表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/62

泥濘の中で死ね

絡まる泥

南方軍管区内に到着した国内軍の部隊は広範囲に展開し新倉の率いるゲリラ兵を狩ろうと目論み分散しながら捜索を開始した。


少なくとも現地のトルブーヒン元帥麾下の部隊には現地の市民を刺激せず、そして都市部ではなく農村部の旧貴族勢力の影響力が非常に強い農村部への索敵を重点的にするように命を受けていた為なるべく市街地への物流への悪影響を避けるべく検問の数は最低限で設置しつつ空軍との協同作戦で捜索にあたっている。

だが地方の農村部は反体制的な貴族達の影響下にある為中々協力的ではなく裏道や獣道で物資を供給し合っている事が航空部隊によって既に判明済みであった。


君塚はやむなくズラトポルを離れて南方へ向かいトルブーヒンと共に南方での戦役へとあたることに成った。


「すまないな同志トルブーヒン、わざわざこんな面倒かつ煩わしい任務を与えてしまったようで…まぁ、そうだな。今回の戦役で今年のヤドヴィガ殿下の誕生日には終わるだろうよ」

「いえいえ、滅相もございません同志摂政閣下。ですがこのような反乱分子の鎮圧はすぐ終わるような事はございません、地道にコツコツと鎮圧するのが最善でしょう」


だが実際問題国内軍は南方貴族達が匿っているだろう敵の捜索で悪戦苦闘していた。

閉鎖的かつ政府の影響よりも領主の意向を組もうとする農村は多く警官隊に逮捕されたり村が戦場にされるよりも領主からの折檻や村からの追放を恐れる権威主義と保守的な風土で支配されていたので誰も協力してくれなかったのだ。


「全く…これなら貴族どもをもっと徹底的に潰せば良かったよ、だが貴族達を殲滅する訳にはいかんからな」

「ええ、私も同感です。何せあのような祖国に対する裏切り者でも秩序は秩序でしたから…だからこそ厄介極まりないのですが」

「ソ連でも田舎に行くと今代のツァーリは誰かと尋ねる事が有ったと聞くし地方部の辺境統治、それも首都より遠く離れた地域なんてそんなもんと割り切りゃ良いさ」

「全くもってその通りです同志」


現在国内軍は細かく切り刻みながら調理するように怪しい地域や敵軍の活動拠点となるであろう村落への強行捜索で次々とニーナの赤軍民兵達を掃討はしていた。

だがその赤軍民兵達も本隊ではなく支隊、主力部隊ではなく支援部隊であり主力部隊が何処に居るか尋問しても彼らは口を割らなかった。


だが一応国内軍は見当がついていて貴族達に対して屋敷や領地に対する査察の要請を申し伝えてはいたがこれを正当な証拠が無いと拒否。

これにより南方の貴族達への不穏分子化を報告されヤドヴィガは最悪の事態を懸念して南方貴族達への査察の許可を独断で決定し国内軍は査察へ踏み切った。


南方貴族達とそのシンパが反発したが暫定とは言え女王の命令による反乱分子を鎮圧と言う名目であれば流石に強く出る事は出来ず国内軍は査察を敢行し数々の反乱分子を摘発する事に成功していた。

ニーナの民兵達は貴族の邸宅に、時にはその館の主人と郎党を殺害してまで籠城し抵抗していたが徐々に下火に成り平原の国国内軍は南方についてほぼ制圧が完了しつつあった。



だがここで思わぬ急報が届いた。

国内軍の部隊が南方軍管区所属王国軍第七師団へ攻撃を行なっていると報せが届くとトルブーヒン元帥は部隊の所在を直ちに確認した。

そしてすぐに所属している部隊は攻撃していないと言う事を確認した後王国軍第七師団への救援に向かった。


「一体どう言う事だ?トルブーヒン率いる第3機動軍は今俺の知る限りでは南方には居るが、それでも第七師団演習地帯とは離れているのに何が起きたらそんな馬鹿な事が起きるんだ??」

