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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第五章

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平原の国から革命を籠めて

赤き血が昂ぶるとき

龍の国の内乱が一旦王党派により統一され平原の国と高地の国による一部の部隊の駐留が行われて平和維持部隊が地方における内乱画策勢力や反乱分子を鎮圧していっていた。


経済では龍の国政府へ鉱物資源の優先輸出や関税自主権の制限、そして平原の国と高地の国の官僚による監査機関が認可した刑法の策定が行われるまでの領事裁判権が今回認められた。

債務については無理なくの返済をするように平原の国は求めていて過度な取り立てにはならない事をシグルーンへ約束した。


そして帰国後君塚はナディアを伴い真っ先にヤドヴィガの許を訪ね一連の流れについて報告をした後、ヤドヴィガは君塚から国内軍の装備供与の件について尋ねる事にした。


「君塚様。此度我が国の王国軍に大量の装備が供与されたと聞きました。ですが、あれらは以前ご説明いただいた国内軍の装備とは見た目も性能も異なるようですが……?」


T-72AやT-64、BMP-1、BTR-70の供与が突然決まって王国軍将校は戸惑っていて更に歩兵にはAK-74が一人一人に渡されてRPG-7も配備された結果現地の平民や旧貴族からなる王国軍は全体的に困惑の表情を浮かべており、この装備の供給源を尋ねても内務省は一切答えないので国内軍兵士達に不信感が別の方向から出てしまっていた。

更にトドメに軍事顧問が王国軍にも派遣され軍内部の政治的に悪影響が出て王国軍の自主独立性を損なわれることを危惧していた。

軍内部、特に上級将校達の間には「王国軍は国内軍に吸収されるのではないか」という不信感すら漂い始めていた。


「あれらに関しては少しだけ話が複雑でして、少々長くなりますがよろしいでしょうか?」

「構いませんわ。急にあんな大量の鉄の馬車を押し付けられて王国軍の将校たちが驚いておりましてよ」


今までずっと平原の国の王国軍は馬で平坦や輸送部隊を構成していたが今やとんでもない装備を渡されて部隊間での協議が継続され続けている。



「実はあれらは我々の装備ではございません。敵から鹵獲した装備でございますが、状態のよい物を再整備したり使える部品を継ぎ接ぎに繋げた物であり私の関知しない兵器です」


「……ではあれらの兵器は部品が壊れて動かなくなるまで使い潰せと仰るのですね?」

「いえ、補給や整備の規格自体は我々の兵器と共通ですので持続的な運用は可能です。ただ…王国軍の中には、少々信用ならざる部隊が見受けられます。本来なら最新兵器など与えたくはないのですが露骨に冷遇し続けるのも不満を溜めるだけです。ですので国内軍には絶対に勝てないモンキーモデル(国内軍未満の装備)として与えガス抜きをさせる狙いがございます」


そして君塚は更に補足した。

「まぁ彼らに渡したT-72AやBMP-1の通信機には、国内軍のデータリンク(戦術ネットワーク)へ接続する暗号鍵は入れていません。つまり、彼らは『強力な鉄の馬車』を手に入れたと喜んでいますが目隠しをされているも同然。いざ反乱を起こしてもこちらのSu-35SやT-90Mからは丸見えの『動く的』にすぎないのです」


「成る程、ならそれらの兵器は持続的に運用可能で反乱を起こしたとしてもすぐに鎮圧可能だと言うことですね。それと王国軍内に信用出来ない部隊が有るとおっしゃいましたがそれはどういう事でしょうか?まさかカジミエシュ派でしょうか、そんな思想の人物はもう軍内には居ないものかと思いましたが…」

「はい。私や殿下に対して反抗的な存在が指揮官に就任している部隊が存在していてそれらの対策も有りあまり軍の強化には前向きにはなれませんでしたが、今は少し話が異なりまして軍備の強化に努めようかと、それカジミエシュ派だったならよかったんですが…これまた面倒な立場の者達でして」


ヤドヴィガは具体的に反抗的な存在がどのような存在なのか気になり君塚へ質問した。


「無論カジミエシュ派とか反ヤドヴィガ派、それらも居ますがそれよりも問題なのは我が国に議会を求める者が増えており軍人だけでなく平民もまた望んでおります」

「議会…?ですか、…議会とは?」

ヤドヴィガは少女らしい可愛らしい表情で未知の単語に困惑していた。


隣に居たナディアも頭を可愛らしく傾げ尋ねた。

「議会…とはどのような機関なのですか閣下?)


