐するのはレフ・ロフリン中将、彼が戦車部隊の片翼を指揮して中央突破を目論む国内軍に対して両翼から包囲する計画を立てていた。

そして正面から受け止める農民達は戦闘正面を幅広く取る平原の国正規軍相手に押し込まれ続けたが後方のスペツナズ部隊が逃亡を阻止し続け何とか持ち堪えさせていた。


だが制空戦闘においては最早火を見るよりも明らかに押され負けていた。

戦線が見る見る内に押されるとそれに伴いS-400を軸とした防空網が前進し対抗する術を持たない空軍部隊は七面鳥撃ちの相手にされ続けていた。


とどめにマルゲロフ上級大将とグラゴレフ大将、グラズノフ中将が率いる空挺軍5個師団が後方へ降下して大勢はほぼ決した。

両翼の戦車師団は最早攻勢を止められず後方連絡線が寸断され自軍の最期を悟った南方革命戦線は降伏を宣言しかくして南部軍管区内の紛争は完全に沈静化されて新倉の戦力を削ぐ事に成功していた。

その際南方革命戦線の総司令官たるロフリン中将はトルブーヒン元帥に白旗を掲げながら銃を渡してそして部下達に降伏を命じて武装解除を行わせた。


「このような場でお会いできて光栄ですトルブーヒン元帥。…このような立場ではお会いしたくは無かったのですがね」

穴だらけに成ったT-72が新品同然のT-90Mと向き合うように対陣していたがロフリン中将率いる部隊は最早これらの車両しか残っておらずアフガンカを身に纏う兵士達も服装がボロボロで窶れた姿を見せている。


「いや敢えてむしろこのような場面で私達が会えた事の方が良かったのかもしれないぞ同志ロフリンよ。我々の戦車よりもよっぽど劣っている性能なのにどうしてここまで持ち堪えさせていたのか一度お伺いしたい」

トルブーヒン元帥は敗軍と言えど性能差を時には覆して戦い抜いた屈強な兵士である彼らを褒め称え彼らの尊厳を守っていた。


「そうおっしゃられると助かります。我々は負けたので名誉さえも守れない可能性が有りましたから」

「そんな事はないさ同志よ、我が軍はもう非道な行いも記録の抹消も出来なくなっているのだから名誉の保全は義務だ」


そう勝者と敗者は語り合い、そして彼らの名誉を守り抜いたのだ。


君塚の国内軍は彼らを全員捕虜として扱い捕虜収容所にて正式な処罰を降す為に一時的に拘禁している。



そして反体制的な貴族達も居なくなりヤドヴィガ政権はほぼ安定したようにも見え彼女の王国は今新倉の赤軍しか居ないように見える。

だが一つだけどうしても解決せねばならない案件が残っていてその対応をこれより行う事に成った。


「…これはこれは、ゾフィア姉さまお久しゅうございますわね」

「ゾフィア殿下…このような場でお会いする事に成るとはとても残念でございます」


牢屋の中には街道を沿って鷲の国に逃げ落ちようとした所を捕縛されヤドヴィガと君塚の前に突き出された僭称者ゾフィアが目の前に居た。

その姿は以前会った時よりも成長はしていたもののドレスは破れ泥塗れになり臀部や顔に傷が有って南部貴族達に何が起きたのか雄弁に物語る証拠に成っていた。


「ヤドヴィガ…それに君塚悠里…」

「姉さま、君塚様は摂政です。敬意を払ってくださいませ」

「ゾフィア殿下、お久しぶりです。離宮に籠ってさえいればこのような事にはならなかったでしょうに」


そしてゾフィアは勢い良く鉄格子を掴み助命を懇願した。


「お願いです摂政様!ヤドヴィガ陛下!私はあの者達に、貴族達に無理やり王位に就くように命じられただけなのです!!私は王位に就きたかった訳では無いのです!!」


縋りつき泣きわめくゾフィアは藁にもすがる気持ちで君塚に事情を説明した。


「私は、私は彼らに式典に誘われて、いつの間にか…いつの間にか酔い潰されて、目が覚めたらっ、勝手にあんな事に成ってぇ…」

「そうですか。ですが僭称者は僭称者、どうなるか普通は想像が付くと思いますが」

「お願いです陛下…どうかお助けを…」

「なりません。ゾフィア姉さま、先王の醜態はこれ以上晒す訳には参りませんから…そうですね、空は今日は蒼く、そして天への旅路も華やかに成るでしょう。精々地獄で罪を悔いなさい」