「こちらでも全く分かりかねるものでして…それに王国軍へと攻撃した部隊と言うのは何処のどの部隊なのか確認さえも…もしや我が軍のスペツナズが粛清を!?」

「そんな訳が無いだろう。スペツナズ部隊がどうして無実の友軍部隊を傷つけるんだ…無意味な作戦行動は俺が許さんさ。無意味な粛清は貴官の前職時代(スターリン時代)でもないのに起きるわけが無いだろ」


君塚はトルブーヒン元帥の疑念を一回払った後天を仰いでこのまま南方に留まるかそれとも一回ズラトポルへ引き返して釈明の為の文言を練るか、恐らく残れば反逆の罪を着せられ平原の国は内部から突き崩されていくだろう。


王国軍全軍に対する鎮圧は兵器の性能差で圧倒すれば容易では有るがヤドヴィガはそれを望まない、あの王とは言え幼き少女を不幸な目に遭わせるのは心が居た堪れないがしかし撤収してしまえば恐らく新倉の兵士達はこれ幸いと南方を占領し実効支配を確立してしまうだろう。

どのような形式の共産主義・社会主義を志向していようと共産主義者である事は変わらない、もし支配を確立されてしまえば後は貧しく荒れた土地を我らは与えられるだけなのだ。

第一に最近はマシになったとは言え急な文明化や未解明の大陸東部等爆弾を多く抱えているこんな混迷としていた大陸で、もし超大国平原の国の大規模な内乱が起きてしまえば転生者達がそのどさくさに紛れて侵入し君塚・ヤドヴィガ両名の暗殺も容易い。


「…弱ったな。どう転んでも詰みか、疑念を晴らすかそれともこのまま新倉の兵を攻め立てるか…」

或いはズラトポルを攻めるか(ヤドヴィガを裏切るか)南部を火の海にするか(ヤケを起こしてみるか)と耳許で悪魔が囁いていた。


「同志摂政」


トルブーヒン元帥は少し重めの口調で決断を伝えた。


「ここは我らに任せ、殿下に此度の件をお伝えくださいませ。無用な争いは眼前の敵を喜ばせるだけです」

「…そうか、そうだな同志。ならこの南方は任せたぞ、くれぐれも奴らに一杯食わされるような真似はするな」

「ご安心ください。ここはバルカン半島よりかは平和な地帯ですから」


そうトルブーヒンと君塚が会話を終えると一路ズラトポルへ帰還しヤドヴィガへと事態の説明を行う為内務省の庁舎へと帰還した。


一方トルブーヒン元帥は急いで南方軍管区全域に散らばっていた第4軍を整え南方戦線の反撃体勢を整える事にした。

そしてもう一つの南方戦線の戦力であるヴァトゥーチン上級大将率いる第3親衛戦車軍が彼の補佐にあたり敵戦力の装甲戦力について対応する事にして部隊は編成を完了した。


そして君塚が王都ズラトポルへ戻るとまずナディアが出迎えた。


「閣下、良くぞご無事でお戻りくださいました!今宮中では大変な事が」

「分かっているさ、面倒くさい事になってしまったよ全く…」


今王都では宮殿を守るように円形に部隊を展開して取り囲んでいて王国軍が国内軍へと対抗する姿勢を見せており、ヤドヴィガの身辺は王国軍将校達が集まり警護していた。

王国軍将校は自分達を粛清しようとしたと思い込みヤドヴィガを利用し権威を以て君塚を処断しようと躍起に成っている。


つまり王国軍による大規模なクーデターが発生してしまった状況である。

国内軍の警備兵部隊は全員王宮外に追放されソコロワ注意も外に放り出されて以来内務省の建物から狙撃出来る体勢を整えていた。


ヤドヴィガへと会いに行こうとしても王国軍将校は政府へ反逆を起こした君塚を絶対に通さないようにしており王国軍兵士達も通せば死罪にされると思い決死の覚悟で拘束してくるだろう。