そこからか、と君塚は天を仰いでため息を堪えた。

そうか、文明力は高まっていたが元を正せば中世相当の文明だったのをたった5年で化け物じみた近代化をさせてしまったのは自分であった事を思い出した。

だがふと一つ疑問を覚えた、誰が一体議会と言う悪知恵を民へ分け与えたのか?そこから考え始めても今ヤドヴィガへ説明しなくてはならない現実が先と考えて丁寧に説明を開始した。

スルタンの強力な独裁国家である戦狼の国出身で一切議会の概念についてナディアには一度勉強会のようなものを開いてから理解してもらおうと君塚は考えている。


「殿下、議会とは簡単にお伝えするならつまり臣民の手により選挙で選出された議員と呼ばれる地区の代表者が議場にて討論し時には思想が同じ者達で徒党を組み党として動く、そして立法を司る行政機関の事です」

「成る程、よく分かりました。ではその議員とやらは貴族とは異なる存在なのですか?」


「…時には貴族出身の者達が当選し議員に成ったり世襲で代々議員を務める政治家一族も誕生する事はございますが貴族との違いはまず世襲が絶対的なものではなく時勢によっては平民出身候補相手に落選して没落と言う事もあり得ます。そして自身の選挙区を直接統治する訳ではございませんのでその点でもあくまで地区から選出された議員でしかなく領主のような振る舞いは出来ません」


「ふふ、面白そうな制度ですわね」とヤドヴィガは微笑んだが君塚の背筋には冷たい汗が流れていた、この幼女女王(怪物候補)はきっと、いや絶対にろくでもない事を考えている。

「……なるほど。つまり議会とは私や君塚様に不満を持つ者たちを『議員』として一つの箱(議場)に集め、誰が反逆者であるかを名簿で一元管理できる素晴らしい(システム)、ということですわね?」

(違う、それ絶対意味違うよヤドヴィガちゃん。おじさんそんな風に教えたつもりは無いよ…)

君塚は独裁者ぶりが増してしまった己の幼き主君に対してどうしたら良いか分からなくなっている。


ナディアはさっぱり理解出来ず頭の上にクエスチョンマークが無数に浮かんでいたようであり全く理解出来ていなかった。


そして内心焦り気味だったのは龍の国帰還後請願の行進が目に付き調べたら議会、それも一院制による庶民議会の請願の行進が行われており、何故かその報告を龍の国遠征中に一切受けた事が無く、更に悪い事に非番の王国軍の兵士達もその中に多数紛れ込んでいた事である。


「議会の設立を許せば殿下の王権や我々の行動にある程度の制限がかけられることになります。ですが、私が上手くコントロールしてみせます。軍内部の議会派も宥める手立てはございますから」

「分かりました。政治の采配は、今回も君塚様にお任せいたしますわ」

「御意に。殿下にとって議会と言う存在を悪いようには致しませんからご安心を」



そして議会設立について何とか対処する為にヤドヴィガから託され外へ出た後、民衆相手の何とか時間稼ぎの為の文言を検討しつつ今回の転生者のギフトと思われる兵器について念のため確認しようと思いニケにコンタクトを図っていた。



「おいニケ、今回の謎のソ連軍の件で心当たりが有るか?もし無ければこのまま応えなくても良いが」

【はいはい分かってるわよ。あの武装勢力の件でしょ、ならとっくの昔に調べは終えてるわよ。後神堂の件お疲れ様でした悠里、あんなキモい奴仕留めてくれてありがとう】


ニケは相変わらず優秀であり何故エリスから落ちこぼれ扱いされているのか一切不明であった。


「いつも調査が早くて助かるよニケ、それとどういたしまして。てかいきなり業務モードなんだな」

【そうね、アタシの協力が無いとアンタ何回死んでるか分かんないからいつも肝を冷やさせるもの。いい加減アタシも安心しながらアンタの戦争を眺めていたいものよ、全く…】


深くため息を付くと気を取り直したニケは調査した内容について報告をした。


【あの武装勢力は別の転生者、新倉 菜月によって生み出された戦力でアンタと同じだけどまぁ神堂を恐れて龍の国の片隅で縮こまって潜んでたっぽい。あんな奴の居る国で抜け出せず藻掻いていたのは同情するけど…コイツは悠里、アンタの国に既に移動しているわ】