ヤドヴィガは姉をいとも容易く切り捨て僭称者へ冷たく接して彼女を処刑する事にした。

内乱を起こしたなら恐らくどのような国でも死罪か、それに準ずる措置は取られるのは普通であり政治的後ろ盾も無いような一人の女を始末するなら尚更である。


「では君塚様、私はこれより処刑の段取りを決めて参りますので失礼致しますわ。ですが決してその女を許されることの無いようにお願いいたします」

「それと君塚様、ゾフィア姉さまには殿下は不要です。今の平原の国の正統なる王族はこのヤドヴィガだけなのですから」


そう冷たくあしらい立ち去ると更にさめざめとすすり泣きその目立たないながらも整った顔立ちが完全に台無しに成ってしまっている状況である。


「…はぁ、殿下はああ言ってるし。だがなぁ、今回の反乱鎮圧に伴う処理は冷徹までに対処しないとだからな、ああクソ!」

「うううっ、どうして、どうしてこうなったの…私が、私があの時離宮を出なければ…父に行かされなければ…」


君塚は頭をかきながらも一つだけ彼女に対して何とか出来そうな案を考えてはいたが、しかしこの方法を取ればゾフィアはともかくヤドヴィガが首を縦に振るかどうかが重要で横に振られたままでは彼女は処刑されるだろう。


だが何もせず主命に基づき見殺しにするよりかは自己満足を優先する事にした。


「うっ、ううう…」

「…ゾフィア殿下、一つ案があります。少しだけよろしいでしょうか?」




そして反乱鎮圧から暫く経ち南方革命戦線の将兵たちは国内軍に対して吸収されるかそれとも強制労働かの二択を迫られ殆どが国内軍への合流を要望した。


南方貴族の崩壊により邪魔者が居なく成った平原の国の南方の開発はより進み農地の敷地面積等を改めて測量し直して大規模な農場の開発が進んでいる。


そして君塚の邸宅は賑やかに成っていた。

今日の添い寝当番のナディアは君塚に寄り添い耳許で

「朝ですよ閣下、早く起きないと寝坊してしまいます」

と起こして

つむぎと美羽が調理した朝食を新しく増えた家族と共に摂りそして内務省へ出勤する為の準備を整えてから弁当を持ち出勤する。


そしてその新しい家族─ゾフィアは今君塚のメイドとして働いておりヤドヴィガはその件を聞いて不機嫌に成った。

ヤドヴィガからしたら僭称者の処刑は決まっていたのに何故かそれを全部ひっくり返してこの目の前のクソボケ(君塚悠里)は反乱分子を生かしたのである。


「君塚様、流石に今回の件は甘過ぎます。その赤軍将校達を組み込み更には姉さまを勝手に生かして剰えメイドとして側に置くなんて…前代未聞でございますわ」

ジトッとした目で君塚を睨みつける彼女はそんなサプライズを11歳に成ったその日に知らされ後ろにのけぞり倒れかけたそうである。


「殿下…申し訳ございません。ですが余りにも血が流れたのでつい気紛れで助けてしまいました。どうか殿下、此度の件をお許しくださいませ」

「許すも許さないも貴方様が決めた事です。なら私も追認しましょう、それが私という存在の務めです故」


君塚はありがたき幸せ、とヤドヴィガに伝え、ヤドヴィガは尚更ジトッとした目つきに成りどうして自分が1日体験メイドになれないのか1時間程悩みながら二人は玉座の間にて仲良く過ごしている。


そしてゾフィアは今日はカーペットや布団の洗濯を担当しており君塚の帰りを待っている一人の女性として平原の国で生きていく事に成った。


「ふぅ…ご主人様の布団はこれで全部かな…」

「ゾフィーちゃん、次はご主人様の寝室の布団カバーの洗濯お願い」

「はい!かしこまりました雨宮先輩!!」


そして今日もまた平原の国の日々は過ぎる。






労働者よ、団結せよ

蒼き血に死を、赤き血に未来を

神はなく、科学のみ我らを救う

讃えよ、鎌と槌を

讃えあれかしや、我らがカラシニコフ銃を

王侯将相に須らく死を与え給え

そして世界は赤く染め上げよう

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