そうなれば君塚は死罪にされ、居場所や指導者を失った国内軍が暴走しかねない。

平原の国はたちまち軍閥時代の中華民国のような様相を呈して将軍達がそれぞれの軍閥を率い争う姿が目に浮かんでくる。


「本当にどうすれば良いんだ…?こんなに詰んだ状況は始めてだぞこんちくしょうめが…!!進めば逆賊、引けど逆賊、待ち構えていても事態は悪化…」

「閣下…」


ナディアは君塚が何も出来ないこのような状況は初めてであり、君塚以上にどうしたら良いか全く分からないような有様でもし強行突入してしまえばそれで王国軍は反乱を起こすだろうし鎮圧するのには酷く面倒である事は彼女にも理解出来ていた。


「ねぇ兄さん、何か困り事かな?」

「ああ、透。俺は大丈夫だから…透?何でここに居るんだ??俺は今戻って来て時間は経ってないぞ」


今絶賛総司教の研修を受けていた筈の君塚透(都合の良い奴)がいきなり現れたのだ。


「てか研修とか会議とかはどうしたんだ?まだ正教会の設立で忙しいだろうに」

「うん、でも兄さんが困ってるって聞いて抜け出して来ちゃった♪」

「来ちゃった♪…じゃないんだが、でもお前の力ならあの防衛線を突破出来…いやでもな…」

「兄さんがどうせ困ってるんじゃないかって思ってたんだけど合ってるよね?兄さんの国を乗っ取ろうとするなんて中々烏滸がましいよ、あいつら」


透は確かに聖女となってからは瞬間移動が可能であり取り敢えず王都内なら自由に何処でも行き来可能では有った。


「なら兄さん、ちょっと待っててよ。すぐに兄さんの悩みを何とかしてくるから」

「いや何とかするって何をどうす、っておい!!…行っちまった」


透は何処かへ飛んでいき悠里は取り残されポカーンと勢いに追い付けないナディアは困惑していた。

すると子猫を抱えるようにヤドヴィガを抱き抱えて君塚の前に透は戻って来た。


「ただいま兄さん!ヤドヴィガ殿下連れてきたよ!!」

「透…そうだけどそうじゃなくて…。ご無事でしたか殿下」

「え、えぇ、何とか無事でした君塚様。その、王国軍があんなことに成ってしまうとは想定外でしたが君塚様こそご無事ですか?」

「はい、何とかここに戻って参りました。透、ありがとう」

「いやいやそんな程でもないよ兄さん、でも兄さんに褒められちゃった…うへへ」


少し自慢の美少女フェイスがだらしなく成ってしまった透を置いておいてヤドヴィガを受け取り君塚は事の次第を説明した。


「殿下、南方軍管区の方に私めが派兵を実施していた際の事で御座いますが無論私は攻撃はしておりません。ですが咎無くてこのような事になるとは私とても…」

「ええ。私もこのような騒ぎに発展してしまうとは思いもしませんでした、それに将軍達も血気盛んに成っておりましたので…」

「ですが今回の王国軍攻撃と言うのはまだ日が経っておらず先日受けた為もう連絡が入ったのかと驚いております、まさかもう無線通信が可能に成ったのかと」


王国軍は電話の有線通信がメインの軍隊でありまだ無線通信については内務省は技術を伝えておらず王国軍がこんなにもタイムリーかつ迅速に動くのは不可能であると思っていた。

つまり


「もしかしたら王国軍には内通者が居たのやも知れません。そうとしか考えられません、南方軍管区以外にも北方や西方、中央の兵士が来ている時点で…」

「確かに君塚様が南方へ立ち去られた後王国軍の将帥がずっとズラトポル籠るようにして会議に次ぐ会議をされていましたからもしやとは思いましたがまさかこんな愚かな決断をするとは私も想定外というか…」