「そうか、なら大変危ない時期に危ない奴が流れ込んだな…。1難去ってまた一難か」

【アンタはコイツを今すぐ対処するべきだとアタシは考えているわ、アンタさっき議会の話してたじゃない】

「していたな。…まさか」

【そのまさかよ、パーソナリティプロファイルの確認項目を見たら共産主義者である事が確認されているから平原の国で革命煽るかもしれないわね】

「…成る程、こりゃまた面倒なクソアマが来やがったな。だが何で奴はいきなり今回の戦役クラスの兵力を整えられた?もしあれだけ戦力が有るならそれで神堂は倒せただろうに」


至極当然な考えである。

もし兵力が揃っているならあのような勢力はたとえ月白の長女と三女が居たとしてもその赤い奔流で以て轢き潰せただろうしそのままの勢いで龍の国を簒奪は可能であった筈。

ならば何故神堂を倒せなかったのか、そもそもこの長い間彼女は龍の国の片隅で何をしていたのか?そして今更何故あんな大兵力を所有する事に成功したのか?


「まさか、まさかだがエリス関連か。そうとしか考えられない」

【アタシもそう考えていたけどあいつの担当官は別の人物よ。ネメシスとか言う腐れ女だけどまぁアイツは…サポートした可能性は有るわね】

「だろうな。あの兵力をコンサルしながら運用していたと考えると情けないが、その点には俺は一切言い返せない。俺もこのようにニケに助けられてばっかだ、神堂を倒せたのも結局支援を受けた結果だしな」

【でも倒したのはアンタよ。勘違いしないでちょうだい、アイツにトドメを差したのはアンタでアタシはあくまでサポートしただけ。だから気に病むとかそんな事は不要だから】


ニケは君塚にあくまでサポートしかしていない事を明確に伝えていた。


『で・も! 君塚っちがあのキモい神堂を仕留めてくれたおかげで、アタシの運営権限もめっちゃ増えちゃってさ〜☆』

不意にニケの声がワントーン高めないつものギャルモードに切り替わった。

『今のアタシがどんなチートを使えるか、気になる? 気になるよねぇ?』

「いきなりギャルモードに変わったなぁ…まぁご機嫌なら良いけど。ではその権限がどうなったか俺に教えてくれるか?」

【え〜?それヒトにものを頼む時の言い方かなぁ?ねぇ君塚っち〜??】

「分かった分かりましたから、ではお教えくださいニケ様。貴方様の大いなる権能の一端をお見せくださいませ」

【うわひくわ〜いやそこまでしなくても見せるけど…】


直後、君塚の網膜に巨大な大陸のホログラムマップが展開された。検索欄に意識を向けるだけで、特定条件の転生者の現在位置の座標が赤い光点として表示される。

だが正確な位置については分からず座標内の地点を手探りで探らないといけなくなっている。


「こりゃチートが過ぎるな。何処に誰が居るか大体とはいえ一目瞭然なのは相手からしたら対処しようがない悪夢だろ」

【新倉は今平原の国南方で何かやってるみたいだしちょっと介入してみよーよー。どーせとんでもない事を企んでそうだし】

「だな、なら南方の方に人を派遣して新倉の拘束を目指すか。でも面倒な奴だな本当に…多分革命狙ってんだろうけど」


そして君塚は今の内に小さな火を消す為南部に国内軍を派遣して現地の王国軍と協同での討伐を命じた。


「南部か……わかった。国内軍の特殊部隊、ついでに暇な部隊を急行させる。……しかし、議会設立のデモといい、共産主義者の潜伏といい、臣民を無法図に豊かにしすぎてしまった俺の失策かもしれないな……はぁ」


一方南部ではヤドヴィガの治世を恨む貴族達が寄り合って君塚によって廃されたカジミエシュ8世の治世を懐かしんでいた。

彼らはズラトポルでの政変以降突然領地を召し上げられたと思えばその土地に工場が建てられ領民に農地は切り分けられ特権であった竈や狩猟地についても剥奪されてしまい今や国有化か技術発展により価値がなくなってしまった物が大半である。

つまるところ貴族はもう平民と変わらず盛者必衰と呼ぶに相応しい現状であり、資産を切り崩しながら資産に関する税金を納めて没落していく今を受け入れるしか道は無かった。


王国政府に協力した貴族達は逆に官僚に取り立てられてそれなりの地位に居るが南方の貴族達は保守的な人物が当主を務める家が多く君塚の急進的な改革に反対であり、低地の国との間に結ばれている鉄道も彼らの領地を召し上げた結果誕生した鉄道であり領民達が尽くズラトポル等の大都市に流出する元凶として認識していた。