「してやられましたな、まさかこんなにも早くこの様な事が起きるとは思いもしなかった」


あり得る範囲内で最もあり得ない選択肢を選んでいますね、とヤドヴィガは余りにも短絡的かつ致命的な選択を軽蔑してしまった。


「…ねぇ兄さん、私あいつら全部仕留めてこようかな?どうせ錦の御旗はこっちの物だし惨殺しても逆賊を征伐したって事になるじゃん?」


透はすっかり復帰して物騒な事を述べ始めた。

確かに彼女に頼ればきっとすぐに殲滅してくれるだろう、そしてわざわざ軍を呼び寄せなくても何とか成るのは確実だ。

だが今総司教に成らんとしている透に手を下させるのは憚られるがと思った時にまた頭を悩ます問題が出てきた。


「丁度良かった、殿下並びに同志摂政様へご報告です!南方にて反乱が大規模に発生しトルブーヒン元帥が鎮圧を図っております!!彼らは現在の王ヤドヴィガを廃してその姉ゾフィアを擁立すると─」

「ゾフィア姉さま!?まぁ、一体何処から連れてきたのか…!??」

「はぁ!?あの何か地味な女の子を!??なんっだよもう!!!」

「ゾフィア姉様……。あの大人しく政治に何の関心もなかった姉様を、愚鈍な貴族達が神輿として担ぎ上げましたか。……愚かな、誰の操り人形になろうと私と君塚様が作り上げたこの玉座を脅かすというのなら、たとえ近親者と言えど容赦はいたしませんわ」

(…僭称者擁立と言い内乱と言い、まるで俺の脳みそをパンクさせようと必死だな新倉の奴め…!!後殿下怖い)


君塚は少し目を瞑り、そしてカバーシナリオを構成して王国軍に少し悪いが歴史的な悪役を演じてもらう事にした。


「はぁ、わかった。透、今はお前を頼るしか選択肢が無いようだ。後は俺に任せてお前は今王宮占拠部隊の将校達を制圧してこい。だが兵士は殺るな、良いか?彼奴等を殺したら少し面倒に成る」

「えー? なんで? まとめて掃除した方が早いでしょ?」

「兵士達を殺したら俺達政権側が反乱軍に加担した奴ら全員粛清しますって表明してるようなもんだからだ。それだと南方の反乱軍に遺族が全員協力しちまうかもしれんからな」

「成る程ー」

「でも兵士を生かしておけばあとで恩赦してそいつ等を軍の主力に据えておけば後は王国軍は手綱を握り放題という訳だ。分かったか?」

「うん!分かったよ兄さん、それじゃ行ってくるね!!」


そして解き放たれた猟犬は王宮へ目掛けて一目散に向かって主の為に敵を屠ろうと殺意を向ける。


「!?何奴か!ぐあっ」

「ぽ、ポニャトフスキ大しがっ!!」

「五月蝿いなぁ、兄さんやあの子の邪魔するような奴が何この国の軍人してんのさ」


玉座の間に屯する反乱軍の将校達を一刀のもとに斬り伏せ八つ裂きにしていく。

透は前回の大会に使用していた聖剣を担い兄の覇道を妨げる逆賊を次々と討ち取り呼吸するように切り刻んでいく。


「ええい誰か、誰か奴を討ち取らんか!奴を討ち取れば─」

「やかましい」

また一刀のもとに斬り伏せる

「貴様の顔を私は知っているぞ!こ、このような非道な行いをする聖職者がこの世の何処に居ると言うのだ!!」

「居るよ、ここにさ」

煩わしい蛆虫をまた屠った。


冷たい表情で敵を睨みつける君塚透は敵からしたら悪夢のような存在であった。

そして将校達の血が王宮の床に染み渡る。


そして王宮で新たなる宗教指導者により虐殺される中南方の貴族反乱軍へ矛先を向けることにした君塚は国内軍を再び総動員する事に成った。

炎で全てを隠せ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