おかげで領地持ち時代と異なり農奴たちは雲散霧消し交易のために来る行商人たちも通らなく成って久しく、それ故に荘園は廃れてしまったと貴族達は考えている。



「同志ニーナ、狙い通り平原の国の反体制的貴族達が我々へ協力を求めてきました。いかがされますでしょうか?」

恭しく一人の華奢な体格の少女に対して屈強そうな軍服姿の男─ドミトリー・ヤゾフは司令部で主であり、また同志であるニーナ─新倉菜月に判断を仰いでいた。


「そうか、同志ヤゾフ元帥。なら私達は決められた通りにしてしまえば良い、あの修正主義者の軍隊を足元から掬い上げてしまえばこちらのもの。その反動主義の腐った豚な貴族達の使者を通せ」

「はっ」


ヤゾフ元帥はそっと退室し、貴族達の使者を部屋に入れた。

彼は主が没落させられてしまった原因であるヤドヴィガ政権の転覆ないし崩壊を求めていて各地の傭兵達に協力を求めていた。

そんな中ニーナの兵士達が君塚の国内軍と変わらない兵力を保有していると聞いて主の復権の為接触を図っていたのだ。


「この度はお忙しい中お時間をいただきましてありがとうございますニーナ殿。我が主、ヤン・デレグフスキの使いで参りました執事のミハウと申します」

「そうか、私はニーナ・イワノヴナだ。よろしく頼むよ同志ミハウ。此度はあの冷酷無比にして悪逆無道のファシスト君塚悠里の政権から民を解放する正義の戦争を行われると伺っているが間違いないか?」

「はいニーナ殿。私ども南方の民はズラトポルの者達に搾取され飢えに苦しんで滅びを待つだけでございます。何卒貴殿のお力をお貸しいただきたいのです」


ミハウは主デレグフスキ家の没落は今の政権に全てが有ると信じていた。

だからこそこの反乱で自身と主の報復を目論んでいたのであり、旧時代の意地を見せつけておきたかったのだ。


「…わかった。であるならば我々は貴殿らに加勢するとしよう。但し、戦後には農民達や労働者階級には手厚い支援や人権は尊重されよ。これが条件だ」

「ありがたい報せで御座います。すぐに我が主デレグフスキへお伝えします、ニーナ殿この度はありがとうございます」


退室した後ボリス・グロモフ大将とアレクサンドル・レーベジ中将が入室してきた。

「同志ニーナ、平原の国にて兵力の準備が完了しました。兵士達は完全武装をしており何時でも蜂起できます。ご指示を」

グロモフ大将は麾下の第1軍の兵士達が既に戦闘態勢に入り宣戦布告の準備が完了していることを伝えた。


「空挺軍も同じく準備が整っております。後は空から降下して奴らの戦列を粉々にして切刻んでやるだけでございます」

同じくレーベジ中将も麾下の空挺軍全部隊が臨戦態勢である事を伝え戦争準備が整った事を伝えた。


「なら私達は成すべきことを成すだけよ。さぁ配置に付け同志諸君、革命とは常に足元から始まるのだから」


ニーナには何本もの「矢」が存在していた。

貴族達の反乱はそのうちの一本に過ぎない、その後ろでは何本もの矢が番えられ君塚の王国の終焉をもたらさんと狙っている。


ニーナによって平原の国王国全土に派遣した共産主義の啓蒙を行う政治委員達が農村に指導をする準備を整えつつ都市部への潜入も試みていた。

これを隠すために今回の戦争を仕掛けるのであり、これがうまくいこうがいくまいが本命たる労働者階級や農民達への共産主義革命が成就してしまえばもうどうでもよかった。


それに平原の国だけしか動いていない訳では無い、まだ他の国にて動いている同志達は居た。

後は彼らを上手いこと動かしてソビエトを作れば良いだけ、ソビエトこそ至高でありソビエトこそ偉大でありソビエトこそ崇めるべき存在である。

革命の為のマスキロフカ(偽装計画)は何重にも何度でも実施し徹底的に筋書きを書かれた上で実施されなくてはならない。


ソビエトを讃えよ!!!同志諸君!!!!

地平線の彼方に我らの光が輝いている!!!!!!!

さぁひれ伏せ蒼き血よ、悪夢は始まる

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